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颯爽  作者: とうこ
7/13

第7話

姫木と佐藤の逃走劇がおかしくて仕方ない佐伯は、それでも2人を労い友哉と共に部屋へと戻る。

軽くBL展開有

 20時30分頃になって、戸叶の携帯が鳴った。

 戸叶は出る前に佐藤だと告げ、電話に出る。

「やっぱ見つかったか、早かったなー」

 今日は友哉のバイトも夕方終わりで、その終わって帰宅直後に佐伯たちが部屋へと入ったからその時点で18時半。そこで話をして、1時間後に部屋を出たのが大体19時40分くらいか。

 そう考えていくと、見つかったのは本当に佐藤が入って15分もしないくらいなんじゃないか。と思うくらい早かった。自分達もまだ事務所についてもいない。

「え?タクシーが拾えない?なんで、そんなのいくらでも」

 逃げ出したとなると、車移動ができないのは危険だ。

 戸叶が運転中ということもあって、佐伯はスマホを受け取り姫木に変わるよう告げる。

「どうした?」

『どうもこうもねえ、とにかく乗り物での移動は無理だ。取り敢えず歌舞伎町まで歩くから迎えに来てくれ。トー横のガキに紛れとくわ』

 歌舞伎町なら高遠の系列がシマ張ってるから安全と言えば安全だが

「いったい何があったんだよ。なんで車移動できねえの」

 それに関して姫木はくればわかるとしか言わなくて、ついでに着替えを持ってこいとも言っている。

 佐伯と戸叶はますます訳がわからなくて、取り敢えずどこかで反転して行ってみることにした。その際に自分達のマンションが近いからと寄って貰い、姫木と佐藤の着替えを持って歌舞伎町まで急いだ。


 トー横で2人をピックアップして、5人は佐伯と姫木のマンションへと向かっていた。

 マンションは渋谷、事務所は目黒。なので、通り過ぎて事務所へ行くことも無いし、通りすがりにおいて行ってもらえば一石二鳥。

 しかしレクサスの中は異様な匂いで、後部座席の友哉は申し訳なさそうな顔をしながらも並んで座っている姫木と佐藤から身体を離し、ドアに懐くように端に寄っていた。

 ナビシートで笑いを堪えている佐伯に

「いつまで笑ってんだよ。着替えたろう。しつこいぞ」

 姫木は後ろから斜め向こうのナビシートを蹴りとばす。

「あんなとこにまさかゴミ集積所があるなんて思わないっすよね…」

 佐藤が切なそうに呟いた。

 ことの顛末はこうだったらしい。

 あの後割とすぐに友哉が置いていったスマホが金子からの着信を知らせてきた。

「まだそんなに経ってないよな」

 姫木もあまりに早い対応に少し動ける体勢を整えた。

「やっぱり、ベッド使ってないの見られてんすよ。2組続けてこんな感じだと、多少疑われるかもですよね」

 佐伯が信じた通り、佐藤はしっかりと姫木にカメラのことは知らせている。

「だからってあそこに寝そべったところで、俺らバレるしな」

「ここから出ないと、すぐにでも金子きますよ」

 今ならまだ玄関を出て非常階段を行ったとしても、見張りの1人くらいならぶっ倒して逃げられる。

「すぐ出よう」

 こう言う決断は早い方がいい。2人は靴を履いて外を伺うこともなく飛び出し、まっすぐ非常階段へと走った。

 非常階段への扉を開けると、案の定見張りが1人上へ向かう階段に座っていたがこいつは姫木の顔も佐藤の顔もわかっていない。

「ちわ~っす」

 住人のふりをして、佐藤が挨拶なんかをしてみたが、興味がなさそうにスマホに目を落とし何かのゲームに再び興じ始めた。

 よし行ける。上がってくる金子と逆に下に行ったらすぐにタクシー捕まえるぞ。と小声で相談し、2人はこの場で走るのも怪しいのでゆっくりと階段を降り始める。

 が、踊り場へ降りた瞬間にーどうしたんすか?ーさっきの見張りが後ろで非常階段のドアを開け部屋の方へ向かって話している声が聞こえた。

「来たな 行くぞ」

 声を合図に再び2人は走り出し、3階から2階まで降りたところで下の踊り場から見上げる見張りと鉢合わせする。多分こいつも俺らの顔はわかっていないはず…と思ってみたが、こいつは佐藤が部屋へ上がるときにロビーにいたやつだった。佐藤の面が割れた。

「居ました!非常階段です!」

 その男は上に向かって大声を出し、その声に呼応して

「クソが!」

 と言う下品な声が帰ってきた。

 姫木は舌打ちをしそのまま階段を走り降りると、高さを利用してその男の顎下を思い切り蹴り上げた。男は吹っ飛び踊り場の壁に上半身ごと叩きつけられたがそれでも姫木は容赦なく階段から飛び降り、踊り場で喉元と後頭部を押さえ苦しそうにしている男の体を襟首を掴んで引き摺りあげ、もう一発左顎脇に右フック。男は力なくその場に崩れ落ちた。

「行くぞ!」

 その間数秒の出来事に目を奪われ、『やっぱ強えわ』と言う感慨は持たせてもらえぬまま走り出した佐藤の足に、もう失神していると思われた男が本能なのかしがみついてきた。

「うわっ」

 と佐藤は咄嗟に踊り場の手すりにしがみついたが、意識がないのか訳のわからない動きの男は足を抱えたまま立ちあがろうとしている。

 姫木が気づいてもう一発蹴りをと思い近づこうとした矢先に、

「うわわわっ」

 佐藤の体が男に放り投げられ踊り場の向こうへ落ちていった。

「佐藤!」

 手すりから外を覗くと、何かふわふわしたものの上に落ちたようで親指を立ててー平気っす!と声をあげる。まあ、落ちたといっても中二階だし、余程でなければ大怪我にはならない高さだ。姫木はゾンビ化した男の急所を踵で踏みつけてから、佐藤が落ちた所をもう一度見てみた。ちょうどマンションのフェンスの外側に位置していて、そこに落ちればそのまま脱出路も確保できそうだ。

 上から金子の声もしてきて、時間もない 姫木はそこをルートに決め、佐藤に続いて踊り場から飛び降りた。飛んだ瞬間に、佐藤の

「うわっなんだこれ!くさっくっさっ」

 という声が響いたがもう遅かった。

 そこはご近所の焼肉屋専用の生ゴミ置き場で、きちんと袋に詰めて捨ててあったのだが佐藤が落ちてきた衝動で散乱し、卵の殻や発酵した野菜くず、何よりも悪い意味で熟成した生肉の塊が佐藤にまとわりついており、姫木もその中に落ちていったのだった。


「その後も、奴らの声がマンション中に聞こえてて、俺らはそこに10分くらい身を隠してなきゃなんなかったんだよ」

 姫木が不貞腐れ気味に足をトントンさせながら、タバコよこせと佐伯に手を伸ばす。

 腹筋がつりそうなほど笑っている佐伯は、

「お、おつかれさん」

 笑い涙を拭きながら、姫木へタバコの箱を投げてやった。

 佐藤1人のことなら戸叶も爆笑する所だが、姫木もとなると笑ってはいけないと必死で堪えている。

 友哉に関しては匂いでやられているが、内容が内容だけに匂いカバーの手を口元にもずらし、込み上げる笑いを堪えていた。

「俺を担いだ男怖かったすね」

 と言う佐藤に姫木もーあいつなぁーと思いおこして身震いした。

「打ちどころってやつが悪かったんすかねえ」

 確かに最初の蹴りで、壁に後頭部を強か打ち付けてた気がする。

「あんなゾンビ確保してて、黒狼会恐るべし」

 ー馬鹿言ってんなー

 佐藤の言葉に佐伯は笑って受け流す。

「まあ、ともかく無事でよかった」

 姫木と佐藤に身体を向けて

「ほんとお疲れ」

 と労った。

 マンションへ着くと、戸叶と佐藤は明日にでも車をクリーニングに出すと言って帰っていく。

 その際友哉も預かると言ってくれたが、これ以上出歩かさない方がいいと言う判断で佐伯と姫木のマンションで預かることにした。


 帰ってすぐに風呂を準備し、その間に宅配で食事や飲み物を調達して腹ごしらえをした。考えてみたら、22時を回っている現在までずっと何も食べていなかった。

「やっと一段落だな」

 缶ビールを煽って佐伯はラグの上に仰向けに寝転んだ。

 姫木は1人ならそうそう匂わないことに気付き、風呂を先にしたかったが腹も減っているのでアンダーウエア一枚で食事をし、そして数分前に丁度知らせが入った風呂に向かった。

 2人の部屋は2LDKで、各々で一つずつ部屋を使っている。

 リビングは簡素で、テレビとそれが乗っているテレビ台、それと今食事をしたローテーブルが硬いラグの上に置いてあり、壁際に長めのソファが2つ並んでいるだけだった。

 LDなのでそこそこ広いのだが、あまりの簡素さに落ち着かない。

「なにもねえだろ」

 佐伯がキョロキョロしている友哉に笑う。

「どうせ寝に帰るだけの部屋なんでな」

 実際は、自分たちの命はいつ何時どこで消えるかなんて確証が無いからなのだが、そこまで友哉に伝える必要は無かった。

「疲れてないか?」

 ペットボトルのコーラを飲んでぼんやりしている友哉に問う。

「今日は、バイトだけだったんでそんなには。ただ、あそこから抜けられて気持ちが楽になって、なんかほっとしてる、かな」

 やったことは褒められ事では無かったが、友哉は友哉で1人で戦ってたんだよなと佐伯も思いなおした。 きっと親父さんの面子のことも考えたんだろう

「さっき聴いてただろうけど、榊さんに連絡したから。明日の13時に俺らの事務所に来るって言ってた。ちゃんと言えるか?ウリのことは言わなくてもいいから、あとのことは正直にな」

「うん…ありがとう」 

 友哉がどんな気持ちでいるのかは佐伯には判らないが、榊さんの気持ちも深く汲んでほしいと思う。

 「眠くなったら、姫木の部屋…あっちな、で寝ていいから。そっちの方が綺麗だし」

 タハっと笑って左のドアを指差した。

 そんな話をしている間に、思いのほか早く姫木は戻った。

「湯、入れ替えたから友哉…君、入んな」

 友哉がずっと思ってきたことなのだが、この2人が友哉「君」と言うのが言いづらそうなのである。

「あの…その前に、俺呼ぶ時呼び捨ててくれていいんで」

「いや、しかし友哉君は俺らの大先輩の…」

「わかった、じゃあ友哉。風呂入ってこい」

 一応形として一言さあ、と傍でごちゃごちゃいう佐伯を押し退けて、タオルは脱衣所のとか話し始める姫木にもう一度友哉は

「風呂は、2人が来る前にシャワー浴びたんで。俺は今日は…」

 そう言えば、部屋に入った時バスローブ着てたな…と思い起こし、ちょっと複雑な空気が流れる。

「じゃあ、俺が入ってくるな。友哉…は好きにしてな」

 佐伯がじゃあね、と言ったような感じで浴室へ向かい、姫木は冷蔵庫から2つ缶ビールを持ち出して。一本を友哉に渡した。

「よかったな、脱出できて」

 音を立てて缶を開け、そう言って少し掲げて姫木はビールを口にする。

 友哉も、お祝いめいたその行為に反してはいけないとビールを開け、ゴクゴクと喉を鳴らした。


「あー気持ちよかった」

 毎日バックに流している佐伯の髪が、タオルに煽られてバサバサと踊っている。

「少し伸びたな」

 テーブルの前でビールを飲みながら、見るとはなしにテレビを見ながら姫木は言う。

「そう言う言葉はこっちみてから言えっての。で、友哉は?」

 友哉の姿が見えなくて、姫木の部屋を親指で指し寝たのか?と無音で聞く。

「缶ビール半分で酔っ払ってた」

 友哉がいた場所の缶を振って見せて、姫木が笑う。

「まじか。居酒屋でバイトしてるって言ってたよな」

 佐伯も冷蔵庫から冷えたビールを持ち出して姫木の隣に座った。

 居酒屋ではお客からは頂かないか。缶を開けて姫木の缶に当てて、佐伯は一気に半分ほど飲みあげた。

 姫木は黙って、芸人が騒いで料理を作っているテレビを見つめている。

「お前も伸びたな、髪」

 タオルドライやドライヤーをしなくても、姫木の髪はそれなりに落ち着く性質をしている。特に洒落た髪型ではないが、本人によく似合っている髪型ではあった。その髪を乾かす目的なのか、湯上がりはいつもフード付きの服を着込みフードを被って過ごすのが常だ。

 前髪をつまんでみると、鬱陶しそうに手を払われる。

 佐伯は面白がって、今度はフードを外して後ろ髪を伸ばしてみた。

「やっぱ伸びたよな。この件が片付いたらけーすけのとこ行こうか」

 旧友の美容師の名前を言いながら、髪を触っていたはずの手はうなじを撫で、頬を撫で。

「何してんだ」

「ん~?汚れ残ってないかなって」

 指が髪をたくし上げ、耳たぶを撫でる頃に

「お前いい加減しつこい…」

 と怒りモードに入りかけた姫木の頬へ手を当て唇を重ねる。

 そのまま佐伯は首筋などの香りを嗅ぎ鼻をクンクンと鳴らす。

「匂いまでチェックしなくていい…隣に客いるんだから自重しろな」

 姫木がそう言って体を離そうとすると、佐伯がニヤッと笑って

「なんだよ姫木。何考えてんだ?」

 お前な…と諦めたような姫木の声に、賛同の色を感じて佐伯はそのまま姫木を押し倒した。

 ここ暫くご無沙汰してるからなぁ、と首筋にキスをして服の下から手を入れ肌に触れる。

「ここで…か?」

 四国あたりで作られたイタリア製のラグは織が固くて、以前もここでしたときに佐伯の膝がえらいことになったことがあった。

「俺の部屋行ったらそれこそお隣で…ってなっちまうしな。俺は別に友哉のベッドの下でやったっていいけど」

 耳をかみながら言う佐伯をー馬鹿言うなーと引き剥がし、本格的に唇を合わせ両腕を佐伯へと回していった。


 姫木の上で今まで激しかった佐伯の動きが止まる。

 佐伯を受け止めた姫木も、出せない声に焦れて佐伯の腕を強く握りそれから深く息を吐いた。

「なあ…」

 上から覗くように姫木に身を入れたままの佐伯が、乱れた息の中呼ぶ。

「…ん…?」

 返事か吐息かわからない声をあげた姫木は、動きが止まった間にうっすらと目を開けた。

「明日、榊さんどうなるかな」

 売春(うり)の事は言わないにしても、友哉が黒狼会の賭場で借金を作ったことは報告しなければならない。

「うりはともかく、どんな形にしろ、借金は正当なものだからな」

 佐伯の微妙な振動に眉をひそめながら、息を吐くような声で姫木はそう言う。佐伯は姫木の中で既に力を戻していた。

「だよな…やっぱ踏み倒せねえもんなこればっかは…」

 こんな時になんでこんな話を…と姫木は疑問だった。佐伯は姫木を腕に抱きながら、とある一つの覚悟をしなきゃかなと、漠然と思っていたのだ。それは歴戦の佐伯でもかなりの気力がいることで…。

「まあいっか、こんな話は明日いくらでも出来るし」

 そう言って姫木へ唇を重ね、力の戻っている自身を奥へと突き立てた。

 姫木の唇から思わず声が漏れたがそれは佐伯の唇によりかき消され、ずっと受け入れていた箇所は最初に佐伯が出したもので滑らかな抽送を許し、聴覚的に煽るような音を立てて姫木を感覚的にも攻め立てる。

 再び襲う激しい動きに、声を出せないまま姫木は佐伯にしがみつき全身で受け入れる準備をした。


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