5話 俺って女より弱いんだな
やばいやばいやばいやばい!!どうするどうする!!?どうすればいいんだよ!?
「ふふっ、お兄さんも震えないでよ?別にお兄さんの命まで奪おうなんておもってないんだからさ」
女の子は見た目に会わないとても気持ちが悪い不敵な笑みを浮かべた、実際に顔は黒くなっている、漫画のように。
「っゆ、ゆづき、わ、わたしっ」
「っ、あ、あいら」
愛月は酷く震えていた、先程まで浮かべていた笑みも何もない、ただ汗、そして恐怖からか固まっている。
「っ、くっそ」
なんで、何でこんな事になるんだよ!?た、ただこの世界に一つしかない物を使っただけだろ!?
「お、おい」
「ん?なに?」
この世界に一つしかない物なら・・・
「っ、愛月が使ったクリスタルが一つしかないなら、愛月の命だって一つだぞ!?それを奪うのかよ!?」
たかが願い一つ叶えただけで命が奪われる!?ふざけんなよ、なんだよそれ、代償酷すぎるだろ!?
「?お兄さん、人の話し聞いてなかったの?これは絶対なんだよ、使った者の願いを叶えると一方で使った者の命を奪う、これ絶対だから」
「い、意味わかんねぇよ!!なんで命なんだよ!?他に金とか色々あるだろ!?」
仮にもこいつは俺のもう一人なんだよ!ふざけんな!自分が殺されると同じようなもんだろ!?絶対殺させねぇぞ!
「っわ、私こ、こんな事があるなんて、しらなく、て」
震えながらもなんとか言い訳を考えようと愛月は一生懸命口を動かした、だが
「こんな事って、というかそれ以前の問題でこのクリスタルって大切に誰にも触られないように保管されてたと思うんだけどさぁ」
「っ、そ、そうだ、おい愛月なんで、お前こんなクリスタル保管されてる所から取れたんだよ、厳重に保管されてるんだろ」
そうだ、命を狙われてるってわかって混乱してたが、何で愛月がそんな保管されてる物を持ってんだよ、おかしいだろ
「ぁ、こ、これ、は」
俯き、顔を隠すようにし、段々と声が聞こえなくなっていく、何故か取った理由は聞こえない。
「まぁ、お姉ちゃんが取った理由なんてどうでもいいけどね、私のやる事はお姉ちゃんの命をもらうだけだから」
「っ、さっきからあんた、貰う貰うってなんだよ、命は物じゃねぇだろ、死んだらなにもないじゃねぇか」
もう意味がわからんねぇよ、愛月は取った理由を言わねぇしこの女はこの女で命を貰うとか、全然意味がわかんねぇよ
「あぁ、そう言えば言ってなかったね、お姉ちゃんの命を貰う理由」
女は刀を片手で軽々と遊ぶように振り回しながら、頭を掻き、面倒くさそうに言った。
「お姉ちゃんの命を貰う理由はね、もう一回そのクリスタルを作るからだよ」
「っ、え、つ、作る?」
何で愛月の命とクリスタルが関係あるんだ?しかも作る?このクリスタルは世界に一つしかないんじゃないのか・・・?作る事なんて無理なんじゃ・・・
「うん、お姉ちゃんの命を使って、もう一回クリスタルを作るんだよ、そしてそのクリスタルをまた次の誰かが使ってまたその人の命を使ってクリスタルを使うんだよ、面白い原理だよねぇ」
女はとても汚い笑みでそう言った。女がしていい笑みじゃなかった、いや人間自体がしていい笑みじゃない、汚すぎる
「っ、な、なんて命なんだよ、命は一つしかないんだぞ、他のにしろよ」
これ、何回目だ言うの・・・、いやそんな事思ってる場合じゃない、命は一つしかないんだ
「他のは無理だよ、このクリスタルはそれだけの価値があるんだ、人の一生分を使うだけ価値があるんだよ」
溜息を吐きながら女はそう言った、手慣れているのかわからないが命を貰うという事に対して全く否定もなにもなさそうな表情をしている。
「い、一回だけしか願い叶わないんだろ、代償重すぎるぞ」
「はぁ~、面倒くさいなぁお兄さんは、こう考えればいいんだよ、この世界に居る人間の中で一人だけ消えてしまった、ね?ごく普通でしょ?人は必ず一日に何人も死んでるんだよ、これは運命、仕方がないことなんだよ」
こいつ何言ってんだ、それは人の手でやったものじゃなくて病気、その他の事だろ!?
「っ命は、道具じゃないぞ」
「お兄さん、さっきからしつこいよ、人はいずれ死ぬんだよ、それが少し早まるだけ、命は使う物、だからねぇ」
こいつ何なんだ、そこらの殺人犯なんかよりよっぽど頭おかしいぞ、いや頭おかしなんてもんじゃねぇ
「そうか、わかった、おい、愛月早く行くぞ、あの女完全にいかれてやがる」
「っえ、ゆ、ゆづ、き?」
そうだ、今なら逃げられる、こうやって普通に話しも通じたじゃねぇか、逃げれるだろ
「?お兄さん、私の話し聞いてた?私はそこのお姉ちゃんの命を貰いにきたんだよ?証拠として刀もあるのに」
「お前みたいな華奢な女の子が刀なんて持てるわけないだろ、それはおもちゃだ、家に帰れ」
刀は確か十キロくらいはあるんだぞ?そんなものを片手で、しかもあんな細い華奢な手で持てるわけがねぇ、ただの脅しだ。昔の人だって侍だって両手じゃないと振り回せなかったんだ、あの刀はおもちゃだ、嘘ものだ
「へぇ~、嬉しい事言ってくれるねお兄さん」
「ゆ、ゆづ、き?なに、言ってるの?」
この世界?に来てからおかしいことばかりだ、愛月が俺のもう一人?意味わかんねえよ、さっきも証拠って言う証拠言われてねぇし、これは多分、夢だな、そうだ夢だ。早く目覚ましてくれよ俺
「まっ、そんな嬉しい事を言ってくれるお兄さんもそのお姉ちゃんに手を貸したって事で皆殺しにするけどね~」
「っ!?ゆ、悠月!?」
まだ目覚めないのかよ、夢長すぎるだろ、あ、そうかもしかしたら友達が居ないあまり現実逃避として幻覚を見てるのかもしれないな、まったくなにやってんだよ俺は
「んじゃ、まずはお兄さんの方から殺そう!」
「っ!!悠月!!悠月!?しっかりして!!」
うるさいなぁ、愛月はさっきみたいにあの可愛い笑顔みしてくれよ、あ、これ俺の幻覚か、俺の幻覚すげぇ
「よっと!まずは一人目!!」
「っ!ゆ、悠月!!早く走って!!殺されちゃ!!」
なんでそんなに泣きそうな顔してんだよ、笑えって言った、ろ・・・?
「っえ?」
なんだ、これ、すっげえ腹、痛ぃ・・・あ、あれ?これ、俺の幻覚、じゃ・・・?
俺は腹の痛みのあまり地面に倒れた、凄く痛い、あれ、手が赤い
「っぁぁ!!ゆ、悠月!!悠月!!?」
「苦しめないように急所を狙った筈なんだけどなぁ、おかしいな、お兄さん凄いね背後から刺されたのに急所避けるなんて!運が良いのか悪いのかわからないけど」
これ、は、幻覚でも、夢でも、ないのか・・・?っクッソォ・・・痛い・・・痛すぎる・・・死にたい、死にたい死にたい死にたい、あぁ、時間が長く感じる・・・
「さて、とお兄さんは大量出血で死んじゃうと思うから次はお姉ちゃんの番だねぇ」
「っぁぁ・・・」
女は皮肉に混じった様な笑みで愛月を見ている、そいて愛月はとても震えている、完全に石の様に固まっている。
痛い痛い痛い痛い、何も考えられねぇ痛すぎて何も考えられねぇ・・・
「っくそぉ・・・痛ぃ・・・」
「!ゆ、悠月!!っご、ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
愛月は混乱し、自分が狙われている事を忘れたかのように泣きながら俺に謝ってくる。とてもじゃないが何か喋れる気力も何もない。
「お姉ちゃん、謝ってる暇なんてよくあるねぇ、私に今にも殺されそうになってるのにさぁ」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・悠月・・・巻き込んじゃって・・・」
っ、謝ってる暇、あったら早く、逃げろっよ・・・くっそぉ・・・死にたくねぇ・・・
「お姉ちゃん謝ってる暇あったら逃げればいいのに、せっかくお兄さんが時間稼ぎしてくれてたのに、あ、時間稼ぎにもなってないか」
女はそう言いながらゴミを見るような目で俺を見てきた、実に不愉快な顔だ、腹が立つ
「悠月、私、どこまで戦えるかわからないけど」
・・・は?今何て言った?
俺の耳には愛月からはありえない言葉が入ってきた、傷みも忘れるくらい衝撃的な言葉だった。
「ん?お姉ちゃんが私と戦うの?笑えるね、っと長話しすぎたね、さっさとやるね」
「悠月、ごめんなさい、私戦うね」
っおい、勝手に話し進めんなよ・・・後勝手に盛り上がってんじゃねぇよ・・・
「よし、じゃあお姉ちゃんの命貰った~!」
女はそう言いうと一気に愛月の懐までダッシュし、頭に刀を振り下ろした。俺はこの時絶対に愛月は死んだと思っていた、だが
「?え?あれ??なんでこんな所に岩が」
愛月死んだかと思いきや消えていた、愛月が居た場所には何故か岩があった。
ど、どうなってん、だ・・・?あ、愛月、は・・・?
俺は驚きのあまり傷の痛みなんて気にもせず愛月を探した、だがどこにも見つからない。そう思っていた時だった
「先に言って置けば良かったね、悠月、ごめんね」
背後から声が聞こえ頭だけを動かし横を見た、そこには愛月が居た。傷も何も負っていなかった。
「おかしいな、私は貴方、お姉ちゃんを確実に切った筈なんだけど」
女はおかしい物を見るような目で愛月を見た、その瞳はとても冷たいを目をしていた、人殺しの目だ
「っ、わ、私の能力よ」
・・・能力・・・?
「へぇ、お姉ちゃん能力持ってたんだ、しかも結構便利そうな」
女は口元を舐め回し、不敵な笑みを浮かべている。獲物を狙うかのような目だった
「っ、私の能力は私と私の周りにある物を入れ替える能力、です」
・・・っおぃ・・・なんでそれ、口に出した、愛月・・・
「お姉ちゃん自分から自分の情報口に出すってバカ?」
「っあ」
・・・今、一瞬でも勝てる、と思った、んだけどな・・・間違いだったみたいだ・・・っクソ・・・愛月のバカ・・・