ぼくらは、福島探検隊~「八女之来い物語」より~後編
地元の怪談です。
当時は、本当に怖かったなあ。
福島探検隊・・・福島は八女市の地名、福島小学校がある。
メンバーは望、タカシ、ミカ、ヒロキの四人。
「というわけなんだ」
望は一気に昨日の話をした。
腕組みをしたまま、タカシが聞いてくる。
「で、どうするの?」
「僕ら福島探検隊で、なぞをとき、出来ればつかまえるんだ」
「誰がつかまえるの」
ミカが聞いてくる。
「それは・・・」
望は言葉に詰まる。
「言い出しっぺだろ」
ヒロキが言った。
後には引けない空気となり、
「分かった、僕がつかまえるよ」
「でも、どこで、どうやって」
「うーん、お父さんが伝統工芸館のところが、昔の矢部線の福島駅があったところだって、廃線のあったところは、藤棚のある前の道だって言っていた」
「それだ!」
タカシが叫ぶ。
「張り込みね」
ミカが目を輝かせる。
彼女はこの年にして、年の離れた兄の影響で刑事ドラマが大好きなのだった。口癖は「必ず、ホシをあげる」だ。
「よし、やってみよう」
ヒロキも同意した。
「じゃ、今日の学校帰りに伝統工芸館前で福島探検隊集合だ!」
望はみんなの前に手を差し出す。
タカシ、ミカ、ヒロキはその上に手を重ねる。
「やるぞ!」
「おう!」
四人は掛け声をあげ、気合を入れた。
ミカがぼそっと、
「かならず、ホシをあげる」
と呟いたが、三人はあえて、聞こえなかったふりをした。
学校が終わり、ランドセルを家に置いて、工芸館前に集合した四人はそれぞれ散らばり、テケテケさんがやって来るのを待った。
一時間が経った。
少しずつ陽が落ち、辺りが赤くなる。
タカシは飽きて、工芸館横の物産館でアイスを買って、そこのベンチで涼んでいた。
ミカは、工芸館の物陰に隠れ、ちらちら道路を見ながら、五個入りアンパンの三個目を食べ、ちびちびと生暖かくなったらくのうマザーズのパック牛乳を飲んでいる。
ヒロキは道路の歩道にへばって座り込んでいる。
首謀者の望は、自信がなくなっていた。
よくよく考えると、今は線路もない、人通りもそこそこあるこの場所に、テケテケさんは現れるはずはないと思ったのだった。
五時半になり、望の子どもフォンのアラームが鳴り、門限を知らせる。
望はみんなに号令をかけ集合させる。
「今日は残念だけど、解散」
「テケテケさんなんて、いないんじゃないの」
「くそっホシは現れなかったか」
「また、今度・・・な」
四人は家に帰ろうとした。
その時。
四人の周りの辺りが、セピア色に暗くなる。
目の前に今はない福島駅、そして後ろには線路がある。
「あれっ!」
タカシが叫んだ。
線路の向こうから、ものすごいスピードで迫って来る人。
下半身がなく、手をバタつかせながら走って来る。
「テケテケさんだ」
「・・・ホシが現れた・・・だと」
「リーダー」
「・・・うん」
望は、勇気を振り絞り、線路の前に立つ。
(さぁ、来い)
テケテケさんは恐ろしい形相で、線路を走って来る。
(ぶつかる。やばい、こんなの絶対止められない)
望は歯を食いしばった。
テケテケさんは、望をすり抜けた。
ぶつかった衝撃も痛みもない、望は振り返った。
遙か向こうをテケテケさんは走り去っていく。
テケテケさんが見えなくなると、四人は伝統工芸館の前にいた。
四人は恐怖のあまり、黙ったまま別れた。
あれは何だったんだろう、みんなはそう思いながら。
望は今日の出来事を父と母に話した。
希穂と匠は顔を見合わせると、ぎゅっと望を抱きしめた。
「八女之来い物語」絶賛投稿中(笑)。
二人の子ども、望君の活躍でした。
実はちびったとか、ちびってないとか・・・いや~私だったら百パーちびるなあ(笑)。
では、次回もよろしくお願いします。




