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紅く燃えて瞳は夢をみる  作者: violet
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祝賀会

やたらと兄が嬉しそうで困る。

それが、レネの実感である。


「姫様、ステップが違います」

パン! と手を叩いてアウロラが後ろに立つ。

包帯が取れてはいないが、ずいぶん良くなったようだ。


「誰でも得手不得手があるのよ」

フフフ、とレネが笑うと、アウロラが額に手を当てた。

「王太子殿下は、姫様と踊られるのを、とても楽しみにしていらっしゃいます」

「そうなのよね」

どうしてあんなに喜ぶのか、レネには分かっている。


兄にとって父は家族でない。

心を閉ざしていた母が、兄を認知していたというのは、兄が母を訪ねていたということだろう。

5歳から15年間。

長い。

そして、周りの王太子への期待に応えるべく、どれほどの苦労をしてきたのだろうか。


「お兄様に恥をかかせるわけにいかないわ。 もう少し頑張ります」

レネが男役のライアの手に手を乗せる。

1週間後に、デモア王国との和平条約締結の祝賀会があるのだ。

メイナード王太子は主役の一人である。

その時に、王妃とエミリーローズ王女のお披露目もされる。


王妃は大臣達から、不在の間の報告という教育に入っており、王太子は急遽デモア王国に出向いた為に、寝る間も惜しんで執務中だ。

その割にレネの動向を見にくるが、本人は息抜きと言っている。

「お兄様は妹を好き過ぎて重いわ」

「姫様の意見には賛成です」

クスッと笑いながら、ダンスの相手をしているライラも同意する。

メイナードはレネが朝食を作ると知ってから、毎朝一緒に食べるようになった。


ハヴェイに行っても、結婚が許されなかったら、家出してジルディーク様のところに戻ろうって思っていたけど、あの兄を捨てていけない、困った事態になったレネである。


そのジルディークは、アマディが逃げた事でユレイア公爵家が大変な事になっているのだが、レネは知らない。



「姫様、仕立て屋の来る時間です。」

キャスリンが、レネとライア、アウロラに声をかける。

「わかりました」

王宮に戻ってから、レネは王妃の着せ替え人形だ。

祝賀会の準備は進んでおり、側室の動向も気にはなるが、先ずは祝賀会でメイナードと踊るので、その練習だ。

レネはアウロラ達に、貴族の令嬢として祝賀会に出るか確認したのだが、人目が怖いという、心の傷の深さを思う。





そして祝賀会の夜は始まる。

いつもは王と最後に入場する側室アリアと息子オーランドが会場に待機しており、人々は噂が本当であったと認識する。

王妃と王女の帰城。


「アリア様、ごきげんよう」

側室アリアの前には、挨拶の人々が集う。

15年もの長い間、王の横で権力を持ち、女性貴族の頂点に君臨してきた女性。

男爵家に生まれ、子爵夫人となったが、王の側室になる前に離縁している。

成人の息子がいると思われない美しさを保っている。

アリアは茶色の瞳だが、息子二人は紫の瞳だ。


ハヴェイを離れて育ったレネにしてみれば、目の色ぐらいでなんなの、だが、ハヴェイの貴族はそうではないらしい。

しかも初めて会う人は、必ずレネの瞳を確認しているのが感じ取れる。

感じ悪い、ではすまされない何かがハヴェイには、あるのかもしれない。


王家の入場が告げられると、人々の視線が入り口に集まる。

王がエスコートして歩く女性こそ、王妃セレステア。

若い貴族は知らないが、15年前の王妃の姿を覚えている貴族も多い。


デモア王国とハヴェイ王国が休戦になったのも、王妃の国の鉄鉱石の流通と仲裁があったからだ。

昔、デモア王太子夫妻が襲撃された国境は鉄鉱の山の町だった。

デモア王太子がすぐに新しい妃を娶ったことから、王太子妃暗殺が目的とも噂されたが、両国とも襲撃は相手国が犯人と決めつけ、国境に広がる鉄鉱山全てを手中に治めるべく開戦となり、長く続く戦争となった。


王がどれほど側室を切望しても、王妃をないがしろにすることは出来ない。

王妃も王に失望しても、自国とハヴェイだけでなく、デモアとの休戦までなくす可能性がある為、我慢するしかなかったのだ。

王妃が表舞台に戻った今、側室の立場は危うくなっていくと皆が思っている。


その後ろを王太子メイナードがエスコートしているのが王女。

王女の名前さえ知らない人がほとんどである。

だが、その瞳の色で名前を知らなくとも、王女であると認可されるのだ。



人々の様々な思惑が渦巻く祝賀会が始まる。



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