表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅く燃えて瞳は夢をみる  作者: violet
39/76

ロザリーナとの別れ

午後になって、ユレイア公爵夫人ロザリーナが侍女のターニャを連れて登城した。


レネに与えられた客室に、たくさんのドレスを広げている。

「あれも、これもまだ手を通してないのよ。 レネが乗る馬車とは別で送るわね」

ロザリーナがソファーに掛けたドレスにリボンを合わせながら準備する。

子供の頃から続いている着せ替え人形。

ターニャに肌の手入れを教わり、髪も梳いた。

孤児院に居た頃より、ずっと奇麗になったと思う。 それをロザリーナが褒めてくれた。

子供のレネに出来ることは少ない。 それでも居場所を与えてくれた。


病気になった時も、ターニャとロザリーナが付いてくれた。

ロザリーナが母なら、ターニャは姉として、レネに接してくれた。

「ハヴェイに行きたくない。 ずっとここに居たいんです」


レネの言葉にターニャの瞳が潤んでくる。

ロザリーナがレネに微笑む。

「あらあら、嬉しいけど、ダメよ」

普段から穏やかな性格のロザリーナは、優しく言葉をつなぐ。

「レネは、まだ15歳よ。

ずっとここに居るなんて、もったいないわ。

知らない国で知らない事を見てらっしゃい。 もうダメだと思った時に帰ってきたらいいのよ」

ね、とロザリーナが言うのをレネは見ている。


「帰ってくる?」

「そうよ、私はレネの保護者ですからね。

戻ってきたら、冒険の話を聞きたいわ」

「ロザリーナ様、すごい、そうですよね!

私、いろいろな所に行ってきます。 ロザリーナ様楽しみにしていてください」

レネはドレスを手に取り、身体にあててみる。

「このドレスはロザリーナ様とお揃いだったのに、着る機会がなくって残念」

「庭でピクニックしようて言ってたのよね。

レネのサンドウィッチ楽しみだったのに」

ロザリーナも、残念そうに溜息をつく。


「これは派手やかで楽しそうですね」

いつの間にか来ていたメイナードが声をかけて来た。

ロザリーナとターニャが立ち上がって、礼を取ろうとするのを止める。

「どうか、堅苦しくなさらないでください。

僕の方こそ、お礼を言わねばならないのです」

メイナードが手を広げて、ソファーに座ったままでと言う。


「初めてお目にかかります、公爵夫人。

ハヴェイ王太子メイナードと申します。

妹エミリーローズの事は、どうぞご内密に」

「ええ、レネは外出させなかったので、家の者しか知りません」


王太子の笑みを浮かべてメイナードがロザリーナの向かいに座る。

「エミリーローズを保護していただき、ユレイア公爵家には言葉に出来ないほど感謝しております」

それは? とメイナードが広げたドレスを指した。


「これは、レネに作ったドレスですわ。

我が家には男の子ばかりなので、レネを引き取りましたの。

何を着せても可愛くって、お料理も上手で、いい子ですのよ」

ロザリーナが説明するが、メイナードは、レネがロザリーナの為に引き取られたとは思っていない。

諜報活動の教育を施すべく、幼いうちに引き取り、トウゴ伯爵の事件で危険な任務をさせたとの認識だ。


「エミリーローズを可愛がってくださり、ありがとうございました。

僕は会議を抜けて来たので、すぐに戻らなければなりませんが、改めてお礼に伺います」

メイナードが礼をして部屋を出て行く。



「レネ、街で評判のスィーツも持って来ました」

ターニャがお菓子とお茶の用意を始めるのを、レネが慌てて手伝う。


その様子を見ていたロザリーナも、もう見られないと分かっている。

「娘がお嫁に行くって、こんな感じなのかしら?」

「ロザリーナ様、ちょっと違うと思いますよ。

私は、絶対にジルディーク様の所に帰って来ますから」

あら、勇ましいとロザリーナが笑うと場が和む。


幼い頃から、こうやってお茶を飲みながら、着替えて話をして、可愛がってもらった。

もう会えないなんて、思いたくない。

今はロザリーナと別れなければならない、けれど戻って来たい、とレネは願う。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ