少女の覚悟
部屋の中で、銀庭と惣領の話を聞いていた。やはり思った通り、下の者の気持ちを汲む気概は十二分にある。あり過ぎていると言ってもいい。優しい惣領。だからこそ、血脇踊る戦場なんて出させる訳には行かない。そんなものは無骨者にでも投げて置けばいい。
不意に扉が空いた。現れたのは今度こそうら若き女人。儀式後にすぐ部屋に戻ったせいか、巫女装束のまま。どうやら霊圧の変化を調節するのを怠ったせいで、気配が漏れ出てしまったらしい。俺は引きつった顔のまま、少しずつ距離を置く。
「やぁ、宵闇。さっきは申し訳ない」
「.......」
それはこちらの方だろう。差し出された手も握らず、お前に不愉快を与えてしまった。事情を説明しようと口を開きかけた時、彼女は俺の隣にちょんまりと腰掛けた。どうやら話をするつもりのようだ。
「うちは男系だと重々承知しているよ。お前が顔を強ばらせるのも無理はない。寧ろ当然の事だ。でも、姿や口調を男に近づける事は出来るんだ」
そう言って惣領は笑った。それは神降ろしをした時に見せた心からの微笑みではなく、自虐的な微笑みだった。俺は小さく溜息を着くと、女人の顔を真っ直ぐに見た。少しだけ口を開くと、俺の言葉を待つかのように、彼女も見詰め返していた。
「俺にとって、女人とは部屋の奥で大切にされるものだ。間違っても危険極まりない戦場に放り出す訳にはいかない」
「宵闇は優しいんだな」
漸く序章の転まで来ましたー!!
あと少しで序章が終わります。
序章は宵闇のお話です。