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紅く燃えて瞳は夢をみる  作者: violet
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王太子ローゼル

開けましておめでとうございます。

読んでくださり、嬉しいです。

本年もよろしくお願いします。

2020年1月1日 violet

「おまえ、何している?」

地を這うような低い声に、王太子ローゼル・デス・デモアは飛び上がる程驚いた。

やましい事をしていたからだ。

上級学校に用意された王族専用室は、ローゼルと側近の専用部屋となっていた。


ジルディークの方も、何しているかなど一目見ればわかるのに、あえて問いただす。

ローゼルとジルディークは、同い年の幼馴染で気心も知れている。

上級学校では同じ科に進み、将来も国を支えていく同志でもある。


「出せ、今隠したろう」

ジルディークの声は低いままだ。


「私のと交換すればいいじゃないか」

ローゼルの提案にジルディークが納得するはずなどなく、ローゼルは机の上に隠していたボックスを出した。


「すごく美味いな。ディークが美味そうに食べるから気になっていたんだ。おまえ、食べ物なら何でも栄養になればいい、ぐらいにしか思ってなかったろう。

それが、ここ最近ランチ持参だろう? 気になるさ。

何といっても素材の色合いが損なわれず奇麗で食欲をそそるな。薄味に見えるが味は浸み込んでいて美味い」

贅沢な材料のソースを使う事で濃厚な味の料理が多いが、塩味だけで育ったレネは、素材を生かし目でも舌でも楽しめる料理を作る。

11歳になったレネは、ジルディーク、ゲイル、アマディの朝食を調理するようになっていた。

ジルディークとアマディにはランチボックスまで作って持たせている。


「この料理人を王宮でスカウトしたいな」

ジルディークはローゼルの言葉を無視したまま、ランチボックスを取り上げる。

「まったく、こんなに食べて。

彼女は料理人ではなく、母の侍女です。母が手放しませんから、諦めてください」

「料理の出来る侍女とは珍しいな。それこそ、食の細い妹の侍女に欲しいぐらいだ」

ローゼルは取り戻そうと手を伸ばすが、ジルディークはランチボックスに残っているサンドウィッチを口に入れてしまった。


「彼女はいささか特別でして、我が家から外には出してません。

王女殿下の侍女は別を探してください」

「ふーん、どう特別なんだ?」

面白そうにローゼルが聞いてくる。


ジルディークは自分とローゼルのコーヒーを入れると、テーブルの上に置いた。

「母が気に入って、孤児院から子供を引き取った。その子の瞳は紫色だ」

カタンとカップの音をたてて、ローゼルがソーサーに置く。

「紫の瞳は、ハヴェイでも貴族の血筋にしか現れない」

このデモア王国では、ハヴェイとの交戦で身内を亡くした多くの人が、紫の瞳に敵対心を持っている。

紫の瞳が、敵国を象徴する印象があるからだ。

「その価値をわかって、父は母に許可をしたのだろう」


「是非、その紫を見たいな。」

「いいでしょう。もうすぐ学校も卒業です。そうなれば、簡単には自由に動けないでしょう」

午後の授業が始まる、とジルディークはランチボックスを片付け始める。


「昼食の礼をせねばならんからな、今日帰りに行くぞ」

予定を頭の中で確認したのだろう、少し考えてローゼルが言う。

「いいですよ。けれど欲しいなどと言わないでくださいね。

彼女は私の物ですから」

ジルディークが所有権を出すのは、どういう意味での所有権かはローゼルには分からない。

まずは、その紫に会わねば分からないと思う。

料理は気に入った、それだけでも価値がある。




夕方、公爵家に帰宅したジルディークはローゼルを伴っていた。

ローゼルは警護の内、一人だけ伴って屋敷の中に入った。

警護のホーガンはローゼルの乳兄弟にあたり、ローゼルが全幅の信頼をおいている人物であった。

「ホーガン、内密の訪問だ。父上には私から後で報告する」

ユレイア公爵家の家令が開けた扉を入りながら、ローゼルがホーガンにだけ聞こえるように囁く。


公爵家では急に訪れた王太子に使用人達があわてて応対をする。

ロザリーナはお茶会で留守だったので、レネは厨房でお菓子を作っていた。

王太子訪問にはビックリしたが、自分には関係ないことだ。

このまま、ここに隠れていればいいかと思っていたら、ジルディークからの呼び出しが来た。

そこには王太子殿下がいるのでしょう、とレネは心臓が飛び出しそうであった。



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