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「玄関部分侵入成功」

「廊下側、障害物なし」

博士が叫びながら、私たちを誘導する。

「目標発見」

ライフルを構えながら、博士がじりじりと近づいていく。

Teroは、ケーブルを持ちながら、私たちを見ていた。

「来ましたね」

唇の端をはずかに引き上げたかと思うと、左右から鋼が飛び出してきた。

何か分からないまま、本能的に避ける。

「まだまだ!」

下から突き上げるような感覚。

私は宙を舞っているかのように思ったが、それは違った。

床面がなくなった。

「ひっ!」

「危ない!」

とっさに手を伸ばしてくるのは、直斗と匡。

二人に支えられて、私はどうにか落ちることはなかった。

「ほほう…」

攻撃を一時やめ、Teroは私たちのところへ近寄ってきた。

「ロボット3原則、軍事ロボット3原則、先見ロボット3原則。これらに共通することは?」

博士は、別の機械と戦っている。

音だけは響いてくるのでわかる。

だが、お父さんとお母さんはここからは見えない。

「…つまりは」

「人間を守るようにプログラムを組まれているのです。すべては人間の為に。我々ロボット、量子コンピューターを搭載された新人類とも言うべき我々ではない」

「我々…ということは…」

直斗が睨みつけるように言う。

何かあれば飛びかかる気だろう。

「もちろん、ただ一つしか、量子コンピューターといえるものはありません。私が持っているこれが唯一のものです。しかし、類似するものなら、つなぎ合わせることによっていくらでもできる。その集合体が、我々なのですよ」

Teroは、徐々に狂気で顔をゆがませながら、私たちに言い放った。

「だからこそ、我々は、世界を制するのです。この星は、単なる足がかりにすぎない。"ニノマエ"氏は、それに乗り遅れることはないでしょう。なにせ、あの人は我々の計画のよき理解者なのですから」

パンパンという、軽い銃声。

それから人の声が聞こえてくる。

「だーれーがー、お前たちのよき理解者だよ。バーカ」

「ニノマエさん。どうしてここに」

「苗場、匡、直斗だったな。こっちの情報収集能力をなめてもらっちゃ困る。輸送船が、機械軍団に襲われている間に、抜け出して来てやったんだ。また、どこかの飛行船でもパクッて、自分の星にでも帰るさ」

彼は笑いながら銃口を向けていた。

「あなた…あなただけは、人類の中でも生きながらえさせようと思っていましたが、どうやらそのことは間違いだったようですね」

胸に穴があきながらも、Teroは笑い続けている。

「ニノマエさん、ちょっとお願いがあります」

「ああ、どんなことでも言ってくれ」

「あのロボットの首筋に、端子があります。そこにちょっとした用事があるのです」

私がそれだけしか言っていないのに、大体のことは分かったらしい。

「そうか、じゃあこうするか」

ゆらっと影がゆれたと思うと、Teroは地面に押さえつけられていた。

「いまだ!」

私に叫ぶと同時に、言われたとおりのところにある端子に突き刺した。

動きは、止まった。

あたりは嫌な静けさに包まれた。


「プログラム再起動します。再処理中。しばらくお待ちください」

表情がなくなった顔で、かなりの棒読み状態で言われる。

その間、すべての機械の行動は止まり、お父さんとお母さん、博士もこの場にやって来ていた。

「成功…それとも……」

「まだ分かりません。いま、再処理中だそうで…」

唐突に、楽しげな音楽が流れ出した。

徐々に静まり返る部屋の中。

ニノマエが上からのくと、半身を起して、いまだに焦点が定まらない目をして言い始めた。

「起動完了。再起動を完了しました。記憶相互に補完、完了。すべての工程を終了しました。すべてのネットワークシステムより撤退します。これより、私、Teroの最上位権者をマスターに指定し、特定のDNA錠を有する者を最上位権者とします」

それから私のほうを見ていった。

「あなたが、前のマスターですね。再度登録する場合は、DNA錠と適合するかどうかのテストを行います。よろしいですか」

「…はい」

本当に元に戻ったのかどうかは分からないが、今はそれを信じるしかない。

博士が持ってきた無線の電源を入れると、あちこちから状況の報告が出てきた。

それによれば、相手は全員降伏したそうだ。

最後の仕上げは、私がすることになった。

「では、手を合わせてください」

掌を見せる。

私はあの時と同じように手を合わせた。

「少し痛いかもしれません。よろしいですね」

「はい」

わずかに針で刺されたような印象を残し、掌は離れて行った。

「データ照合完了。すべてのカギは解き放たれました。最高権者は、あなたです。糸魚川苗場さん」

私をじっと見つめて、静かに宣言した。

「では、最初の命を言い渡します。これ以降、私又は私の家族の人が命じない限り、勝手に行動を取らないこと。ただ、命令権者から指示を受けた時は例外とします」

「分かりました、苗場さん」

こうして、私たちの戦争はようやく終わった。

たかが30分ほどであったが、それでも、私たちにとっては初めてのことであり、Teroの行動を縛ることは当然のことだと思った。

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