蘇る廃駅
これは沙汰目駅のもう一つのお話。
だいぶ、前のことですがね。
ここら辺りは、電車が通っていたんですよ。
赤字ローカル線ってやつです。
文字通り赤字の路線だから、乗る人は少なかったです。
そう、ここらの田園地帯をゆつっらと走っていました。
ほら、あの大木の隣が駅のあった場所なんですよ。
今はアスファルトの道路になっていますね。
この道を線路が走っていたんです。
駅の名前は沙汰目駅といいます。
えっ、そんな駅はない。
聞いたこともない?
おや、あなたどこから来られましたか。
・・・そうか、では早くお帰りなさい、ここはあなたのような方が、くるところではありません。
えっ、話を聞きたい。
・・・しょうがないなぁ。
始発まであと10分か、分かりました、聞いていただきましょう。
これは、沙汰目駅にまつわるもう一つの話なんです。
あの日は、雪がしんしんと降っておりました。
当時、幼かった私は、寝る前にその雪を見て、明日になったら積もってないかなぁと思いました。
子どもって呑気ですよね。
ええ、私の希望通り、翌日は積もったそうです、白く真っ白に何もかも覆いつくしてくれました。
その深い夜に血も凍るような出来事がありました。
この村の有力者の家に坊ちゃんが住んでいました。
・・・と言いましても、20代の私より年上・・・当時ですよ。方がいました。
その20代の若者が突然乱心されたのです。
右手に斧、左手には包丁を持ち、家族みんなを惨殺したそうです。
そして、狂ったように笑いながら外へ出たそうです。
村と言いましても、わずか20軒ほどの家がある小さなところです。
坊ちゃんは一軒一軒、村の住民たちを殺してまわりました。
誰もが寝ている時間帯、みんなはなす術がなかったんでしょうね。
ほとんどの家が血で染まりました。
そして坊ちゃん・・・いや、鬼は、村の端にある私の家までやって来ました。
私は雪の事が気になって眠れず、寒いのに窓を開けて、じっと雪を見ていました。
すると、遠くに悲鳴が聞こえ、それが、少しずつ声が大きくなっていきます。
恐ろしかった・・・ですね。
私は何故、あの時、家族に知らせなかったのでしょう。
今でも悔やみます。
ひたひた、ぴたっ。
近づいた足音が止みました。
私は、窓から出て、そっと逃げ出しました。
あの大木のある駅へと全力で走りました。
足は裸足だったので、もうその冷たさといったらありません。
私は大木を通り、駅の待合室に身を隠すと、ガタガタと震えておりました。
ひたすら夜が明けるのを待ちます。
陽が昇れば、きっと元通り、私はそんな気がしていました。
いや、それを望みにして・・・じっと息を潜めます。
・・・しん、しん、しん・・・
雪が降り続きます。
私はウトウトとしはじめました。
・・・しん・・・しん・・・しん。
・・・しん・・・しん・・・ひた、ひた。
・・・しん、しん・・・ひた、ひた。
カタっと音がしました。
私は身を固めました。
しんしん、ひたひた、しんしん、ひたひたひたっぴたっ。
トントンと肩を叩かれました。
(ああ・・・)
私は振り返ると、血まみれの鬼がいました。
鬼は包丁を振りかざし・・・・・・。
おっと、もう時間ですね。
沙汰目駅の話はここまでです。
続き?それはまた、どこかでお会いしたらお話ししましょう。
いそいで帰りなさい。
決して振り返ってはいけませんよ。
大丈夫、目を覚ましたら、すべて忘れていますから。
これで10作、到達~パチパチ~。
あー、怖かった(笑)。
これにて恐怖語りは完結・・・にしようと思いました、が、もうちょっとだけ続けます。
これより肩の力を抜いて、やってみよう(笑)。
では、次回もよろしくお願いします。




