ぼくらは、福島探検隊、テケテケ(パタパタ)さん~「八女之来い物語」より~前編
テケテケさん、確か地元ではパタパタさんと言っていました。
馬場望・・・7歳、小学二年生の少年。福島探検隊のリーダー。
馬場希穂・・・42歳。望の母。かつてアラサーの婚活の大変さを味わう。
馬場匠・・・36歳。望の父。地元、八女そして希穂ラブの旦那さん。
夕方の食卓に3人の家族がテーブルを囲んで食事をしている。
「ねぇ、お母さん、お父さんテケテケ(パタパタ)さんって、知ってる?」
望はそっと野菜炒めのピーマンを、皿の死角に隠した。
希穂はそれを見逃さず、人差し指をたて死角を指さす。
望は鼻をつまみ、しかめっ面でピーマンを食べる。
母は満足そうに頷き、
「知っているわよ。下半身がない、上半身の男の人がパタパタって線路内を走って追いかけて来るんでしょう。私の小学校の頃まで、一部、廃線になった線路が残っていたわ。矢部線って言うんだけどね。子どもたちはその話、みんな知っていたわよ」
「へぇー」
「そうそう」
匠は頷いた。
「あれっ、お父さんの頃って、線路跡あったっけ?」
希穂は首を傾げた。姉さん女房の彼女は匠と年が6つ離れている。
矢部線の廃線が残っていたのは、かなり前の話である。
「いや、なかったけど、じいちゃんが矢部線の事は言っていたよ。それにテケテケさんは、俺らの小学校の頃でも有名な怪談だったし」
「流石、じいちゃんっ子ね」
「いや~」
「そうなんだ」
望は目を輝かせる。
「じゃあ、捕まえた人っているの」
望の疑問に、二人は顔を見合わせると、同時に首を振った。
「いや、あくまでも怪談、都市伝説だからな」
「でも、見た人がいるって」
父、匠は、身を乗り出した。
「望は見た人に会ったことがあるのか?」
「ううん」
「そうだろ、お父さんもお母さんもない。なんでと思う」
「さぁ」
「ここからはお父さんの推測だが」
「また始まった。お父さんの得意の八女にまつわる話」
希穂はくすっと笑った。
「今回は八女の自慢話じゃないよ」
本人にも自覚はあるようだ。
「元々、この怪談は北海道のお話らしい・・・望、お前怖い話ダメだったな・・・」
「うん」
「じゃあ何で興味をって・・・まぁいいか、北海道の怪談は女の人が電車に轢かれて、上半身が切断されて・・・」
「怖い」
と、望。
「やめて!」
と、希穂。
「だいぶ、はしょってるんですけど・・・、まぁ、その上半身が現れるという怪談が、テケテケさんのはじまりと言われている。」
「へぇ」
「・・・・・・」
「母さん、耳ふさいでるよ」
「で、なんで似たようなお話が、八女にもあると思う」
「うーん」
「この手の話は、全国どこにでもあるんだ。話が広がっていくんだよ」
「うん」
「望、口裂け女って知っているか?」
「?」
「はい、私知っている。私キレイの人でしょ」
「・・・お母さん、もう大丈夫なの・・・この怪談は返事をしないと、口裂け女に殺されるという噂が、瞬く間に全国に広がったんだ」
「?」
希穂はまた耳を塞いだ。
「・・・つまり、テケテケさんは作られた話でウソの可能性が高い」
「でも、学校じゃ、本当に男の人が轢かれたって」
「でも、確かめてはないだろ」
「それは・・・」
「じゃあ、僕、捕まえる」
望は真っすぐ手をあげた。
「おい、おい」
二人は望にツッコミを入れた。
さっそく、肩の力抜いています。
アラフォー世代、今里希穂の恋模様を描いた「八女の之来い物語」拙作にて、絶賛?投稿中です。
良かったら読んでね(笑)。
では、次回もよろしくお願いします。




