メデゥーサの恋
私はメデゥーサ。目が合った者を石に変える怪物。
私は恋をしてしまった。自分を退治しに来た人間に。
私は数ある石像のうちの一つを頬に手を添えて見つめる。私が恋をした人間。結局彼は私に石に変えられた。彼が私を見つめ返すことはない。それでも私は彼を見つめる。いつの間にかこれが私の日課になっていた。
私はそれ以上のことはしない。する資格がないから。
何故、彼を好きになったか? よくわからない。いわゆる一目惚れというものかもしれない。
私は呟く。
「もし私が普通の人間だったなら……貴方と普通に恋をできたのかしら……」
その時、後ろから声がした。
「悪しき怪物! 俺と戦え!!」
いつもの英雄気取りの人間かしら。いいわ、石にしてあげる。
私は振り向く。
「かかったな!」
「なっ……!」
そこにはぴかぴかに磨かれた盾を構えた屈強な男がいた。盾に反射した自分の目と目が合ってしまう。私はたちまち自分自身の能力で石になってしまった。
私が石になったことで、石に変えられた者達は石化が解け、歓声が響く。
ああ、これが私の最期か……。そう思っていると愛しい彼が私に近づき、頬にそっと手を添えた。彼は私の目を見つめる。
「おい、怪物を殺すから離れろ」
「あ、ああ……」
彼は盾を持った男にそう言われて私から離れる。
これが、私の最期。でも、私は満足よ。だって貴方が優しく触れてくれたから。私を見つめてくれたから。
だから、私は幸せよ。
私の意識は暗闇へ沈んでいった。




