第7話 親友は一生の宝物
次の日
いつも通り朝駐車場で待ち合わせをしてると
ヨネが走ってやってくる。
「アカ車どうしたん?」
「ははは!昨日タケと練習しに行ってぶつけちゃった。」
何もなかったかのようにアカは話している。
「アカはまだヘタなんだから無理すんなよ。」
…はぁ?アカはヘタ??
聞いていて血が逆流するような感覚を覚えた!
…半分はオマエのせいだろ??
そう言いたかったがグッとこらえた。
…ヨネのせいじゃない
…ヨネのせいじゃない
…1番我慢してるのはオレじゃないアカだ。
ちょっと冷静になっていつも通り学校に向かった。
学校について授業を受けていると
ヨネが自慢げに口を開いた
「タケ、アカ聞いて聞いてオレにも昨日彼女ができたんだぜー」
アカのシャーペンの手が止まる...。
ヨネが話そうとしていることそれは、今1番アカが聞きたくない話だろう...。
「リナちゃんって言うんだけどさぁー
若干オレのタイプから外れるんだけどさ
まぁとりあえずいいかなと思ってOKしちゃったよ」
…まぁとりあえず??
またオレの血が徐々に逆流を始める。
「でもオレさぁ 好きな人いるんだよね。
どうすっかなぁ?
モテる男はつらいよなぁ。ハハハ。」
…オイ!!何笑ってんだよ!
…オイ!若干タイプじゃない?
…他に好きな人がいる?
…オマエのせいでアカが...。
…アカがどんだけ...。
そう思うとオレはすでにプッツン寸前で
右手の拳を強く握り体をふるわせ立ち上がろうとしていた...。
その時だった!
誰かがそっとオレの膝に手を置く...。
アカだ。
オレから出るただならぬオーラに気がついたのだろう。
アカの目は”もう、いいから...。大丈夫だから...。”と言っているような感じだった。
「ヨネよかったね。リナちゃん僕はいい娘だと思うよ。仲良くね。」
…アカなんでそんな事が言える?
…1番色々いいたいのはオマエだろ?
…なんでそんな笑顔ができる?
…なんでそんなに自分を傷つける?
…笑顔をしながら1番傷ついてるんじゃないのか?
…笑顔をすればするだけ心の中で泣いてるんじゃないのか?
…もう いいから 大丈夫??ウソつくな!!
…車に乗って一人で、じっと泣いてたじゃないか!!
…誰にも言えず1年悩んでいたじゃないか!!
…アカは決してそんな強い人間じゃないのに...。
…どうしてそんな笑顔が作れる...。
…どうして...。
『先生!ちょっとトイレ行って来ていいですか?』
早くしないと目から何かが、あふれそうだった...。
…アカはアカなりに一生懸命耐えているんだ!
…小さい体で必死に頑張っているんだな...。
…ホントは辛くて今すぐに泣きたいのに最後まで笑ってバイバイできるよう、うちらの見えないところで一人で泣いてるのかな?
…オレがキレたらアカの我慢がだいなしだ!。
アカが願ってる事それは3人マブダチのままサヨナラすること...。
…今オレに出来ることはアカの願いを叶えてあげることぐらいだな。
…ヨシッ!
トイレで涙を拭き教室に戻ることにした。
「タケ、目どうした?」
何も知らないヨネが心配そうに聞いてくる。
『いやーコンタクトずれちゃったみたいでさ。
それよりヨネ!
彼女さあ彼女の方からコクってきたんだろ?
それ結構勇気のいる事だぜ絶対!!
そんな思われてんなら大事にしてやれよ』
「やっぱそうかな?
わかった!ちょっと真面目に付き合ってみるわ」
そういうと逆のアカの方を見て、目を見合わせてお互いクスッと笑った...
アカは何も言ってなかったが”ありがとう”と言ってるような気がした。
神様は生きてるものすべてに試練をかす...
それは人によりハードルの高さは違えどもみんな必死にその壁を越え前にすすんでいく...
一人でガムシャラに努力して越えていくもの...
一人で越えられず助けを求めるもの...
壁を越えられず諦めて違う道を探すもの...
それは人それぞれだ...
生きていくって事はそういう痛みに耐えて行く事なのかもしれないと、アカをみていて少し思った...
【キーンコーンカーンコーン】
今日も最後の授業が終わった。
ヨネが誰かと電話をしている。
「あっハイ、本当すいません。ハイハイ失礼しまーす」
…誰と電話をしてたんだろう?
「タケ、アカ、ごめーん!お待たせー」
…なんか彼女への電話じゃなさそうだったな。敬語だったし。
今日もいつも通り3人とも車に乗ってアパートに戻る。
3台とも駐車場につくとヨネが近寄って来て
「アカ、タケちょっとここで待っててくれ。」
そう言い残すとヨネは自分の部屋へ走っていった!
…どうしたんだ?
何もわからずアカと目を合わせていると、
2分後くらいにヨネがツナギ姿に工具箱を持って走って来た。
…あれっ?今日はヨネだけバイトのはずじゃ?
『おいヨネ今日バイトは?』
「あー!さっき電話して風邪ひいたって言って休んじまった!
それより今日二人とも休みだろ?
早くスープラ直してやろーぜ
まったくアカが運転下手だと車が泣いてんぞ(笑)
なぁアカ!」
「ウン...。」
…あの時の電話はバイト先に電話してたのか?
絶対人前では泣かないアカの目に、うっすら光るものが見えた気がした...。
「タケ、こっちにジャッキかけて。」
「アカはタイヤを外す。」
ヨネは車をいじったり、直したりするのが超得意分野!
だからこんな時はリーダーみたいな感じだ。
「あー!!ごめーんヨネボルト折れたぁー!」
アカは勉強は得意だがこういう作業は苦手のようだ...。
でもすっごく楽しそうな顔をしている。
「ったくしょーがねーなー。
じゃあタケ、オレのかわりにここ留めといて。
オレはアカが折ったボルトの代わりを見つけてくるから。」
こんな感じで3時間が経った。
【ティロリロリン】
…誰だぁ?メールかぁ?
””たけたん今日今仕事が終わったから遊び行ってもいい??””
…愛子だ!
””ごめーん!今日バイト入っちゃって無理かも。ゴメンね(*_*)””
…送信!!
すると
【ティロリロリン】
””わかりましたぁ。気を付けて頑張ってね。””
…愛子にウソをついてしまった...。
…でも今日はこの3人の中に入ってほしくないっていうか、この3人で一緒ににいたかったんだ...。
…愛子。ゴメンな。
メールのやり取りをしてると、すかさずヨネが突っ込んでくる。
「なんだタケ!愛子ちゃんかぁ?」
ニヤニヤした顔でヨネが言う。
『違うし.......』
…否定してしまった。
作業開始から5時間が過ぎようとしていた。
修復作業ももう終盤までやっと来ていた。
時間は夜メシも食べず10時を越えようとしていたとき、アカが口を開いた。
「みんなもう充分だよ。もうここまでやってくれただけで充分だよ...。」
どうやらうちらに気を使っているらしい。
「何気にしてんだよ。困ったときはお互い様だろ。
なんつってもオレ達マブダチだろ?
そんな事気にすんなって。なぁタケ。」
ヨネが工具片手に鼻先を黒くしながら話している。
『オゥ、そうだよ別にオレもヨネも苦と思ってやってないよ。
またカッコイイ、スープラで一緒に走りてーじゃん!』
「ウッ...。」
アカが少し泣いていた。
「僕高校の頃友達いなかったし、
僕のために誰かが一生懸命になってくれるなんてなかったんだ。
だからタケとヨネが寮で話かけてくれたとき
超嬉しかったんだ...。
ずーとずーとこんな風に友達と遊びたかったんだ。
車買った時も、自分の事のように喜んでくれて、
壊れたときはいつも迷惑かけてばっかりで直してもらって
でも僕はタケとヨネにノートぐらいしか
見せてあげることぐらいしかできないのに
今日も二人は僕の為にこんなに付き合ってくれている
もうそれだけで充分うれしいんだ...。
ホントこの学校に入って、
二人に会えてよかったよ。
いつまでも友達でいよーね。」
「ったく。あたりまえじゃんか。
わかったような事聞くなよなぁ。
あーあアカのせいで、しめっぽい空気になっちまったじゃんか
バツとしてオレとタケにジュースだな。」
「うん...。」
アカは走って買いに行った。
そんな事を言ったヨネもなんとなく嬉しそうな感じだ。
「なぁタケ、アカっていい奴だな。」
『あぁ...。』
…ヨネおまえもな。
今ならアカが恋ではなく友情を選んだ気持ちがなんとなくだか、解るような気がする。
…オレはそんなアカの気持ちをわかってやれず、ヨネを今日殴る寸前だったよ...。
…ヨネ、お前は何も悪くないのに殴ろうとしてたんだ。
…ゴメンな...。
…アカ、オレの方こそ頼ってばっかりで力になれずに、ゴメンな...。
オレは心の中で二人にそっと謝った。
「ごめーん。お待たせ。ヨネはジンジャーエールで、ハイ!たけはカフェオレ!!」
『「さすが!アカ...」』
オレとヨネは声をあわせて言ってしまった。
「へへへー!だてに3年も一緒にいないって。」
『なぁヨネとアカこの後暇??
アカの車もだいぶ直ったから練習がてら、例の場所までいかねぇ??』
「オーいいねぇ。行くか。オイアカ!もうぶつけんなよー(笑)」
「そんなにぶつけませんーーー。たまたまだよ。たまたま。」
「ホー言うじゃなーい?じゃあ今日はアカが先頭だな。タケもそれでいいか?」
『全然かまわんよー。』
3人ともにんまり笑いながらそれぞれの車に火をいれる...。
…二人は何を思って、にんまり笑っていたのかな?
…オレはお前らがマブダチで本当によかった、楽しいキャンパスライフだと思ったら自然と笑っていたよ...
…二人も同じような事を思ってくれていたらうれしいな。
人間はとても弱く
とても一人では生きていけない生き物...
そんな本当の心の奥の痛みまで
かばい合い...
助け合い...
励まし合い...
支え合い...
そんなマブダチが2人もいる...
それは凄い幸せな事なんだと思った瞬間でもあった。
「タケー!何笑ってんだよー先2番手でいっちまうぞ」
ヨネも嬉しそうだ。
『いいぞ!いって...』
…さてさてオレもぼちぼち向かうか!
…久しぶりに後ろから遅い二人をあおってやるか(笑)
こうして3人の絆の堅さを確認した3人は、出会った頃の気持ちのまま例の場所へ向かって走り出したのだった
三人は年月が過ぎても、たとえ離れ離れになってもずっとマブダチでいれると本気で思った。そんな綺麗な月夜の夜の出来事だった...。