CP1 かつて世界を救った者たちは
前置きが長くなりますが、よろしくお願いします。
尊は軽自動車のタントを家の前までまわす。
大きな欠伸をしながら、壱与は助手席に乗り込むんだ。
「んじゃ、いってきます」
尊は窓を開け、軽く手をあげる。
「いってきます」
壱与は、目を閉じたまま、背を深く椅子にもたせ、またひと眠りしようとしている。
「はい、いってらっしゃい」
十六夜は兄と妹を見送る。
車は小さなクラクションを一つ鳴らし、走り出す。
彼女は大きく伸びをし、家に戻る。
今日の大学の講義は午後からなので、スマホ片手に優雅に朝寝としゃれ込んだ。
車は学校へと進む。
「おい、壱与、目さませ」
「ふあい」
「お前、朝までゲームし過ぎだ。今年、受験だってのに・・・」
「は~あ、前は女王で試験なんかなかったもん」
「それは言わない約束、郷に入ったら郷に従えだ」
「うー」
「ほい、ここで降りろ」
「えー別にいいじゃん。兄妹で登校しても」
「・・・なにかと学校受けがよくないし世間体がある。それに一般の思春期の女の子ならば、
普通は嫌がるんだけどな」
「うちは普通じゃありません」
「まあな、とにかく降りた、降りた」
「ほーい」
いつものように人通りの少ない道の脇に車が止められると、壱与は渋々降りる。
「じゃあな、お姫様」
「おっす、ひめっち」
後ろから声がした。
クラスメイトの知念黄河が、手をあげてやって来る。
「あっ、こーちゃん」
壱与は振り返り、にこりと笑う。
「おっす、たけっち」
「・・・たけっちじゃないだろ。先生だろ」
「そうだった。たけっち」
黄河はニヤニヤと笑っている。
「ったく・・・じゃ、二人とも後でな」
「ああ」
「じゃね」
二人は手を振り、尊は片手を上げると車を走らせた。
十六夜は目を覚ますと、学校へ行く準備をする。
11時に友人の暁守里が彼氏翁長由利の運転する車
で迎えに来る。
3人は瀬長島のウミカジテラスで、講義の開始時間まで暇をつぶすことにした。
振り返ると、そこには青い海と広がる空がある。
開放感のあるこの場所で、おしゃれなお店を見て回った後、三人は行きつけのタピオカド
リンク屋でお茶をする。
店の扉を開けると、空調が利いていて涼しい、店内はいつものように盛況だ。
「あっ、いざちゃん、いらっしゃーい」
顔なじみの店長花々が厨房から顔を覗かせる。
「花さん、今日もよろしく~」
「ゆっくりしていってね」
「はい」
店員の蕉蝉がカウンターへやって来る。
「注文は?」
無表情で三人に尋ねる。
「私、ミルクティー」
と、十六夜。
「私も」
守里。
「俺はマンゴータピオカとサンドイッチで」
と、由利。
「あいよー、花さん、ミルク2、マン1、サンド1」
「はい」
蕉蝉も厨房へ消えて行った。
ほどなくして、カウンターに戻ってきた彼女は、無造作にドリンクとサンドイッチを置い
た。
「相変わらず無愛想ね。蕉蝉さん」
十六夜はトレイにドリンクを入れながら言う。
「悪かったわね」
腕組みをして言う蕉蝉に十六夜は肩をすくめる。
「いえ」
三人は、テラスにでて、海を見ながらドリンクを飲んだ。
「いらっしゃい」
アルスの声がする。
店の中は閑散としている。
「相変わらず繁盛してないなぁ」
尊はカウンター端のマイ席に腰を掛ける。
「悪かったな、タケ」
「マスター冷コー」
「あいよ。ママお願い」
「はーい」
奥からローラがやって来る。
「あらっ、タケいらっしゃい」
「いらっしゃいました」
「ふふふ」
「ママ、ちょっとアリス迎えに行ってくる」
アルスは尊にウィンクをすると、カウンターを出る。
「はーい」
背中越しにローラは言う。
カランコロンと扉の鐘が鳴る。
「どうした?」
「最近、物騒でしょ。念の為よ。アリスを小学校までお迎えに」
ローラは尊の目前にアイスコーヒーを置く。
「ああ、ゆいレールの」
グラスが汗をかいている。
氷が溶け、グラスが鳴いた。
「そう」
ローラはゆっくりと頷いた。
尊はストローで、コーヒーをかき混ぜた。
次回、急展開の予定(笑)。
予定は未定です。
では、引き続きよろしくお願いします。




