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紅く燃えて瞳は夢をみる  作者: violet
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公爵家での生活

午前中にレネは、屋敷の案内や、他の使用人達に紹介された。

中には紫の瞳に嫌悪を出す者もいたが、ロザリーナが直接に雇用した事と、レネがまだ子供という事で貴族である侍女や侍従達からも受け入れられたようだった。




ロザリーナの侍女はターニャの他にバレッタ、アイリーン、エリーの3名。

彼女達は、ロザリーナに付いて孤児院に来ていたので、レネも見知った顔だった。


「次はこちらのドレスよ」

バレッタに手伝ってもらって、レネはロザリーナが選んだドレスを着ている。

ソファーに座ったロザリーナは指示を出しながら、髪を結ぶリボンを選んでいる。

「やっぱり、女の子は楽しいわ」


ロザリーナが選んだドレスを着て、ロザリーナからマナーを習うのがレネの仕事だと聞かされた。

ロザリーナがお茶会などで留守の間に、料理を習っていいと許可が出た。

ジルディークが与えた課題の言語などの勉強は、午前中に教師が来ることになった。



レネは豪華なドレスで粗相をしないように気を付けながら、ロザリーナにお茶を出す練習が始まった。

アイリーンが茶やカップの説明をして、レネにカップを温めさせる。

孤児院の厚い食器しか知らないレネには、ロザリーナの紅茶カップは繊細すぎて神経が磨り減るほど気を使う。

レネは紅茶の葉の種類を覚えようと、アイリーンの説明を復唱する。


半月も経つ頃には、それは公爵家のありふれた風景となり、レネは馴染んでいった。





仕立てあがったお仕着せを着たレネが厨房で働いていた。

もくもくとジャガイモの皮をむいている。

ナイフをテーブルに置くと、剥いたジャガイモの入ったボウルを料理人のところに運ぶ。

小さな身体で山盛りのジャガイモの入ったボウルを抱き上げ、蒸し器の横に持って行く。

「レネ、次はマヨネーズを作ってくれ。この間教えたろう」

「はい」

レネは別のボウルを取り出すと卵を割った。

泡だて器で混ぜながら、レネは料理人達の仕事を観察する。

料理の材料、切り方、手順、調味料。

覚えることがいっぱいだ。見ていると時々呼ばれて味見させてもらえる。

スープを作る手伝いもさせてもらえるようになった。


「おい、おまえ。部屋に茶を持ってこい」

「はい」

何故かアマディが、よく厨房に来るようになった。

そして、レネに用事をいいつけるのだ。

レネは、すっかり覚えたアマディの好みのお茶の用意をして、アマディの部屋に向かう。

アマディは言わなかったが、クッキーやパウンドケーキを一緒に持って行くと喜ぶのも分かってきた。




レネが9歳になる頃には、簡単なケーキや料理が作れるようになっていた。

オーブンを使うのに、背が足りないレネの為に踏み台も作られた。



カタカタ、レネはワゴンを押しながら廊下を歩いていた。

ジルディークに呼ばれていたので、お茶の準備をして向かったのだ。

コンコン、扉をノックしてジルディークの入室許可を待つ。

「レネか?

入っていいよ」

ジルディークは、上級学校に通いながら、公爵の手伝いとして領地運営を勉強していた。

机の上に広げていた書類を閉じると、ジルディークは部屋の真ん中にあるソファーに座った。目はレネの動きを追っている。


「教師から報告を受けた。ハヴェイ語は順調のようだな。

明日から、もう一人教師が増える、カザスランド語の勉強が始まる」

レネは、お茶を淹れてジルディークの前に置くと、サンドウィッチの皿も置いた。

これは? とジルディークが目で問いかけてくる。

「お食事を外で取られたとお聞きしましたので、夜食にお持ちしました」

ジルディークは一切れ口に入れ、レネを見た。

「濃いソースより、薄いソースの方が食がお進みのようなので、肉の味付けをしっかりしてソースは少量にしました」

「レネが作ったのか?」

ジルディークへの返事に、レネは頷いて答える。

「上手いな、明日の朝も用意できるか?」

「はい」

「話は以上だ。今日は早く休め」

ジルディークはティーカップとサンドウィッチを持って、事務机に向かった。

レネはそれを確認して、部屋を出て扉を閉めた。



やったーーー!

食べてもらえた! 気に入ってもらえた!

レネはカートを厨房に返すと、飛び跳ねるような勢いで自室に戻った。

ベッドのクッションを抱きしめて、転がった。


明日の朝は何にしよう、作れるようになったレパートリーを思い起こす。

考えているうちに、レネは寝てしまった。




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