10話 好きな人の為だったらこんなにも頑張れるんだな
俺は物凄いスピードで迫ってくる弦歌という男へ鞘から引き抜いたとてつもなく重い刀を振り下ろした、十キロ、このとてつもない重さに俺は体を振り回され
「?なにそれ、バカにしてるの?」
刀に体を振り回され、当てる事もできなく、体を持っていたナイフで斬られた、とてつもない痛みが腹から胸に走る
「っぐぅ・・・!?」
痛い痛い痛い痛い!また、また斬られた・・・!?くっそぉ・・・痛すぎる・・・この痛みは・・・
「っあっぁぁぁぁぁ!!?」
腹、胸と焼けるような痛みが全身に走る、息をできているのかもわからないほどにとてつもなく痛い、これで斬られたのは二回目だ、一日で二回も体を斬られたんだ
「っぷ、あははは!さっき私が後ろから刺した時よりも暴れまわってるよ」
「篤姫の刀を使おうとしたところまでは良かったと思うよ?でも、まさか刀も碌に振るえない者が居たとは、見た事がないぞ?そんな者」
俺をバカにするように、いやバカにし軽蔑するかのような目で見てきた、痛みのあまりよく見えないが絶対そうだ
「っくそぉ・・・一発も当てられずに終わるのかよぉ・・・」
おい、俺・・・自分が好きになった女を傷つけられて傷つけたやつに一発も喰らわせずに終わろうとしてんのかよ・・・?冗談だろ・・・?
「?君はさっき僕に一発、だけ当てたじゃないか全然痛くなかったけどさ」
余裕ぶった表情をしながらそう言ってきた、いつでも愛月の事を殺せるくせに殺さない、つまりそう言う事だ、相手にすらなってないんだ、そりゃそうか、俺は一般人、向こうはおそらく戦い慣れした人間だ、最初から天と地の差の力だ、でもだからと言ってそれで諦めろとは言わないだろう
「っ、さっき、の・・・は、一発なんて、いわねぇよ・・・お前、苦痛の顔も、なにもみてねぇじゃねえか・・・」
その余裕ぶった顔が凄く腹立たしい、思い出す、小学校の頃複数の相手にボコボコにされ、軽蔑するかのようなあの目、今は複数じゃないが、でもあの目だ、あの目が腹立たしい
「・・・あ、ねぇ弦歌、ところで何であのお姉ちゃん早く殺さないの?遊んでる暇じゃないでしょ?怒られるよ」
「ん?あぁ、別にいいさ上から怒られるけど今はこの少年の苦痛に満ちた顔を見ていたいんだ」
微笑みながら先程よりも余裕ぶった顔を向けてきた、実に腹立たしい顔だ、一発でもいいから顔に一撃入れてやりたい顔だ
「っ、こっの、犯罪者が・・・!他人の苦痛の顔がそんなに見たいか・・・この野郎っ・・・」
このサディスティック野郎が・・・想像してたのと全然違うじゃねぇかよ・・・俺の苦痛の顔が見たいから愛月を殺さない・・・?異常だ・・・異常すぎる・・・・・・いや、ちょっと待て、こんな事を考えてる暇があったら行動に移せよ俺・・・
「っ・・・このクズが・・・」
「犯罪者?いやいや違うよ、僕はそこの女を殺すためにきた仕事人だよ、あ、篤姫もそう、犯罪者でもなんでもない、どちらかと言うとあのクリスタルを使ったそこの女の方が犯罪者なんじゃないかな?あれにはちゃんと使った者の命を取るって契約が最初からあるんだからさ」
「っ・・・なんで、そのクリスタルをまた作らないといけないんだよ・・・そんなの次々と犠牲者が現れるじゃねぇか・・・」
別に俺は説教をしたいわけではない、ただ意味がわからないんだ、あのクリスタルをまた作らないといけない理由が、俺は別に自分の知り合い以外がどうなろうとどうでもいい、でも自分の知人の場合は別なんだ
「ん?そんなのは君が聞く必要はないよ、君はただそこに居る女に加担しただけの存在、そしてその使った本人も知る必要がないからね」
っ、そうだ、使った本人にも命を奪われる理由がちゃんとしてねぇじゃねぇか、理由が適当すぎるんだよ、自分の願いの代わりに自分の命を奪われる、説明不足すぎるんだよ、そうだよ
「っ、自分の願いの代わりに自分の命を奪われる、なんだよ、これ・・・説明不足すぎるだろ・・・こんなの、納得の内にも何も入らねぇよ・・・」
いや、本当、今更すぎるんだが、理由が浅すぎるんだよ、意味がわかんねぇ
「思いっきり斬りつけた筈なんだけどね、何で君話せてるの?普通だったら苦痛のあまり失神とかしてる筈なんだけど?」
今までつっこまれなかった事につっこまれた、確かに俺は何でこんなにも余裕?に話せているのか、なぜ失神しないのか、わからない
「っ、そんな事、どうでもいいだろ・・・」
でも、そんな事はどうでもいい、クリスタルの事もどうでもいい、話しがいきなり変わるがとりあえずはこの男、弦歌という男に一発入れられればいいんだ、まずはそれが第一目標だ
「どうでもいいって、君化け物か何かかな?」
「うるせぇよ・・・」
俺は重たい、痛い体を起こし、一歩一歩前へ歩み地面に落ちている刀へ手を伸ばし、持った、怪我の分、先程よりも重い気がする、凄く重い
「ってめぇに一発食らわせないと気がすまねぇんだよ・・・女に容赦なく刃物投げやがって・・・っうっ!」
話している最中に喉から生暖かい液体が出てきた、それは勿論血だ、口の中は生暖かく鉄臭い、鼻の中からも血が出てくる
「そんな怪我の状態でよくそんな事が言えるねぇ、君の精神どうなってるんだい?不思議だよ」
「っ、あぁ・・・俺も不思議だよ、こんなに他人の為に動けるなんて、さ・・・」
好きな人の為ならなんだってできる、この言葉を昔俺はバカにしていた、そんな事ありえるわけねえだろって、でも違ったんだな、こんなにも痛いのに俺今、動けてるぞ、好きな人の為にこんなに体を動かせるんだぞ、それになんだか心地が、気持ちがいいようなそんな感じがする
「兄ちゃんかっこいいような事言ってるけど後少しで出血多量で死んじゃうよ?」
「・・・あぁ、おそらくそうなるだろうな、でも、その前にせめて・・・」
せめて一発入れて、その気持ちの悪い表情を変えてやるよ・・・その下卑た目を・・・そして、愛月を傷つけた一発、その顔面に入れてやる、この刀で、お前の彼女の刀でな