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二、執着の駅

 今回は乗るのを遅らせた男の話。

 

 電車に乗るのを遅らせた俺は、駅のベンチで身体を休めた。

 おかげで、だいぶ回復した。

 22時30分発の電車に乗り込む。

 さすがに、遅い時間帯とあって、この車両には誰もいない。

 俺は電車の長椅子にどかっと腰をおろし、端にある鉄の手すりに頭をもたせ、目を閉じる。


 ほどなくして、電車は駅を出発する。

 電車の揺れが眠りを誘う。

 ウトウトしだす。


「わっ!」


 俺は驚いた。

 目の前に、あと数センチで顔がつきそうな距離で、中年の男がじっと俺を見ているのだ。

 俺と目が合うと、男は、


「あ・・・あ・・・あ」


 と片言を言いながら、前の車両へと行った。

 男のいった車内はがらんどうだ。


(なんだ今のは・・・)


 男の滑稽な姿に驚くも、すぐにまた貸し切り状態か、そんなのんびりな事を思う、自分に自嘲し俺は笑う。

 ふいに、睡魔が襲う。

 また。ウトウトしだす。


「えっ!」


 俺は驚愕した。

 俺の目の前で男が倒れていたのだ。

 しかも見ればさっきの男、俺は倒れている男の肩を叩く。

 男は気が付くと、立ち上がり、また、


「あ・・・あ・・・あ」


 と、言いながら、今度は後ろの車両に消えて行った。


 かなりの不気味さを感じつつも、俺は再び、目を閉じ・・・ない。

 眠れる訳ないだろう。

 俺は静まり返る車内で、辺りの様子を探った。

 耳を澄ますと、前の車両、後ろの車両からも呻き声が聞こえていた。


 俺は不安な気持ちになり、鼓動が早鐘を打つ。

 気を紛らわそうと、車窓を見た。

 車窓に映るのは、あの男だった。

 首を90°に傾けてじっと、こちらを見ている。

 俺は嫌な汗をかいていた、振り向くのに勇気がいる。

 とりあえず、しつこい男に、そのままの姿勢で、


「何か?」


 と、車窓に映る不気味な男に尋ねた。


「あ・・・あ・・・あ・・・あ~!」


 男が俺に飛びかかろうとするのが見えた。

 俺は咄嗟に身を引いて、男をかわすと、前の車両へと逃げる。

 

(ああ、お約束だ・・・)

 

 俺は溜息をついた。

 連結部の扉の窓に見える光景は、男のように多数の男女が、車両内を呻きながらさまよっている。

 俺は引き返し、男がまた飛びかかるのをかわし、後ろの車両へ。


(ああ、やっぱりな・・・)


 状況は全く変わらない。


 突然、電車の灯りがすべて消えた。


「うわあぁぁぁ!」


 俺は叫ぶと、頭を抱え込み、しゃがみ込んだ。

 身体を丸くし、恐怖に震える。



(待てよ・・・俺は何か忘れてないか)


 震えが収まると、怒りがふいに湧き出る。

 俺は立ち上がった。

 闇の中で、今、俺はすべてを思い出した。


(そう、そうだ!俺は、この日を待っていたのだ・・・この仲間達と数百年前におよぶ怨みを晴らすために・・・俺はここにいる)


 俺は、首を90°に曲げ笑った。


「あ・・・あ・・・あ」


 俺は仲間とともに、執着と終着の駅へ着くのを待つ。

 俺の瞳から、憎悪と歓喜の血が流れる。

 そう、復讐の時が来たのだ。

 そして至福の時は間もなくだ。


 この手の話もよくありますね。

 乗った電車にゾンビがいた。

 ちょっぴり裏をかいて、お仲間でした。

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