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ありがとう、、、。(前編)  作者: チャー丸
第2章 苦悩・絶望
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第3話 裏切り行為

【ドンドン】



「オーイ!フジ。起きてっかぁ?」



…んー??誰だぁ?



…ん?



…んーー!?



…8:00!?



…ヤベー遅刻じゃんか!!



ドアを開けるとヒサさんが立ってた。



「フジ!急げって!やべーって!」



『あれっ?ヤノッチは?』



「今から起こしに行くとこ。起こしに行ってる間に用意終わらせとけよ。」



『ハイっす。』



…やべー!こうしちゃいられない!



…えーと着替えは...。



…あれっ?靴下どこだ?



「フジー!ヤノッチ連れて来たぞー。用意出来たか?」



…早っ!!



『待って。後2分!』



…えーとカバン持って、あっそうそう!水筒!

これでヨシ!



「下にタクシーまわしてあっから急げって、新しいとこ来て2日目から遅刻はありえないから!」



…確かにそれはありえないな。



…ありえないと言うより相方がマズイ!



…怒ってるかなぁ?



…あーー非常にマズイ!胃がいてーーー!



『お待たせっす。』



急いで走った来たせいか、息が荒れている。



「運転手さん!●×まで全開でお願いします。」



「あいよ!まかせときっ!!」



3人で後ろに座ると妙に狭い。



そして2人ともまだ若干酒臭いし...。



『そういえば2人とも昨日の事覚えてるんすか?』



「「全然!」」



…ハハハやっぱり。そんな2人声揃えて言わなくても...。



「アッ!でもなんとなく楽しかった事は覚えてるよ。なぁヤノッチ。」



ヤノッチも頷いている。



…何となく楽しい?



…自転車ラリアットして...。



…自販機蹴っ飛ばして...。



…路上で居眠り始めて楽しいだって?



…やっぱり危険だ!



この2人と飲むのはやっぱりやめようと決意した瞬間だった。



「運転手さん。どーも。これお釣りいらないからとっといて!」



さすがはヒサさん親分肌だ。



タクシーから下りると3人とも猛ダッシュだ!



小学校の頃の運動会のリレーくらいのダッシュ!



…あっ!大さん。



大さんがもうすべての用意を終わらせて、トラックの前で待っている。



…やべー非常にまずいぞこりゃあ。



『大さーん。すぐ着替えてきますから。すいませんちょっと待っててください。』



「早くしろよ。」



…あれっ?怒ってないのかな?



…そんな事じゃ怒んないのかな?



…どっちにしろよかったぁ。ラッキー!



オレは事務室を駆け抜け、



更衣室に駆け込み、



リュックサックをロッカーに放り投げ、20秒で着替えた。



今なら早着替え選手権でメダル圏内に入れるはずだ。



そしてトラックまでダッーシュ!!



『大さん。すいませんお待たせしました。』



「どうした?具合いでも悪かったのか?」



…よかった全然怒ってないみたいだ。



『いやー昨日ちょっと遅くまで3人で飲んでて...』



そう言うと大さんの顔が豹変した。



「はぁ?飲んでて遅刻かよ。

お前いい加減にしろよ。自己管理もできねーなら飲むんじゃねーよ。

自分の事で人やお客さんに迷惑かけんなよな。

オレはお前みたいないい加減な奴が大嫌いなんだよ。」



…今回は図星なだけに何も言い返す事もできない...。



『すいません...。』



「またすいません!それかよ。

本当にわかってんのかよ!毎回すいませんしか言わねじゃん!」



『……………。』



「シカトか?あーつまんねーなー。ホラもう行くぞ!早く乗れよ。」



『ハイ....。』



こんな感じでキリキリ胃を痛めながら大さんの相方になって2ヶ月半がすぎた...。



今日もいつも通り会社に向かっていた。



「オッス おはよーさん。」



ヒサさんは相変わらず元気なようだ。



いつも悩みなんて無さそうでちょっと羨ましく、ちょっとだけ、オレが大さんの相方になった事をひがんだ。



『おはよーございます。』



「フジ今日朝礼があるからみんな集合してくれって言ってたよ。」



『何かあるんすかね?

もしかしてうちらもう地元の営業所に帰れたりして。』



「まさかな...。」



2人は淡い期待を胸に目を見合わせて笑った。



事務所につくと、もうすでに大半の人が集まり終わっていた。



あっ!ヤノッチだ。



『オーヤノッチ!今日は早いじゃん!』



「ああ...フジ。うん...。」



『どーした?元気ねーなあ?また飲み過ぎかい?』



「うん...。別に大丈夫...。」



「みなさん!おはようございます。」



お偉い方の話が始まった。



昔からだがあまりこの手の話はまともに聞いた事がない!



なんと言っても無駄な話が多すぎる。



話も終盤になってきた時だった。



「それから、久山、矢野、藤原、三上はこの後話があるからこのまま残るように。

それ以外の者は今日も安全運転で行きましょう。では解散。」



…名指しかよ、オイ。



…いったいなんだ?



ヒサさんも不思議そうな顔をしていた。



大さんはいつも通りどうどうとしている。



この人は多分何があっても気にしないタイプの人間かもしれない。



「さて、4人に話があるのは本当は3ヶ月経ったら、久山と藤原を一緒のコンビにしようと思っていたんだが、

先月矢野から相談を受けて2人が●●営業所に戻るまでの12月末まで、久山と仕事をしたいそうだが3人はどうかね?」



…は??



…1ヶ月前に相方をかわりたくないって相談したって?



…ヤノッチが?



…はぁ?言ってる意味がサッパリわからん。



…だって1ヶ月前っていやぁ、大さんの相方が嫌でヤノッチに相談してたころじゃんか!



…そん時、もう少しガンバレば離れられるとか笑顔でいっていたじゃんか!!



…あのお前の言葉は全部偽りか?



…全部知ってて言ってたのか!



「久山お前はどうだ?」



所長が順番通りに聞いている。



「……。オレはまぁ誰でもいいですけど...。」



…ヒサさん...。



「大吾お前はどうだ?」



「オレは仕事さえ真面目にやってくれるやつならだれでも構わないですよ所長。

別に藤原でも構いませんよ。」



…大さんオレでもいいのか?



…オレはやだぞ!



…絶対やだぞ!



「藤原はどうだ?」



ついに俺への質問の番がきた!



みんなオレの方をみている。



…だって後7~8ヶ月大さんと一緒って事だろ?



…そんなの嫌に決まってる!



…つーかヤノ、オメェふざけんなよ。



…自分がこの後、大さんと組むのが嫌だからってオレを売りやがって!!



…オレだって胃薬飲みながら必死に2ヶ月耐えて来たんだぞ!



…オレにやっと光がさす時!



…このいじめの呪縛からやっと開放されるのをどれだけ待ったかしってるくせに!



…絶対イヤだって言うんだ!



…大さんに嫌われたって...。



…誰にひんしゅくをくらったって!



…勇気を出して言うんだ。



『あのー....。』



……………。



『はぁ。まぁいいですけど。』



「そうかじゃあおまえら2人が●●営業所に帰る年末までコンビはこのままと言う事で決まりな。」



…テメー!ヤノ!こんな状況でイヤですなんて言える訳ねーだろーが!



オレは凄い勢いでヤノッチを睨みつけた!



ヤノッチは、ずっと下を向いたまま顔を上げようとはしなかった。



…これは裏切りだ。



…奴は自分の事を第一に考えダチを売ったんだ!



…こうなるってわかっていながら売ったんだ!



…そして平気な顔でオレの相談にのっていたんだ



…ゆるせねぇー!



『大さん!もう仕事いきましょ。』



「おっおう。」



あの場所に奴と一緒に長く居たくなかった。



いたら胸ぐらを掴んでしまいそうだったから。



今までなんとか表面上、大さんと外見仲良くやって来た2ヶ月半がパァになってしまうから...。



…所詮最後はみんな自分がかわいんだな...。



…そんなもんなのかな...。



ただ一言もオレに相談も無しって言うのが許せそうもない。



…ヤノッチお前とオレはダチじゃなかったのか?



…あんな馬鹿笑いしながら酒飲んだじゃないか?



…二人っきりで銭湯も行ったよな。



…お前「これこそ裸の付き合い」って銭湯で言ってたじゃんか。



…オレは腹割って、ほとんど全部さらけ出して話していたのに、



…ヤノッチオマエは腹割ってなかったんだな。



…まだ知り合って2ヶ月半だけど少なくともオレはオマエを信用できるダチだと思っていたよ。



…はぁ......。



…オレの大学時代のダチじゃこんな事する奴いなかったぞ。なぁヤノッチ。



色んな感情が頭の中を渦巻いている。



自分の思うようにならない事への落胆!



ダチだと思っていた者がとった裏切りの行動への怒り!



ハッキリ断る事ができない自分への情けなさ!



この先の●●営業所まで帰るまでの底知れぬ不安と絶望!



考えれば考える程、気がめいり落ち込んでしまう...。



『大さん。ちょっとコンタクトズレちゃって、目薬注していいですかね?』



「なんだよ全くしょうがねーなー。」



オレはトラックを道の端にとめ目薬をうった。



そうでもしないと、目薬を注してないのに目から何かが溢れてきそうだったから...。



そう。オレは周りのみんなが思っている程強い人間ではない。



悩みは1人で結構抱え込む事が多く、



すぐ胃を壊し、すぐに泣く泣き虫だ...。



そして弱虫でもある。



『あっ!すいません。もう大丈夫なんで、じゃあまた出発しますね。』



「あいよ。オレ着くまで寝とくから着いたら起こせよ。くれぐれも事故はすんじゃねーぞ。」



『はい....。』



この日大さんに自分の感情を知られずに仕事をするのは大変だった。



ヤノッチに対して怒りの感情を示すと言う事は、



大さんと乗りたくないと言っているのと同じ事だから。



だからいつも通り振る舞わなければいけなかったのだ。



1日仕事をして終わったら怒りの感情も大分引いていた。



もうオレの頭が悪あがきしても無理と考えたんだろう。



だからと言って、今更ヤノッチと仲良くできそうもないし、



多分向こうから話かけて来る事もないだろう。



事務所に仕事を終え帰ってくるとヒサさんとヤノッチペアーの姿はまだない。



…ヤノッチに謝られても困るしな、今日は先に帰ろう...。



『お疲れ様でしたー。』



着替えを済ませ事務室にいる人達にペコリと頭を下げ部屋を出た。

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