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不名の銃と不憶の少女

「おとーさんそれ何〜?」


「ああ、これはだね……」


発明家であり漁師でもある父と、息子の会話。


父の手には、不思議な形の銃が収まっていた……






……ここはどこだろうか。


目を覚ます。


辺りを見渡すと、どこかの小屋だと言うことはわかったが、あの夢に出てきた銃以外何もない。


というか何故ここにいるのだろう……と思い出そうとしても、あの夢以外何も思い出せない。自分の名前すらも思い出せない。


外に出ると、曇り空と普通の街並みの風景が私を出迎えた。






持っている銃や、今の状況を考えると、私は普通じゃない。着ている服も珍しいような奇抜なようなで、あまり人前には出にくい。


という事は、警察を頼る事は出来ないだろう。それなら、あの夢に出てきた父子を探すしかない。


何故か小さな音まで聞こえる耳を、いろんな会話にすます。




「ねぇ奥さん聞いた? あの団体またやったらしいわよ」


「あーあの捕鯨団体でしょ? 全く酷な事するわねぇ」


「そうよねぇ……未だに捕まってないのが凄いわよねぇ……」




……捕鯨?


その言葉に、私は深い怒りを覚えた。






その日の夜、どうやらこの町のお祭りの日だったらしく、人がごった返している。


コスプレというのだろうか、自分と似たような格好をしている人を見かける。


これなら人前に出れる、と考えあの父子が居ないかと探していたが、見つからない……


「……ん、ちょっと待ったそこの嬢ちゃん。ちょっとこっち来なさい」


歩いていると、占い師をしているらしい女性に館に連れ込まれた。




「ほうほう……珍しい、人と変わり映え無い付喪神とか初めて見たわ……しかも戦艦擬人化ゲー風とは……」


「……付喪神?」


「あら、気付いてなかったの!?」


付喪神って、長く使われた物品に宿る意思みたいなものだったはず。それが私……?


「……訳ありのようね。おばちゃんに話してみなさい。力になれるかもよ?」


「……お願いします」


私は、記憶喪失である事、物品に当たるものがこの銃しか無い事を話す。


「なるほど……あーうん、この銃の付喪神で間違い無いわよ。恐らくその姿は世間のイメージか使い主の趣味が映ったわね」


「えっ……」


「で、悩みって言うのはその記憶喪失のこと?」


「そうです……目覚める前に夢を見てて、それに居た父と子を探しているんです」


「なるほど……その特徴とか色々聞いても良いかな? 答えにくかったら答えなくても良いからね」


「わかりました」


そうして質問をされていく。それに答えてく。




そして、ある質問の答えで彼女の顔色が変わった。


「そうそう、色々盗み聞きしてたみたいだけど、なんか『この言葉好き!』とか言えるもの無かった?」


「いえ、特には……ただ、『捕鯨』に怒りなら湧きました」


「そう、捕鯨、ね……捕鯨? ちょっと待ちな!?」


彼女はしばらく悩むと、「うちに泊まりな。明日は早いぞ」と店を畳み、私を連れて家に帰ってしまった。






次の日、まだ日も全く登らない頃。


彼女は、疲れで死んだように寝ていた私を叩き起こし、車を海へ走らせていた。


その途中で彼女は独り言のように話をしていた。




「海辺の方にな、漁師さんの家族がおったんや」


「その漁師はな、海への、そして生き物への感謝を忘れない人でな、皆から慕われとった。もちろん私も慕ってたよ」


「あるときな、どこのヤクザか知らんが、感謝など全く無い方法で捕鯨を行ってる輩がこっちに来たんや」


「そら漁師さんブチ切れてな。なんとかしようとしたが、輩を追い返す事は出来んかった」


「だからな、なんか秘策を作ってたらしいがな……命狙われて逃げるしか無かったって話や。今はその息子さんが独りで捕鯨の邪魔をしとるが……」


「……っと、息子さんがいつも活動してる場所に着いたぞ」


外を見ると、まだ真っ暗なのに誰がいるのかとかが見える。






その人数……2人。


気づいた時には私は車を飛び出し、息子さんと思われる人物にナイフを刺そうとしてた男を蹴り飛ばした。


そして海を見ると、見るからに捕鯨用の罠がある。そこに何かに惹きつけられるようにして鯨がやってくる。いや、捕まってる仲間を助けようとやってきている。


それを見て、私はあの銃を取り出して撃った。











鯨に。


銃から出るのは空気と超音波。


その音は鯨を追い返すのに十分だった。


「……ちょっと待ってくれ、その銃は親父の……!?」


「話は後です。あの罠を破壊します!!」


自分の正体を聞くよりも、それが優先だった。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






「……撤退、したらしいな」


「そうですね……これで、鯨も安心できるでしょう」


「ああ、捕鯨反対派では無いが、あいつらのやり方はダメな奴だったからな」


「まさか、半日であの輩を潰すとは……凄いわよ」


その日の夜、私は息子さんの家にお邪魔していた。


潰せたのは、ひとえに私の身体能力が理由だろう。人じゃなくて付喪神だからだろうか?


「ところで、私は何なのでしょうか?」


「あーうん、その銃の事なら知ってる。


その銃の名前は捕鯨の反対、『鯨逃銃』だ。


親父が作ってた奴で、完成すればあの団体を潰せると言ってた奴だ。細部は違うけど昔見せてもらった設計図のにそっくりだ」


まさか、付喪神が出てくるとは……俺びっくりだよ、と言葉を続けた。






あの始まりの小屋にて。小屋の裏で人が亡くなっていた。


「……親父、いやおとーさん。あんたの最高傑作はしっかり俺のとこに届いたぜ」


そう言って、彼は泣き崩れた。私も涙を流していた。

俺は捕鯨は賛成派と言えばそうなりますが、苦しまない方法で捕まえたいところです。

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