表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四季神  作者: 秋暁秋季
31/35

四季神

銀庭の気配が去った事を確認し、僕は君に垂れながら過去を思い出していた。僕の体を支えてくれているのは、太い枝。成人男性くらい平気で抱えられる。僕はそんな君を労うように、そっと枝に触れた。

「覚えてるかい? 君が枝を落とした日」

勿論でございます。そう言うように、枝が上下に揺れた。

「彼奴さ、君の枝を枯らさない為に式神にしたんだよ。春を呼ぶ、桜の精。それが四季神の始まり。時節家代々に続く、四季の擬き」

僕は君に言い聞かせるように、静かに語りかける。君は嬉しげに枝を揺らし、花弁を降らせる。相も変わらず綺麗だなと思う。

銀庭が神の座を降りた。それは神無月に出雲の国で語らうことは無くなるということ。神というのは、人に崇められて権威を増す。人に媚びへつらって仕えるなんて以ての外だ。だから彼奴は金という色を剥奪されて銀の色を冠している。

そんな彼を君は哀れんで、自らの一部である桜の枝を落としたのだ。僕にだって、そこまで身を切ったことなんかないくせに。

「最初は君が落とし、僕が餞別として渡した僕ら桜の枝。それが元に春暁が生まれた。次に焼け付く夏を表す明昼。物静かで寂しい秋を示す薄暮。そして凍てつく永夜の冬、宵闇」

一神じゃ、寂しいとか考えたのかもしれない。枯らすなよ。大切にしろよ。と会う度に言っていた気がするから。ただご本家四神と色合いが異なる者が多いのは、銀庭自身、色を奪われた身だからかもしれない。もう、正式な色さえ与えられないのかも知れない。

そんな過去に思いを馳せると、君は慰めるように、花弁を一つ振らせてきた。彼奴が勝手に決めたことだ。だから何も止めはしない。ただ最後に見せた哀れむような目が気に入らないだけ。

「ん.......。なんだか眠くなって来たよ。もう誰も寄せ付けないように、君の枝垂れで隠しておくれ」

――最初の贄である私が、その願いを叶えます。

タイトル回収兼白無垢の初恋伏線回収。

(気になった方は、枝垂れ桜の餞別を御覧下さい)

本人自身が色を歪められている。だから正当な色を与えられない。と言うところを見て、絶句しました。

枯らさない約束を絶対に守る銀庭が好きです。

最後のお声は今度は紛うことなきあの子。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ