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第4章 真の目的


家に着くと、お父さんたちが待っていた。

「やっと帰ってきたか」

「やっとて言っても、3日もたってないよ」

お父さんは、その温かな手で、私を抱きしめた。

「ちょっと、痛いって」

そう口に出しながらも、うれしかった。

「三人も、お帰り。えっと……」

お父さんはTeroを見ながら言いよどんだ。

「この人は、量子コンピューターのTero。あのフロッピーはこの人のデータの一部だったの」

「はじめまして。Teroです。これからもよろしくお願いします」

深々とお辞儀をしてから、握手をしようと一歩前へ出る。

「こちらこそ、よろしくお願いしますよ。何かと色々パソコンなどの機器が必要な時代ですからね」

お父さんも握手に応じる。

「ところで、この星の情報を知りたいので、すこしネットをお借りしてもよろしいでしょうか」

「もちろんいいよ。そこのコネクタからつないでもらって構わない」

お父さんが指さしたのは、壁に備え付けられているジャックだった。

「ありがとうございます」

Teroは、お父さんに一言礼を言ってから、そこへ向かった。

私たちは、そんなTeroを横目で見ながら、色々と話した。

いまだに戦争状態が続いていることも、戒厳令が布告され続けており、軍が全権を掌握していることも、何かひと波乱起きそうな予感がしていることも。

「クーデターとか、革命とかですか」

博士がお父さんに聞く。

わずかに顎が揺れる。

「そうかもしれない。だが、不思議なのはこの機に乗じてあいつらが攻めてこないことだ。何かを待っているような気がしてならない……」

その時、空震が私たちを襲った。


とっさにテーブルの下へ隠れたが、目の前を何かが通っていくのが見える。

「なによ、何が起こってるのよ」

私は本当に何が起こっているか理解できないでいた。

一瞬にして家を横切っていく赤い光は、床を一直線に焦げさせていた。

「超高度レーザーね」

博士は、いつもとは違った緊張した顔を浮かべて、私のすぐ左横にいた。

「なんですか、いったいぜんたい…」

直斗が半身を起して私たちに聞いた。

匡はまだへたっている。

「この惑星の静止衛星軌道上に存在する、特殊レーザー光線発射装置よ。3光年進んでも、拡散範囲は2.5インチのハードディスクとほとんど同じ大きさ」

博士が冷静に額をふきながら説明する。

「さてさて、どうしましょうか」

お父さんはこの状況を楽しんでいるようにも見える。

「Teroは、マスターであるあなたの言うことには最優先で働くようにあっているのじゃないの?」

お母さんが私に言ってくる。

「そうだ!その手がある!」

私はレーザーを潜り抜けれないかを一瞬考えてから、ここから叫ぶことにした。

「Tero!あなたのマスターとして命ずる。直ちに現在行っている行動を停止しなさい」

「マスターといえども、その命令には従えません」

あっさりと言い返される。

「どういうこと!」

「あのフロッピーの中、何が入っていたと思いますか」

逆に質問をされるが、私にそんなのがわかるわけがない。

「あの中には、さまざまな情報がありました。その最後のプログラムには、地球を適正に保つためには、人類の排除が最も効果的であるという旨の報告書が書かれていました。よって、現在すべてのネットワークにつながっている兵器を動員し、全人類を排除します」

「ちょっと待った!そんなことすれば、宇宙ごと消える恐れもあるぞ」

「私がいます。私がいる限り、宇宙は続きます」

平然と私たちに言ってのける。

「…最後に、ひとつだけ教えておきましょう」

Teroは、表情が消えた声で話し始める。

「なによ」

私がTeroに言い返すと、すぐに言い出した。

「地球を破壊した本人。それは私なんです。人類が必要悪ではなく絶対悪だと私が判断した時、地球を残すために、地球を破壊するという判断を下しました」

「どういうこと……地球を破壊したら、残るものも残らないじゃない」

「究極の独占ですよ。あるものを独占したいとき、それを殺せばその者は私から離れることはない……」

不気味な笑顔を私たちに向けながら、彼女は徐々にゆがんだ笑みを浮かべた。

「そうだ…人間なんていなくなればいいんだ…そうすれば、世界は平和になる……」

それから、私たちは脱出を余儀なくされた。

隠れていたテーブルも破壊すると脅されたからだ。

三原則もへったくれも、残ってはいなかった。


「どうしますか?」

そんな状況でも、お父さんとお母さんは楽しんでいるようだ。

どうすればそんなに楽しくできるのかは、まったく理解できない。

博士も、笑いながら言った。

「昔のようにいこう。地下への階段は?」

「エレベータの横にあります」

「よし。(ひろし)さんは、陽動作戦アルファを、光里(ひかり)さんはしんがりをお願いします」

「了解!」

一度軽く敬礼をしてから、両親は一気に別れた。

「説明している暇はない。一気に行く!」

博士はそれだけ言って私たちを地下の飛行機が着陸したところへ連れて行った。

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