第4話 弱虫の代償
大さんはというと、会社に着くと真っ先に着替えて2~3分でいなくなる。
毎回そんな感じだ...
帰って来てからの面倒くさい書類系の仕事は全部オレの担当らしい。
本人はこれを、忍法ドロンの術と言っていた。
その忍法のおかげで毎回オレは帰るのが30分遅れている。
まったくシャレで言ってるんだろうが全然笑えない...。
オレは気分が晴れないまま一人で寮に戻るため歩いていた。
帰りながらいろんな事を考えていた。
…いろんな人間がいるもんだな。
…昨日までは平気で仲良く話していたのにな。
…ずっとこっちにいる間は3バカトリオみたいに3人でつるんで行くんだろうと思っていたんだけどな...。
…なんか恋人をとられた気分ってこんな感じかもしれないな。
知り合いがヒサさんしかいなかった土地で1人ぼっちになってしまったような孤独感をすごく感じた。
…久しぶりだこんな感じ。
…そっかぁ母さんが死んだ時に味わった気持ちと一緒だ...。
どうしようもない孤独感...。
先が見えない不安...。
気が付くと携帯を強く握りしめ愛子に電話をかけていた。
…全世界の人間を敵にまわしても、愛子とマサが味方なら、オレは前に進むことができるんだ
【プッ...プッ...プッ
お客様のおかけになった電話番号は電波の届かない所におられるか、電源が...。】
…愛子ーーー!!
…何してる!
…お前の声が聞きたい!
…たけたんなら大丈夫だよって、いつも通り励ましてくれよ。
…たけたんなら頑張れるっていつも通り元気をわけてくれよ。
…もうオレは愛子!お前とマサ無しでは生きていけないんだから!
…だから頼む!繋がれ電波!
…届けよ俺の電波。
【プッ...プッ...
お客様の...】
…ちくしょう...。
…なんでオレ一人こんな辛い思いしなきゃいけないんだよ...。
…なんでだよ...。
オレは何も考えないように走って寮まで帰った。
部屋につきテレビをつけるともうサザエさんが始まる所だった。
…もう6時半かぁ...。
…まだ腹も減らないしなぁ...。
…今日はもう寝よう!
…あっ!その前に!
オレは携帯を手に取り、
””愛子話がしたいよ!何で携帯つながんないの?””
…送信...。
…これで連絡くるだろ。
携帯が繋がらないことで、
淋しさからちょっと気持ちはイラダチに変わりつつあった!
…まいっか。
…早く寝ちまえ。
まだ9時になる前だったが、何かから逃れる為に布団に入り目を閉じた。
そう!起きていても考える事はマイナスの事ばからだから、
オレはこんなふうになった時はすぐさま寝ることが多いのだ!
…愛子~!
…マサ~!
…何してるかな?
…オヤスミ...。
それは眠りについてちょっとしての出来事だった。
【ドンドンドン】
…んっ??
「フジー起きてるー?」
…んっ?ヒサさんか?
『ふぁーい...。今開けまーす。ふぁ~~~あ。』
のびをしながら扉を開けた。
「よっ!フジちょっと話せるか?つーかもう寝てたのかい!早っ!」
『ハハハハ...。まぁどーぞ。』
「フジ今朝の話なんだけど...。」
『あー。ビックリしましたね。まさかこんな事になるとは...。』
「本当だよな。オレもビックリだよ。オレはまだ大丈夫だけど、フジお前無理じゃない?」
『いやー無理って言ってももうどうしょもないですよね...。
今日も仕事中や帰って来てから考えていたんですけど、考えれば考える程胃が痛くなっちゃって、考えても何も変わらないんで早めに寝てたんですよ。』
「そうだったのか。すまんかったな力になれなくて。
明日上司にオレから言ってあげよーか?」
『いやいいですよ。もうこれもオレに与えられた試練として頑張っていくように頭を切り替えていた所ですから...。』
「そうか?でもフジ無理だけはするなよ。
困ったら言ってくれたら何とかしてやるからな。後7ヶ月くらいだから頑張ろうな。」
『うぃーす!』
…ヒサさんやっぱいい人だな。
…ヒサさんの周りにはいつも人がいっぱい、あふれてるもんなぁ。
…そんなみんなもオレと一緒で人間としてヒサさんの人柄や面倒見のいいとこに惚れてるんだな。
…そういやー、男として男から慕われ、惚れられない男なんかは、女が惚れる訳がない!
そう何かの本かに書いてあったなぁ。
…大さんみたいに男にしたわれない人は女にも好かれないって訳か...。
…なるほど!納得!納得!
「フジこの後ちょっと時間ある?」
『全然いいですけど、今何時すか?』
「22時ちょいすぎかな?」
『えっ!?まだ10時なんすか?』
「フジさぁ元気つけるためにイイトコ連れてってあげるよ。さぁ早く着替えて。行こ行こ。」
『はぁ...。』
…あっ!?そう言えば携帯!!
待ち受け画面を見ても不在もメールも来てなかった。
…マジ???
…マジで何してんだ愛子は。
…まさかオレがいない間に他の男と...。
なんて考えたくない事まで考えてちょっと不安になってしまう。
こう言うとき二人を繋ぐのが携帯の電波だけってとこがすごく淋しいしもどかしい!
声が聞こえるだけで安心するし、
連絡が取れないと不安に襲われる!
…ハハハ。まさか愛子に限ってそんな事はな...。
そんな事愛子がする訳ないと自分に言い聞かせ、
服をパジャマから着替え夜の街へ繰り出した。
『ヒサさんどこに行くんですか?』
市街地に向かうにつれてネオンや飲み屋の明かりがにぎやかに夜の路上を照らしている。
「んっ?どこって?キャバだよキャバ!」
『キャバっすか...。』
………………!?
『エーー!?キャバクラ??』
「アハハハ。何驚いてんの?悩んだときは女の子に癒してもらうのが1番でしょ!
これがオレ流よ。なんちって(笑)」
『いやーキャバはまずいですよ!
オレ恥ずかしがりーで何も喋れないと思うし、酒も飲めないし...』
「なんだフジ、キャバ行った事ないの?」
『えっ?えーーと、うーーんと....はい....。』
「そっかぁ。おもしろいぞ。意外とはまっちゃったりして(笑)。
まあこれも人生経験の1つだよ。
今日はオレがおごっちゃるから気兼ねなく、はじけて嫌な事は忘れてくれ。」
…愛子...。
…これは浮気じゃないよな?
…そうだ!愛子が電話に出たら行くのやめよう!
『ヒサさん。ちょっと電話していいですか?』
「どーぞどーぞー。」
夜とは思えないくらいの明るいネオンの繁華街のスポットライトを浴びながら、再度愛子に電波を飛ばした。
…繋がってくれよ...。
【プッ...プッ...プッ..
お客様の...。】
『あっ!ヒサさんすいません。もう終わりましたから。』
「ウシッ!今日はカワイイ娘がいればいいな。なぁフジ!」
『そうですね。』
…愛子のバカ...。
…バカ...。
…どこで何やってんだよぉ...。
もうこの時、あびる程酒を飲む気でいた!
2人でお店に向かって歩いていると、
「ねぇねぇそこのお兄さん達。暇でしょ?暇。」
声をかけて来たのは道端に座っている女子高生くらいの女の子2人組だった。
「どう?夜ご飯ゴチってくれたらで安くしとくよ。」
…夜ご飯を食べさせれば安くする??
…何を??
…あっ!!ひょっとしてこれがウリってやつか?
『ヒサさん。どーしましょうか?』
「じゃあカラオケでもまず行こうか?ご飯もそこでおごるよ。じゃあ出発!」
…ヒサ」さん!人の質問にちゃんと答えましょう!
…そして人の話を聞いてくれ!
ヒサさんはオレの問い掛けには耳もくれず、女の子に交渉していた。
…っていうかヒサさんノリノリじゃん。
…目なんか?マークになってるし!
そうそれはドラヤキを見つけたドラえもんの目と一緒だな、ヒサさん!
ショクパンマンを見つけたドキンちゃんの目と一緒とも言える。
それくらいノリノリの雰囲気がヒサさんの体からオーラから溢れ出ていた。
女の子達を見ると別にOKのようで路上からすでに立ち上がっていた。
「じゃあ行きますか?」
ヒサさんは満面の笑みだ。
「いこーー。いこー!」
うちらに声をかけて来たほうの女の子もノリノリらしい!
オレともう一人の女の子はなんか慣れない状況に戸惑っているそんな感じだ。
そしてたわいもない会話をしているうちにすぐカラオケについてしまった。
…入るのか?
…入っていいのか?
なんだかまだ何もしてないのに罪悪感はあった。
が、別にカラオケだしということもあり、深くは考えず4人で中に入った。
「とりあえずみんななんか飲もっか?」
こう言う時のヒサさんはよく気がまわる。
『じゃあオレ杏露酎で。』
「あいよー。そこの綺麗なお二人さんは?」
「私青リンゴサワー。」
「あっ私も...。」
「えっ大丈夫かいな?」
「大丈夫!大丈夫!私達今から20才って事でよろしくぅ。」
「そうでっか?じゃあ頼んじゃうね。」
…この2人ホントは何歳なんだろう?
カラオケの歌本見ていると
「お待たせしました。ビールと杏露酎と青リンゴサワーになります。」
オレは緊張していたので、ちょっと強めのお酒を頼んだ。
…今日はハイペースで飲まないようにしなきゃ!
…グロッキーになったらカッコ悪いしな。
そんな時ヒサさんがジョッキとマイクを持って立ち上がった!
「じゃあ乾杯しよっか?でも何に乾杯にする?」
「お兄さんあれ!1日の出会いにでいいんじゃん。」
「いいね!それもらい!じゃあ1日の男女の出会いに...。」
「『かんぱーーーーい。』」
「自己紹介でもしよっか?私達お兄さん達の事なんて呼んでいいかわからないし。
あっ!あだ名でもなんでもいいよ。今日だけの付き合いだからね。」
「ちなみに私って言ってもよくしゃべる方って多分お二人さん思ってるかもしんないけどそっちがリサね。
そっちって私のことなんだけどね。
そして、ポツンと大人しく座ってる方が、サリだよ。」
…なるほど。
…ヒサさんを女みたいにした方がリサちゃんで、
…アカを女みたいにした方がサリちゃんか。
…どっちにしても多分偽名だろうな。
するとヒサさんが待ってましたと言わんばかりにマイクを持って立ち上がった。
「ただいまご紹介に預かりました...」
「『まだしてない!してない!』」
…3人で一緒にツッコんでしまった。
「あれ?そうだっけ?」
みんなに自然と笑みがこぼれる。
さすがはヒサさん!
緊張の空気を壊し、和やかな空気が漂う。
…場慣れしてるよなヒサさんは。うまいよなぁここらへんの場の空気の作り方!
「ではあらためまして、私ヒサと相棒の」
『ゴウです。よろしく。』
…オレ剛だからゴウにしたけど、ヒサさん名前そのまんまじゃん(笑)。相変わらず強気だなぁ。
そのまま楽しくカラオケが続いていた。
この時PM10時半!
そして1時間が過ぎた。
何となくみんないい感じに酔っ払っていた。
そしてヒサさんが立ち上がり
「さぁーて今日はここらへんでお開きにしましょうかぁ?じゃあ帰ろっか?」
…そっか今日はこれで帰るのか?
…だよな。この後女の子とどっか行ったら浮気だもんな。
そう思っていたがヒサさんの言葉には続きがあった。
「なぁ相棒。」
と手を出したヒサさんの手はオレの方ではなくリサちゃんの方へだった!
『ヒサさんオレこっちですよ。』
「ははは。昼の相棒はフジでもいいけど、夜はなぁ、オレそういう趣味ないし、ねぇリサちゃん!」
「きゃーおかされちゃうー(笑)」
どうやらリサちゃんも満更ではないようだ。
二人は手を繋いでカラオケの部屋を出ようとしていた。
「フジ!これ全員分のカラオケ代な。このままカラオケにいるなら後は自分で出しといてよ。じゃあお二人さん。バイ、ナラ!」
「サリーガンバ!」
二人は親指を立ててグッドラックと言わんばかりの笑顔をで部屋を出てってしまった...。
『行っちゃったね...。』
「そうだね...。」
「『………………。』」
いきなり二人きりの状況になっても、ただ気まずいだけである。
「私達もここにいてもしょうがないから出ようか?」
『………うん...。』
そのまま手を引かれ、なすがままの流れでホテルに入ってしまった...。
部屋に入るまで会話もなかったが意外と話しかけて来たのはサリちゃんの方からだった。
「ゴウさんだっけ?今日こういうの初めてでしょ?」
『えっ!?なんで?』
「なんとなくね。わかるのよね。フフフ。」
意外だった!
部屋に入るとサリちゃんはあまり緊張した様子ではなく普通にしていた。
『サリちゃんはよくこんな事してるの?』
「さぁどうでしょ。内緒(笑)。まぁいろいろ理由があるからね。じゃあお風呂入ってくるからちょっと待ってて...。」
…そっかぁサリちゃんもおとなしい顔して結構こう言う事してるんだ。
…それにしてもどーしよう!。
…流れでホテルに入っちまったぞ!オイオイ。
…キャバならまだしも、これは浮気だよな...。
…あーー!どーすっか?
…このままやっちゃってだまってる...。
…そりゃ最低男だな!そりゃ絶対イカン!
…そうだ!お金払ってなかった事にしてもらおう!
…でもなぁせっかくお金払うんだから、ちょっとだけ...。
…そりゃやっぱクソ野朗だ!
…いやいややっぱり絶対ダメだ!
サリちゃんをベッドの上で座りながら待ってる間、頭の中でこんな天使と悪魔の戦いが繰り広げられていた。
結局頭の中を制覇したのは天使の言い分の『お金だけ払って帰る!裏切りは禁止!』で能内の多数決の過半数越えで可決された!
下半身だけはつねに反対しているみたいで、いつでも突撃開始の合図を待ってるような感じだが、
脳からGOサインがでない以上身動きは取れないだろう!
しばらくベッドの上で罪悪感と戦いながら待っているとサリちゃんがバスローブ1枚を身に纏い出て来た。
「どう?かわいい?」
なんて言いながら、バスローブ1枚でお尻をフリフリしている...。
…何がアカを女の子にしたような感じだ?
…何ださっきまでの大人しいサリちゃんとは全然違うじゃんか!
…こんな大胆な娘だったのか?
…これが本性なのか?
…マズイこの娘は絶対子悪魔タイプだな。
…ダメだ見ちゃダメだ!お金だけ払って帰るんだ!
…見たら誘惑に負ける!
そんなオレの気持ちなんかしるよしも無く、子悪魔的誘いはいっそう拍車がかかり勢いを増す。
「ねぇなんで黙ってるの?これならどうだ?」
【バサッ....】
一瞬!
一瞬サリちゃんの体が全て見えた!
そうサリちゃんはバスローブを一瞬だけ広げてオレを誘っている。
目の前に起きた状況に開いた口がふさがらない...。
漫画であれば、多分イスに座っている男が鼻血を出してその圧力でイス事後ろにぶっ倒れる!そんな状況だろう!
…ダメだ...断らなきゃ。
…だめだ...。
…………………。
…………………。
この時、頭の中で格闘していた天使と言う名の理性は数を減らし、
サリちゃんの意外な行動により悪魔と言う名の欲望が頭を支配しつつあったのだ
それは血を下半身に溜めるという症状になって体に現れる!
………………??
…ったく何たってんだよ!
もう2~3ヶ月男一人の生活のオレには、裸の女の子の体をみて理性を保つのは限界だった。
頭ではダメだとわかっていても体が勝手に反応し、
鳴らない携帯電話をソファーにぶん投げて、サリちゃんをベッドに押し倒していた。
「痛くしないでね。」
『オレもう我慢出来そうもないよ...。』
「いいよ。きて...」
オレは服を脱ぎ捨て、
この先の不安!
今ある罪悪感!
そしてどうにも押さえきれないこの欲望のムラムラ感!
全てをサリちゃんにぶつけ、激しく求めた...。
お互い激しくさわりあい、舐めあい、悶えまくった...。
そしてついにこの時が来た!
裏切りとして、越えてはいけない一線を越える時が...。
しかしこの時もうオレの頭の中には愛子の事などこれっぽっちも無く、今目の前の快楽の事以外は考えられなくなっていた...。
男とは全くもって哀しい生き物である。
『サリちゃんいれるよ。』
「うん...。」
そして裏切りとして一線を越え、日付も変わろうとしていたその時だった。
【ティロリロリン】
「ゴウさん携帯鳴ってるよ。」
『いいよ。もう別に...。』
「いいから見ておいでよ。」
『うーーん...。』
「ほらっ。」
『わかった。ちょっと待ってて。』
サリちゃんに背中を押され渋々ぶん投げた携帯を見に行くことにした。
…ったく誰だよ。
携帯を開いてメールを見た瞬間!
一瞬にして欲望なんて吹き飛び現実の世界に引き戻される内容だった。
メールの相手は愛子だった...。
””たけたん付き合って6年記念日おめでとう
ごめんね今日はパートが急に夜10時半まで入っちゃって、
それから保育園の由香先生の家まで、
マサ引き取りにいってたら遅くなっちゃって、
すぐ電話しようと思っていたけど、電話してたら日付変更の時間にメール送れないからメール打ってたんだよ。
ごめんね連絡遅くなって。
あいたんはたけたんに逢えてホントによかったと思ってるんだぁずっーとずっーと大好きでいれる旦那様に逢えたんだからね。
幸せでいっぱいだよ。
今は離れ離れでも心はいつも繋がってるからね.......。””
こんなオレに対する記念日メールのメッセージがこの後も1000文字近く作文の用にビッシリ書いてあった...。
…愛子...。
…愛子オレは...。
…お前がこんなにオレの事思って一生懸命メール打ってくれてる間オレは...。
そのまま携帯をガッシリ掴み、トイレに入り声を押し殺し泣いた...。
…あんなに大好きだったのに...。
…運命の人は愛子一人で絶対他の人なんか目もくれるわけないって約束してたのに...。
…お前以外の女は女として見ないって自分で言ったのに...。
…いつもオレの隣でくじけそうな時、立ち上がれなくなりそうな時もいつもいつも、オレの気持ちになって支えてくれていたのに...。
…なのに...。
…何やってんだよ。
『なにやってんだよ!』
トイレの壁をおもいっきり殴った。
拳も痛かったが、そんな事より自分がこんなにもなさけない人間で意志が弱く、
愛子へ裏切り行為してしまったことが今1番胸が痛かった...。
…ごめん
…ごめんよぉー。
…オレだってこんなに好きなんだよ!
…愛子を想う気持ちは誰にも負けないよ!
…前は一緒にいれるだけで神様に感謝すらしていたのにな...。
いろんな愛子との思い出が頭の中を駆け巡る!
『ヒッ...ヒック...ウ~』
…ごめんな。裏切っちまって...。
…今日は記念日って事は愛子の誕生日だよな...。
…いつも支えてもらって、悩み聞いてもらう時ばっか聞いてもらって、
…そんなオレはおまえの誕生日と記念日すら忘れて...。
…こんなとこで...。
…こんな事を...。
…ちくしょー!!
…バカヤロゥ!!
オレは携帯を握り締め目を真っ赤にしたままトイレを出た!
『サリちゃん!!』
トイレから出ると、もうサリちゃんの姿は部屋になく机にメモが1枚
”大事な人を泣かしちゃダメだよ!!”
と書かれた紙だけが残っていた...。
…ゴメン。サリちゃん。
…そしてゴメン。愛子!
…愛子!オレもう会社で何があっても、どんな辛い事があっても耐えるよ!
…そう今決めたんだ!
…だってオレが弱すぎたから、もっとオレが強い人間だったらこんな後悔する行動しなかったんだから...。
服を来てホテルから出て一人寮に向かい一人で歩いていると
【ティロリロリン】
…んっ?
…誰だこんな時間に?
そして間髪入れずにもう1回
【ティロリロリン】
…ん?
メールを開くとヨネとアカからのメールだった。
4月25日!
そうだった!今日は愛子とオレの記念日と同時に、
アカとヨネとオレの3人!離れ離れになっても1年に1回絶対メールする日でもあったのだった。
…そっかぁ。もうそんな日なんだな。すっかり忘れてたなぁ。
””タケ元気??今年も豊作だよ。またさつまいも送るね。
それとね。彼女が出来たんだよ。””
アカとアカの彼女らしき人がサツマイモを持ったまま二人で仲良くバンザイした写メが一緒に送られて来ている。
…そっかぁアカも彼女ができたかぁ?
…そりゃあマジよかったなぁ!
次はヨネだ。
””タケー自分でついにお店始めたんだ!
今タケ遠くにいるんだろ?こっち帰ってきたら絶対すぐ遊びにこいよーー!””
…ヨネはお店開いたのかぁ?
…ダチが自営業始めたりするのを聞くと時代が流れてるのを感じるなあ!
…ちょっとずつ時代は進をでんだなぁ。
オレは寮に帰るまでにオレはオレは元気にやってる事を2人にメールに書いて送った。
そして次は愛子への記念日メールの作成だ...。
…なんて送ろう...?
全部を正直に言えるほど強い人間ではないから...。
違う!!そうじゃない!
自分のした過ちで離婚とかになるのをただ恐れた、
ホントは卑怯な人間なだけかもしれない。
こんな最低なオレでも絶対別れたくなかったのだ。
オレはごめんなさいって思いをいっぱいに、
愛子が大好きだって事をメールに書き切れないくらい書いて
違う女の体を触っていた罪悪感いっぱいの手で送信ボタンを押した。
…愛子、ごめんな...。
…ホント、ゴメンな...。
しかし神様の前で誓った約束を破ったオレを神様は許してはくれなかった。
生きる事に嫌気がさすような怒涛のバチというか試練の嵐がオレを襲うのはもうちょい先の事である...。