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海の近い駅~猫と私~

 危うく恩返ししてしまうところだった(笑)。


 海野真理(うみのまり)・・・17歳、一年前、少しだけ心が辛かった少女、夏休み沖縄の出会い、経験から前向きなる。現在、海が丘高校二年生。

  海野凛(うみのりん)・・・14歳、真理の妹。沖縄のおじい、おばぁが大好き。姉はもっと大好き。現在、海が丘中学三年生。


 家の石段に踏み出す瞬間が好きだ。

 目の前には海が広がっている。

 階段をゆっくり降りる。

 ずっと海が見える。

 ここに住んでいる人達のほとんどが、この景色が好きだろう。

 特に朝焼けの時や夕焼けの時、海がほんのり赤く染まり、周りがシルエットのようになる

と、なんだか別世界に来たような気がする。

 私はゆっくり階段を降りる。


「おねえちゃん」


「あっ、凛」


「あっ、凛じゃないでしょ。また海見てたの、もうすぐ夕飯だよ」


「うん。分かった」


 私は、大好きな風景を後にする。



 朝は、潮風が心地よい。

 キラキラとした海を見ると、気分があがる。

 洗濯した制服の香りをすーっと吸い込むと、不思議と心が落ち着く。


「ごめん、おまたせ」


「遅い、凛」


 私は妹と海の見える長い階段を降りる。

 途中、気まぐれな猫が、道をのっそり横切ったり、階段の手すりに腰掛けまったりとしている。


「いいなぁ、ネコさん達は」


 猫だって、様々な葛藤や苦労もあるだろうに、楽天的な凛の考え方には、羨ましいと思うが異論ありだ。


 海が次第に見えなくなると、すぐに道に出る。

 ほどなく歩くと駅に着く。

 二駅先が、私達の通う学校だ。


 電車に乗り込むと白い大きな猫を見た。

 たまに車内にこうやって、迷い込む猫がいる。

 ・・・いや、猫にしたら意図して乗っているかもしれない、じゃあ無賃乗車じゃないか、

なんて考えていたら、すぐ駅に着いた。


 海が丘校は中高一貫で、中学、高校は隣合っている。


「じゃあね、おねえちゃん」


 私は凛と中学校の校門前で別れて、高校へ向かう。

 友人が後ろから追いかけて来る。

 私達は並んで歩いた。


「また。いたね、あの猫」


「楓も見た?」


「うん、見た見た。さっき、すれ違ったよ」


「私は電車の中で」


「いつも、どこに行ってるんだろうね」


「さあ」


 私は、思わずそっけなく言ってしまい、楓からむすりとされてしまった。


「ごめん、ごめん」


 

 学校が終わり、私は帰宅する。

 下校時間が違う凛はすでに家へ帰っているだろう。

 私は楓と数人の友人と一緒に高校を後にする。

 駅前で、みんなと別れて電車に乗る。


 がたこと、がたこと。


 電車の揺れが気持ちいい、一瞬、ウトっとなりだしが、懸命に我慢する。

 だって、ウトウトしたら最後、降りる駅を絶対にスルーしてしまうから。

 人少ない車内、大きな欠伸を、口を押えながらする。


 隣にあの白い猫がいた。


「ん?」


 まんまる白猫は巨大化し、長椅子に座っていた。


「じょうちゃん」


「ん?」


 私は状況を把握出来ない。


「ワシワシ」


 猫はくいっくいっと自分を指さす。


「・・・ネコが喋った!」


「まぁ、そんなこともあるさ」


「あなたが言わないで」


「ほ、ほ、ほ、まぁよいではないか」


「・・・これは夢でしょう」


「それはどうかの」


 猫は目を細め、にかっと笑った。


「怖い・・・」


「ごめん、ごめん」


「ああ、こちらこそ、なんか、すいません」


「よいよい。同じ、二駅先までともにまいろうぞ」


「・・・はぁ」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「何か話すことはないかの」


「ごめんなさい、突然の事で私どうしていいか分からなくて」


 私は知らない男子に告られた体で話す。


「何様のつもりじゃ」


「・・・・・・」


「いやいや、お前さんの、男子に告る・・・って心の声が聞こえての」


「・・・わわわ」


 私は顔が真っ赤になった。


「青春じゃのう」


「仕向けたでしょ」


「何が?」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・すまん」


 私に向かって、猫はぺこりと頭を下げた。

 その仕草が、でかいけど、ぐっとくる。


(可愛い・・・)


「そうじゃろ」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・計算?」


 私は猫に聞いた。


「まぁ、せちがらい世の中を生きていくのは、いろんな術が必要じゃて」


「猫歴は長いの?」


 こういう時って、年はいくつみたいな聞き方が良かったのか迷うが、とりあえず気になったので、聞いてみた。


「人間歴で11歳じゃ」


 あちらもさるものだった。


「長生きなんですね」


「そうかの」


「そうですよ」


「ありがとう。お前さんはいくつじゃ」


「・・・今年で17です」


「ほう、猫歴でいうと・・・まだまだ若いな」


「恐れ入ります」


「そろそろ駅に着くぞい」


「そうですね」


 電車はゆっくり駅へ停車する。


「また、会おう」


 さっきまで、大きかった猫はいつの間にか、元のサイズに戻っており、悠々と電車を後にし、海の見える階段へむかう。


・・・・・・。

・・・・・・。

 ・・・・・・。


 私は目を開ける。

 電車は3つ先の駅を越えたところだった。


「にゃろ・・・」



 私は電車を乗り継ぎ、退き返して駅に降りた。

 海が見える階段をのぼり、家へと向かう。

 階段隣右、家の庭の垣根の木の上のに、あの白い大きな猫がいた。

 のんびり欠伸をしている。


 私はゆっくり近づくと、


「わっ!」


 白猫を脅かした。

 猫はびくりとさせると、こっちを見て、目を細め猫なで声で、甘えて鳴いた。

 

「にゃーん」


 なんとか、恩返しする前に踏みとどまりました(笑)。

 ジブってしまいそうになるブレーキをかけましたが、ギリセーフかな(笑)。

 今回は、イメージは尾道。ほのぼのでいきました。

 沖縄の小さな島を舞台に少女の成長を描く物語「美らん花」、絶賛投稿中です(笑)。

 姉妹はその登場人物です。

 では、次回もよろしくお願いします。

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