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紅く燃えて瞳は夢をみる  作者: violet
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幸せな時間

オーウェン公爵の強い希望で、和平交渉の前にレネとの謁見になった。


レネは迎えに来たジルディークにエスコートされて歩いている。

王宮の廊下は少ないとはいえ、人目がないわけではない。

嬉しいけど恥ずかしい。

「ジルディーク様、他の人に見られます」

誰かに(とが)められて愛人枠から外されるのは困る。


頬をうっすら赤く染めたレネを見ながら、ジルディークはニヤリと笑う。

「やっと会えたんだ。

レネは会いたくなかった?」

分かっていて聞いている。

「凄く会いたかったです。 でも、ハヴェイのお嬢様方の事を思うと申し訳なくって」

それに、こんな人目のあるとこではなく、二人きりで会いたいな、と思ってしまう。


「褒美もあげないとな」

ジルディークの言葉に、ポンと音がするように真っ赤になってレネがポカポカとジルディークの腕を叩く。

「ここ、人目のある廊下」

人目を気にすると言いながら、レネはジルディークにじゃれている。

一緒にいるだけで身体が温かい。

自然に笑顔が(こぼ)れてくる。元々が綺麗な娘だが、ジルディークには眩しい。


子供の頃から、ジルディークには婚約者がいたが、こんな気持ちにはならなかった。

諜報に使えると引き取った子どもだった。

もう、二度とあんなことはさせない。代わりがいないと思い知らされた。

「オーウェン公爵は、レネに礼を言いたいそうだ」

真っ赤だったレネの顔が一瞬で冷める。

「役に立ってよかった」

口には出さないが、怖かったのを思い出したのだろう。

ジルディークは、腕に回されたレネの腕にもう片手を添える。


お互いの視線が重なる。

嬉しい、ジルディークの愛情を感じる。

ずっと片想いだったのに、こんなに幸せでいいんだろうか。

幸せ過ぎて怖い、まさにレネはそれだ。



王族を迎える部屋という事で、用意された部屋は国の威信を表すような豪華な部屋である。

一歩踏み入れたレネは、豪華過ぎて身が引く状況だ。


オーウェン公爵は、レネが部屋に入って来て明らかに驚いていた。

「こんなに若いお嬢さんだったのか」

「彼女は15歳です」

オーウェン公爵と一緒に部屋に待機していたローゼル王太子が答える。


レネがカーテーシーをしているにも関わらず、公爵は走るように、レネの元に駆け寄って顔を眺めた。瞳を見つめたと言うべきか。

「ご両親は?」

デモアの公爵家の侍女ということで、貴族令嬢の行儀見習いと考えているのだろう。


レネはジルディークを仰ぎ見るとジルディークが頷いた。

ゴクンと唾を飲み、ゆっくりとレネが口を開く。

「私は、赤ん坊の時に王都にある孤児院に拾われて育ちました。

8歳の時にユレイア公爵夫人に引き取られ、教育を受けさせていただいたので、ハヴェイ語が出来ます。」


オーウェン公爵は、ジルディークの方を見ると確認するように、もう一度レネを見る。

「貴殿は、昨日もお会いしましたな。

ユレイア公爵のご嫡男でしたね?

それで、彼女が8歳で引き取られたなら、妹のような存在であると?」


「妹でもあり、もっと大切な存在であります」

ジルディークは父親に許可を得て、堂々と言い張る。

レネの養女先は未決定だが、近い内には候補を絞るだろう。


まずは和平交渉を成功させ、ハヴェイとの交流が始まれば、レネの紫の瞳も受け入れられ易くなる。


もっと大事な存在、レネの頭の中で幸せの鐘が鳴り響く。

カッコよすぎです!

やっぱりジルディーク様が一番ステキ!


嬉しそうに頬を両手で押さえるレネを、オーウェン公爵がじっと見ていた。


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