13話 今回でお前の事何回可愛いと思ったんだろ
っすっげえ怖いんだが・・・いや、まずその前にちゃんと説明しないといけないよな、色々とツッコミたい事があるんだが・・・
「え、えっと、だな・・・この刀は、あの女、えっと篤姫って女の大事な愛刀だったらしくてな、それで、その、大事に使っていこうかなぁと・・・」
うん、全くもって理由になってないわ、こんなので納得する筈がない、何故ならこんな簡単な理由、誰にでも言えるからだ、幼稚園生でも言えるぐらいの言い訳だ、と言ってもこれは本当の事だ、下手に嘘をつくのも嫌だしな
「・・・ふ~ん、でもその刀で悠月さっき背後から斬られたじゃない、嫌じゃないの・・・?」
確かに斬ってきたヤツの刀なんて使いたくもないし、斬られた刀なんて使いたくない、でもこれを良い方向で考えると
「この刀は一応俺と愛月を助けてくれたからな、それで良いだろ、それにこの刀だって俺を斬りたくて切ってきたわけでもないし、道具は人によって使い方が違うしな・・・」
そう、そう考えればこの刀に何の恨みもないし、嫌でもない、この刀は刀なりの仕事をしただけの話しだ、うん俺って心が広いかもしれない
「・・・悠月がそう言うなら、良いけど・・・あ、それより傷、大丈夫?」
「ん、・・・!あ、あれ傷が治ってる・・・!?」
治療も何もしてない筈なのに先程斬られた傷口は綺麗さっぱりなくなっていた、どうなってるんだ・・・?
「!あ、やっぱりそうなんだ」
愛月は何故か笑顔でそう言った、別にその笑顔に何か不気味なものとかは何も感じられず逆に柔らかい笑顔だった
「え、ど、どういう事だよ、やっぱりって」
「あ、うん悠月ってやっぱりもう一人の私なんだって、改めて認識したよ!」
・・・ん?改めて認識したってどういう事だ??
「だ、だから何だよ俺何かやばいのか?」
「ううん、全然大丈夫、ただ悠月が私と同じで怪我が治るスピードが異常に早いんだねって」
・・・今何て言った?怪我が治るスピードが異常に早い??
「っ、ちょ、ちょっと待ってくれ!愛月!怪我が治るスピードが速いなんてもんじゃないだろ!?こ、こんなの化け物じゃねぇか!」
そ、そうだ!こんな一瞬にして治る傷じゃねぇぞ!?せめて二ヵ月間くらいしないと治る傷じゃねぇぞ!?
「化け物というか、私の体は生まれ持っての体質だけど、多分悠月の場合はこの世界に来てからその体質になったんじゃないかな、それとも能力として持ったのかも」
・・・なんじゃそりゃ、というかそれって結構チート能力じゃないか!?
「あ、でも気を付けてね?いくら怪我が治るスピードが早いって言っても一定以上の血を出すと出血多量で死んじゃうから!」
人差し指を俺の目の前に持ってきてそう言った、そんな仕草も可愛いと思った、ってそうじゃないだろ
「え、出血多量で死んじゃうからって、お、お前一回死んだのか?」
「え、う、ううん死んでないよ、ただ意識が遠のいていった事があるからそれで死んじゃうんじゃないかなぁって」
愛月はそう言いながら苦笑いしている、いや、苦笑いで済む話しじゃないんだけどな
「そ、そう、なのか・・・っ、てじゃなくて!お前怪我大丈夫なのか!?」
俺は思い出しつい駆け寄ってしまった、と言っても触ったりはしていないが
「う、うん大丈夫だよ、悠月と同じで私も早く治るから・・・」
何故かもじもじとしながらそう言っている、いや別に俺は何もしてないぞ、本当に触ってもないし
「な、なんだよもじもじして・・・」
「あ、う、うん・・・ちょ、ちょっと近いなぁって」
先程までの緊張感はどこかへ消えたのか今はただ何故か生暖かい空気の中に居る感じがした、おい、もう一人の俺、お前可愛すぎるだろ
「ち、近いって指先がお前の体に触れる程度だろ?さっきベッドでお、俺に寄ってきたリしたくせに」
うん、自分で言ってて気持ち悪いわ、でも、うん事実だからな、さっきなんて顔の距離数センチ程度だったからな、それに比べれば今なんて普通すぎるわ
「う、うん、そう、なんだけど、な、なんでだろうね」
愛月自身も特にわかっていないのかそう言った、恥ずかしくなったのか顔が引きつっている、でも、その笑顔もまた可愛らしい
「っさ、さぁな・・・あ、そうだ」
こんな時に聞くのもなんだが・・・うん、確認したい事があるんだよな、さっきの事・・・
「ん、ん?なに?」
「あ、いやお、お前さっき俺が言った事お、覚えてるか?」
言っておいてなんだが、うん忘れててほしいわ、今更ながら恥ずかしすぎる、まさかあの二人に勝てるなんて思ってもなかったからな、今更消せるわけでもないし
「・・・ん?何か言った??」
よっしゃ~気絶してたのかわからないがわかってないらしい、幸運だわ、聞かれてたら気まずくなるし気持ち悪いと言われると思うし一番辛いのは無かった事にされる事だ
「い、いや覚えてないならいいんだ、助かった」
「・・・え、私に何か言ったの??」
こんな時に限って何かに鋭いのか愛月は興味津々の様な表情でこちらへ歩み寄り聞いてきた
「!い、いや、だからお、覚えてないならいいんだ、うん」
「!え~?教えてよ~悠月はもう一人の私なんだよ~?隠し事なんて嫌だよ~!」
笑顔で肩を掴みながらそう言ってきた、でもその笑顔は何故か少し怖いと感じた、肩に入る力も何故か強かった
「っ、だ、だから覚えてないならいいんだよ、恥ずかしいし」
そこで俺はつい口を滑らせ恥ずかしいと言ってしまった、自分からしたら大変な事だが相手にとっては意味がわからない筈なんだが
「ん?恥ずかしい??・・・え、私に何言ったの?悠月?」
流石と言ったところか、愛月は何かに察し顔をニヤニヤとしながら俺の顔を横から覗き込むように言ってきた、そしてその顔もまた可愛らしかった




