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プロローグ5

 真っ暗闇の筈なのだが、何故か見える。ダンジョン特有の現象の一つであり、上を見上げれば巻き込まれた砂や岩が降ってくる。深い深い穴に落ちている最中であり、ルクスはそんな穴の中をラウジを横抱きにして、必死に落ちてくる瓦礫を避けていた。


 ボッボッと空気を押し出す音が幾度もなる。空気を蹴ると言うより、右足を出して右足が沈む前に左足を出してといった具合で宙を駆けていく。本来なら上昇する事も可能で、落とし穴に落ちたとしてもこれで抜け出せるはずであった。


「ええ、あっ、スキル獲得したのか?」

「スキルって何?そんな物知らないんだけどっ!?」

「な、なんだって!?」


 宙を走ると言う本来ならあり得ない現象にラウジが驚きの声を上げるも、それがすぐにスキルの恩恵ではないかと気付く。だがすぐにルクスから焦りを含む声色で否定の言葉が返ってきた。ルクスのこれはただ単純に身体能力のみで行われている事になる。それが分かった瞬間、ラウジはルクスを信じられないものでも見るような目で見てしまい、今自分がそれに助けられている事に気付き気落ちしてしまう。


 レベルアップの恩恵は幾つかある。その一つにスキルの獲得と言うものがある。例を上げるのならば、ラウジの生物の気配を探る『察知』と罠や宝箱の場所等を知る『探索』がある。どちらも使用者の力量によって効果範囲が変わり、基本の能力は低くともそれなりのレベルであるラウジはそこそこ広かったりする。前日にスッポヌーを見つけたのも、逃げるのに役立ったのもこのスキルがある事が大きかった。


 スキル獲得するレベル帯と言うものがあって、基本的に10レベル毎なのだが、人によっては5レベル毎等早期に習得する者もおり、レベル1ながらとんでもない身体能力を発揮したルクスならば、1レベル上がっただけでもスキルを習得していても可笑しくなかったが。


 だがしかしレベルアップの一番の恩恵は身体能力の上昇と言う点であろう。元々の身体能力が高いルクスが、初めてレベルアップを体験し、その上昇した腕力に違和感を感じて手を握ったり開いたりしたように、元々の身体能力が高いほど恩恵も高いが慣れるのにも時間が掛かる。


 当然それは小さな挙動にも表れ、ましてや大の大人一人を抱えて空中を駆けあがれというのはルクスと言えど無理であった。


 落下の衝撃で潰されない様に落下の速度を緩める事ぐらいしか出来てはいない。それもラウジを抱えた状態で落下物を避けながらと言う偉業を行いながらの為馬鹿には出来ないのだが。


「くっ!?」


 ルクスは顔に焦りの表情を浮かべ、それでもラウジを放り投げる訳にもいかず、抱えたまま底まで落ちてくる瓦礫を避けながら落ちていくのであった。






 ズダンと膝を曲げて殺し切れなかった衝撃でダンジョン内に音が鳴る。ビリビリと痺れるが、そもそもそれ以上の衝撃を伴って殴り蹴る事もあるし、踏み込む事もある為、ルクスにとってはそれ程のものではないが、抱えられて衝撃を殺すことも出来なかったラウジにとっては大変な事となった。


「こ、腰が…!?」

「あっ!!」


 おもに衝撃の大半を受け止めた腰に激痛が走る。着地寸前にはラウジを抱えていた事を忘れていたルクスは、腰に走る激痛に呻くラウジを見てその存在を思い出し冷や汗を掻いている。


『キャァァァァァァ………』


「なんだっ!?」

「あっちから聞こえたっ!!」

「なら、行くぞっ!!」


 だが突如響いた甲高い悲鳴に、ラウジは此処が少なくとも一階ではない事を思い出しすぐさま姿勢を正す。五感も身体能力同様高いルクスが悲鳴の聞こえた方の通路を指差し、ラウジが不意を打たれる前に正体だけでも確かめた方がいいからと、ルクスを先頭に悲鳴の聞こえた方へと向かうのだった。


 少なくとも現在地は上層部または一階層と呼ばれる場所なのか、整地された迷路のような場所。更には悲鳴が聞こえた方向に延びる道は一本道であり、真っ直ぐ進むだけで良い。走って移動する二人の正面に三つの影が見えて来た。


「ラウジ、あれっ!!」

「サイクロプスだとっ!?Dランクのモンスターじゃないか!!」


 視線の先には一つ目の角のある巨人。巨人と言っても大の大人二人分ぐらいの身長。振り上げた巨大な棍棒は天井に着くかどうかであり、ダンジョンの壁がある為横には振れていないようだ。サイクロプスと呼ばれるモンスターであり、見た目同様力が強いが、頭が悪く、遠距離攻撃を持つ集団で襲い掛かるとあっさり撃退する事が出来る事からDランクと言う低ランクに留まっているモンスターである。


 ただしその力は強く、油断していい様な相手ではない。その正面に盾を構えた大柄な冒険者。その冒険者の後ろでは座り込んでカードを握りしめて泣いている女性の冒険者が居る。


「誰か、死んだのかっ!!」

「えっ…」


 ラウジはそのカードの事を知っていた。冒険者ギルドで発行される冒険者カードである。このカード、魔力を一切含まず、また魔力化しない特性がある。ダンジョンで亡くなった冒険者は、その装備毎魔力となってダンジョンに吸収される為にカードだけを残すのだ。ギルドや遺族達は他の冒険者が持ち帰ったそのカードの存在で冒険者の生存を確認するのだ。


 ちなみにダンジョンが魔力として吸収出来るのは、生きていない物。要するに死骸である。そして何故か生きている存在の装備や持ち物は吸収されない。その存在が死んだ時、またはその手から長時間離れた時だ。


 ラウジの叫びにルクスが信じられないものを聞いたような顔をし、少し足を止めてしまう。そんなルクスにサイクロプスが居るのは真正面の為、下手に逃げるより加勢した方が良いと判断したラウジはルクスを訝しむよう見た後、突撃する様強い口調で声を掛けた。


 ルクスは戸惑ったようにしつつも、目の前の事に対処する方が先だと、ラウジを追い越して走り出す。サイクロプスの正面で、棍棒の一撃をいなしていた大柄な男の冒険者の背を蹴り、ラウジの叫び声で他の冒険者が来た事を知っていたその男は動じない。サイクロプスの顎めがけてルクスが飛んで行く。


 バゴンという硬い物が砕かれる音が鳴り、サイクロプスが後ろへと倒れ込んでいく。巨大な飛竜すら地に落とすルクスの、しかもレベルアップし威力が上がったそれを諸に受けたのだ。Dランク程度のモンスターが耐えられる道理もない。そして魔力となってダンジョンに吸収されたのだった。ルクスの一撃は顎の骨を砕き、首を折っていたのである。


「とんでもないな。あ、いや、助かった。」

「いやいや、俺は何もしてないからな。礼はルクスに言ってやってくれ。」


 その大柄な冒険者は呟くように、ルクスの実力について溢す。その言葉にはルクスを否定する様な響きは伴ってはいなかったが、それでも助けられた相手が気を悪くしてはいけないと、傍に来たラウジに頭を下げながら感謝の言葉を述べてくる。


 ラウジは何もしていないのだから、その言葉は女性冒険者の様子をボーと見ているルクスに言う様、大柄な男の冒険者に言った。


「すまんな。ルビーナと消えたカインは今月にも婚姻を上げる筈だったのでな。」


 ラウジもルクスの様子がおかしい事を気にして、その女性冒険者とルクスの方に視線をやる。そんな様子に、大柄な冒険者は自分の事をドガードと名乗った上で、女性冒険者と魔力となって消えた冒険者の事を簡潔に説明したのだった。






 パチパチと火が燃える。ボス部屋と呼ばれる場所の手前で、ラウジとルクスそれに助けた冒険者グループであるドガードとルビーナと共に昼食となっていた。ラウジとルクスは二人の御随伴にあやかったのである。


 どの階層でもそうなのだが、階段のある場所はモンスターが出現せず、また近寄りもしない。一種の休憩場所として冒険者に知れ渡っており、そこでグーと腹を鳴らしたルクスの為に食事となったのだ。ルクスは泣き止んで気丈に振る舞うルビーナと何事か話している。


 ラウジとドガードは互いに顔を見合わせ、二人の様子に注視していた。ルビーナは恋人を失った直後であり、ルクスはまだ子供。動揺していたのも見ている。


「二人は大丈夫そうだな。」

「まぁな。だが問題はこれだな。」

「ああ、ボス部屋が何でここにあるかだな。」


 今は何気に和気藹々としており、無茶無謀な行動に出る様子もない。その辺りルビーナは冒険者としての経験を積んでいるのだろう。もしそういう行動に出るのであれば、カインの家族にカインが亡くなった事を知らせてからと考えているのかもしれないが、今を無事に地上まで出れればそれでいいラウジは、ルビーナよりも今の状況の方が気になっている。


 カイン、ドガード、ルビーナ三人が普段活動している第二階層、12階に向かう途中であり、此処は第一層の7階だと言う。それは本来ありえない事であった。何せこの休憩場所のすぐ後ろにボス部屋を知らせるモンスターのレリーフが入った扉があるのだから。


 ボス部屋とは階層が変わる時に、まるで壁の様にそびえたつ、それまでとはレベルが違うモンスターが巣食う部屋の事であり次の階層へと行っても活動できるか、まるで試されているかのような部屋である。そのボス部屋は本来なら10階層事であり、こんな浅い階層に出て来る筈がないのだ。


「それに、サイクロプスに一階の落とし穴。」

「それだけじゃないぜ。俺が昨日遭遇したスッポヌーの大群もだろうな。」


 おかしいのはそれだけでは無く、ドガード達が遭遇したサイクロプス。このモンスターは本来第二階層の底の方でしか遭遇しないモンスターであり、ドガード達も話には聞いていたが遭遇したことはない。


 更にはラウジとルクスがはまった落とし穴と言う罠もあり得ない事だ。一階には罠は存在しない。これは冒険者共通の認識であり、このダンジョンは発見されてから結構な年数が経つが、今の今まで一階で罠を見つけたと言う報告は聞かない。あえて言うのならモンスター部屋ぐらいだろうか。


 落とし穴と言う罠も本来なら五階付近で初めて設置される罠であり、それも精々一階か二階落とすだけであり、一階から七階まで落とされると言う事もないのだ。


 そう考えていくと、前日に正確には前々日だろうがラウジが遭遇したスッポヌーの大群もおかしいと思えてくる。


「スッポヌーの大群?そんな話は聞いていないが…」

「そりゃ、トレインの名残だと思ったから、報告はしてないさ。」


 普通ならばダンジョン内で起きた異常は冒険者ギルドに報告しなければいけない義務がある。だが、冒険者ギルドから得た情報にそんなものはない。その事を訝しむドガードであったが、ラウジのトレインの後と言う言葉に納得した。


 トレインとはダンジョン内のモンスターの習性を利用した、モンスターを集める方法である。ダンジョン内のモンスターは外部からの侵入者を見つけると、その存在を倒そうと襲ってくる習性がある。これが外だと魔物も生きている為、外敵の力量次第では逃げ出す事もあり、またどれだけ弱い存在だろうと必要以上に襲う事は無い。


 そんなダンジョン内のモンスターの習性を利用し、モンスターが見失わない速度で逃げて、本来なら一匹から二、三匹で行動するモンスターを集める事をトレインと言う。何故トレインというのかは分かっていない。何時からかそう言われ出したのだ。昔は集会等と言われていたのだが。


 そんなトレインだが、魔法使いの居るような広範囲攻撃が可能なパーティーには人気である。何故なら魔石を効率的に回収出来るからだ。その他に態とその階層のモンスターを集め、他のメンバーを安全に次の階層に行けるようにすることも出来る。それ以外にはモンスターの大群と戦闘を行わなければならず、そんな数であれば、実力的に問題ない階層でも途端に危険度が跳ね上がる為、基本的に忌避されていた。


 トレインで集められた後、そのモンスター達を放置されたのならば、それに運悪く遭遇してしまったのならばラウジの遭遇したスッポヌーの大群もそれほど不思議な事では無いからだ。


「ふむ、だとすると…。思い当たるのはダンジョンの成長か?」

「ああ、それも浅くなる方向のな。」

「最悪だな。」


 ドガードが今現在起きている異常の原因を推測し、それを声に出した。只々呟いただけのそれを、ルクスの方を見ながらラウジが補足する。ラウジの補足に自分の考えが当たっている事に確信を持ったドガードは頭を抱えた。


 ダンジョンは生きている。そう言われているだけだが、それでも、そう言われる現象はあるのだ。ダンジョンは何年かに一度成長する。その階層を深くしたり、モンスターの配置を変えたり、ダンジョン内の道を一新したりするのだ。


 その中でも最も脅威になりえるのは、ダンジョンが浅くなる事。ダンジョン内に出て来るモンスターのレベルはダンジョンがどれだけ深くなろうとも変わら無いからだ。ダンジョンが浅くなると、上層部でも下層部で出て来るモンスターが出現する事になる。それだけでなく、下層部の凶悪な罠も上層部で見られるようになるのだ。


 本来ならもっと深い場所で出現するサイクロプスがこんな上層部に居たり、罠が無い筈の一階で落とし穴があったり、低レベルモンスターの異常出現もこれで説明がつくからだ。このボス部屋にしても十階に出て来るボスモンスターかどうか怪しいものである。


「フレイムアロー!!」

「おお、凄い凄い、凄いよお姉さん。」


 ボス部屋の扉を見て溜息を吐いているラウジとドガードを他所に、何故か火の単発遠距離攻撃用魔法を通路の奥に向かって放つルビーナ。それを凄い凄いと燥ぎながら見ているルクス。話の流れから、ルビーナに魔法を見せてほしいとルクスが頼んだのだろう。


「何やってんだよ…」

「はぁ、せめて魔力を節約してくれ。」


 そんな二人に再び頭を抱える。唯でさえ何が起きるか分からないのに、フレイムアローという魔力を使う行動に出たルビーナに、さっきまでの落ち込み用は何だっんだという思いと、曲がりなりにも冒険者だろうという思いが口から溜息として出て来る。


「ラウジ、ラウジ、凄いよお姉さんっ!!」

「ああ、はいはい。魔法使いなら普通だろ?」

「あら、ひどいわね。フレイムアローは魔法使いでも上位者しか使えないのよ?」

「お前はっ!!…せめて着火魔法のファイヤに出来なかったのか」


 そんな二人に興奮したルクスが声を掛けてくる。だがラウジの反応はそれ程でもない。魔法使いとしてパーティーに加入している冒険者ならば、魔法系のスキルを覚えているのは当たり前なのである。初めて攻撃魔法を見たルクスにとっては仕方無いだろうが、冒険者として当たり前の事に、ラウジは騒ぐ事は無い。


 冒険者はその役割を分かり易くするために、何が得意かと言う点で職業名を名乗ったりする。ドガードはタンカーと呼ばれる前衛でモンスターの攻撃を防ぎ、後衛に攻撃をいかない様にする役目を持つ職業。ルビーナは魔法使いであり、魔力を消費して魔法を発現させる、後衛でモンスターに攻撃する役目を持つ職業。ラウジはあえて言うのならば盗賊やスカウトと言う職業になる。


 本当に盗賊行為を行う訳では無く、罠の発見やその解除、宝箱の発見等が主な役割の職業だ。スカウトというのは、モンスターや魔物の発見を盗賊よりも優先している職業である。


 ただ冒険者は単独で行動する事もあり、何でも出来なければならない事から、あくまで得意なものを簡単に言っているに過ぎない。ドガードとてその身程あるような大型の剣で攻撃もすれば、罠を発見解除もする。ルビーナとて前衛に出て攻撃する事もある。


 ラウジの様子にルビーナが文句を言い、ドガードがルビーナに軽率な行動は控えてくれと言うもルビーナは少なくともここで休めば魔力は回復するのだからあれぐらいどうってことないと悪びれた様子すらない。外とは違いダンジョンは魔力を吸収するため、ある程度魔力を込めなければ魔法は使えず、さらにその威力や距離を伸ばす為にも魔力は温存した方がいいと言うのに。


「ラウジは出来ないの?」

「あら、魔力があれば、火の初級攻撃魔法ぐらいは出来る筈よ?」

「見たい見たいっ!!」


 そんな騒がしい場にルクスの疑問の声が上がった。そんなルクスの疑問をルビーナが答える。人には必ず魔力を持っていて、それをレベルアップと言う形で押し上げられる冒険者は誰もが最低限の魔法は使える。


 その中でも最も簡単な魔法であるファイア。着火魔法とは違い前へと火の玉が飛んで行く魔法である。それを聞いたルクスが目をキラキラさせながらラウジに迫る。ルクスの様子に、これは誤魔化せないとハァと一つ溜息を吐き、ラウジは魔力を体内で活性化させる。


「何それ?」

「プ、クス、プアァハハハハハハハ…」

「笑うなっ!!…魔法は苦手なんだよ。」


 ラウジの指先にちょろっとだけ灯った火。それは着火魔法のファイヤでは無く、攻撃魔法のファイアであると言うのに、それは大差がない。ルクスがそれを見て顔を引き攣らせ、ルビーナが笑うのを我慢しようとするも出来ず、終いには指を指して笑い転げる始末。ドガードも顔を背けながらかすかに肩を震わせていた。


「でも、ラウジぐらいのなら僕も出来そうだよ?」

「悪かったなっ!!」

「あはは、確かにこれぐらいならすぐ出来そうだね。教えてあげよっか?」

「うんっ!!」


 そんなラウジの火の初級攻撃魔法を見て、これぐらいなら出来そうだと言うルクスに笑いを耐えながらそれなら教授してあげようかと提案するルビーナ。その事にルクスは目を輝かせ、すぐに頷いた。


「たくっ、無理やりやらせたくせに…」

「すまんすまん。それで、これからどうするんだ?」

「…そうだな。運良くと言っていいか分からんが、ボス部屋の扉を発見出来たんだ。ここを拠点に少し周りを確認した後、ボス戦と行こうじゃないか。」

「そうだな、それがいいか。」


 笑いながら離れていく二人に愚痴るラウジ。そんなラウジに謝りながらドガードはこれからの予定を聞いてくる。ラウジは少し考えた後、折角拠点代わりになる場所を見つけたのだから、此処を中心にして周りを探索し、少しでも力量を上げた後ボスに挑むと言う提案をする。


 ドガードも下手にこのままボス部屋に突入するよりも、ラウジ達と連携を少しでも確認しておきたかった為、簡単に頷く。


 ラウジは金銭的なもので、ルクスは必要としていなかったが武装していないと言う点は痛い。本当ならば逃げ帰りたいが、七階と言うラウジが潜った事のない深い階である事に加え、ダンジョンが浅い方向で成長している為、モンスターの強さも段違いである。


 ルクス一人であるのならば、罠にさえ気を付ければ良いと思われるが、まだ初心者のルクスにはそれも厳しいか。


 それならば他の冒険者と協力し、ボス部屋を攻略した方が安全であると計算したのだ。自身は指示を出す側にまわり、ルクスが前衛で戦えば、よっぽどのボスモンスターでない限り負けないと考えられるし、何よりボス部屋の後には、一階の入り口近くにワープ出来る魔法陣が設置されているのだから。


「あはは、アンタもちょろっとタイプだね。」

「うー…」


「はぁ。」

「すまん。」


 少し離れた所で指先に火を灯したルクスが唸り、それを指差して笑うルビーナの笑い声が響く。あまりに緊張感の無さにラウジは溜息を溢し、ドガードはそんなパーティーメンバーの痴態に謝るのだった。


 この後ラウジが、ルクスがまだ二レベルでしかないのだからとツッコみを入れ驚愕されるのはこのすぐ後の話である。

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