<とりっく小説> くらい女
文中の「くらい」というひらがな表記には「暗い」という漢字を当てはめてお読みください(拝)
あとがきにて「とりっく」の解説してます。
ここは自分の住んでいるアパート。
そこにある家具はどれもいつもと同じ顔をしているのに、妙に現実味がない。
時間の感覚など、とっくに麻痺した。
いったいどれくらいの間、私はここにいるのだろう。
陽の光を拒絶した、狭くて寒い灰色の部屋で。
くらい、ただくらい。
私は時を過ごしていた。
グデュ……ギシッ、ピチャ……ポトン……ゴリッ、ゴキッ……ゴト……。
無気味な音がする。
恐ろしい音だ。
ある意味、快楽。
私は傍にいる男を見つめた。
「山城、さん」
無意識に、その名を呼ぶ。
私は恋をしていた。
その姿を思い浮かべるだけで、今でも胸の奥がじわりと熱くなる。
けれど、彼には家族があった。
叶わぬ恋と思えば思うほどに、胸を焦がす恋の炎は燃えあがっていった。
私はくらい女だ。
若いこと以外、取り柄などない。
知ってか知らずか、彼はそこに付けこんだのだろう。
ただひたすら肉体を貪った。
くらい、くらい、くらい、くらい、くらい……。
「警察だ!」
私がここに来てからずっと沈黙していたドアが勢いよく開かれた。
入って来た警察官たちは、部屋を満たす激しい異臭に一斉に顔を顰める。
ようやく終わる。
残念なようでほっとしたような、不思議な気持ちを味わった。
ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。
とりっくですが、「暗い」を「喰らい」という漢字に変更すると、被害者が加害者に変わります。
……それだけ?
すみません、それだけです(汗)
ひとつの文章にふたつのストーリーというものに挑戦してみたかったのですが……ご期待させてすみませんでした!!