表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

1

「エバが逃げた?」

金の髪をした男が振り返る。

「まさか、どうやって?」

同じ顔立ちの、しかし先ほどの男よりも柔和な雰囲気の男が言う。

「侵入者がいる。そいつがエバを攫って逃げたようだ」

黒い髪、黒い瞳の男が応える。

「侵入者?だって、エバがいるのはこの塔の最上階ですよ?」

他の三人に比べて小柄な少年が言う。その目は赤く、髪は雪のように真白だった。

「そんなことはどうでもいい。俺たちのするべきことはひとつだ。そうだろうアダム」

猟奇的とさえ言える瞳で金の髪の男が言う。アダムと呼ばれた男は口元に笑みを浮かべると言った。

「ああ。侵入者を殺してエバを連れ戻せ。どんな手段を使っても構わない」


「なんだってきみはあんなところにいたんだい?」

イブが振り返る。侵入者の男はゴーグルを着けて、いくつめかのドアロックを外している最中だった。

「なにか相当酷いことをしでかしたのかな?実は凄腕のハッカーだったりして」

イブは目を見開いて首を振る。

「まあそうだろうね。でももしも合ってるなら、このドアロックを外す手伝いをして欲しかったな。ああイブ動いちゃいけないよ。まだこのドアロックに付いている罠を外せていないからね」

男は笑いながらそう言う。あたりをうろうろしていたイブは、そう言われてすぐに男の後ろに立つ。

「一瞬で黒焦げになるから危ないよ。でもまあ、ほら取れた。行こう」

男はイブをドアへと連れて行こうとする。

そのとき、男は気配に気付いた。そしてイブを抱き寄せ自身も横へと跳ぶ。するとそれまで男が立っていた場所に、小さな、しかし深い穴が空いた。

「さすが、ここに侵入してくるだけのことはありますね」

そう言うと、柔和な顔立ちの男が笑顔で現れた。そしてその後ろから、同じ顔をした男が現れる。

「アベル、本気でやれ」

「すこしだけ遊んでもいいだろう?ここに侵入者だなんて初めてなんだから」

ふたりはイブと男を見つめたまま会話を続ける。

「それもそうだな」

「すぐには殺さない。エバを連れ攫ったこと、後悔させてやる」

「カインは怖いなぁ。まあ、僕も同感だけどね」

そう言うアベルの目は笑ってはいなかった。そしてふたりは銃を構える。

「イブ、さっき開けたドアの向こうに行くんだ」

ふたりから目を逸らすことなく、男はイブに言う。

「心配しなくても、エバに当てるようなことはしませんよ。あなただけを殺します」

アベルが発砲する。それが合図となり男はイブをドアの向こうへと突き飛ばし、転げながらアベルに向けて銃を撃つ。

「紳士だなぁ。でも、僕たちふたりに、ひとりで勝てるとでも思ってるんですか?」

アベルは引き金を引き、何度も男に発砲する。そしてカインは、その弾の雨のなかで、狙いを定めて確実に発砲していく。

しかし男も負けてはいない。それらの弾を避けながら、ふたりに向かって攻撃する。

しかし抵抗は長く続かない。カインの弾が男の頬を掠める。血が男の目に入り、僅かに視界が歪み隙が生まれた。

ふたりはその隙を見逃さない。決定打を打とうとしたそのとき、扉の向こうからイブが現れ、男を庇うように立ちふさがった。

「エバ!?」

動揺したふたりに向かい男は走ると、ポケットからナイフを出してカインに向かって振り下ろした。

カインは辛うじて避けたものの、バランスを崩し倒れる。

男はカインの持つ銃を遠くへ蹴ると、今度はアベルに立ち向かおうとする。しかしそれはかなわなかった。

イブが男とアベルの間に立ちふさがったのだ。

「イブ、どうして」

男はイブを見つめる。イブは悲しそうな、訴えるような顔をして男を見つめる。

アベルが動いた。アベルはナイフを取り出しイブに向かって走り出した。

男がイブを守るように抱き寄せる。アベルのナイフは狙いを失うが、そのナイフはイブの髪を切りとった。

切られたイブの長い髪が地面へと落ちる。アベルとカイン、イブ自身も、それを見つめていた。

男はその隙をついて、ポケットから小さなカプセルを取り出す。そしてそのカプセルを潰すと部屋には煙が立ち込めた。

「いくよイブ」

男はイブの手を引いて、ゴーグルを着けドアの方向に向かって走り出した。

「エバ!」

カインが叫ぶ。

「エバ、僕たちを見捨てないで!エバ!」

アベルが叫ぶ。

イブは振り返り、なにかを言いたげな視線を送ったが、ふたりの目にはうつらなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ