恋した一日
「ごめんね、驚いちゃったよね?突然こんなこと言われても困ると思うんだけど、でも。永友くんには、知っておいてほしかったから」
彼女は、依然真剣な目で僕を見つめる。そんな彼女に答えるように、僕も目を逸らさない。だが彼女の方が目を逸らしてしまった。そのまま顔を俯いて話し出す。
「今日は本当に楽しかった。よかったらまた話し、……いや、何でもないよ」
話を途中で止めた俯いたままの顔を覗くと、彼女はとても辛そうな、悲しい顔をしていた。僕はそんな顔、見たくなかった。だってそんな顔を見てしまったら、彼女をどうにかして笑顔にしようと思ってしまうから。それがどれだけ辛いことなのか、僕には分からないけれど。
僕は好きなった人を、ただ笑顔にしたい。
「また、また来るから!」
また大声を出してしまった僕に彼女は吃驚している。それでも飛び出した言葉は止まらない。
「また一緒に話をして、一緒に笑おう!」
「駄目だよ。私なんかに大切な時間を使っちゃ」
私なんか、なんて言わないでいてほしい。これまでどんな気持ちで毎日を送ってきたのか、そんなの分かりっこないけど。これは、これだけは僕の身勝手でいいんだ。
「僕が話したいだけだから」
「友達や、家族だってもう顔も名前も忘れちゃう。どうせ君もすぐに嫌気を差しちゃうよ」
「大丈夫。何度だって出会って、何度だって初めましてって言う」
「どうせいつかは来なくなっちゃうんでしょ?これまでもそうだったって!」
「そんなわけないよ!だって、だって」
「僕は柚子さんが好きだから」