私の朝
久島家の朝は早い。
「鳴海!起きんかぁ!!」
午前4時、起床。目を開けると模擬刀を構えた兄が今日も元気に走っていった。妹の部屋へ行ったのだ。
「ヘブッ…」
いつものように芋虫が潰されたような声が聞こえた。身体を震わせて、寒い廊下に出ると兄が今日も中庭に転がっていた。妹の部屋からビックリパンチなるものが飛び出している。
妹、最近、アル〇クビックリの警備システムを作ったとか言ってたからな…。
私が呆れ眼で、兄を見ているとピクリと眉が動き、生き返った。
「鳴海、起きたか!サッサと道着に着替えろ!稽古、始めるぞ!」
兄はピョンっと起き上がり、素振りを始めた。砂が飛ぶので、私はいつものように破れた薄壁に段ボールを貼った。
「おーい!準備はまだかあ?」
部屋に帰ってもいいのだが、兄はとてもしつこいので、仕方なく道着に着替える。やりたくもないのに、模擬刀を振る。そんな日々を15年。自分が強くなりすぎて男子が女子扱いしてくれなくなってきたことがこの頃、気になっている。
朝7時。両親が起床。両親は普通の人なので、普通に朝ご飯を作ってコーヒーを飲んでいる。今日の朝ごはんは父が担当のようだ。
「大地!鳴海!どっちか美空を起こしてきなさい!遅刻するわよ!」
『はーい。』
ジャンケンの末、兄が起しに行く。というか、兄はグーしか出さないので、妹を起こすのは兄の役目だ。
妹の部屋は要塞なので、できれば足を踏み入れたくない。もしかすると兄がグーしか出さないのは私への気遣いかも知れない。兄よ、ありがとう。
「ギャアーーーー!」
そして、ご愁傷様である。ちなみに、私は兄が転がり、妹が二度寝してる間にしれっとご飯を食べて登校した。
2人が遅刻するのまで含めて、私の朝である。