大切な子
さて、場所は変わり、此処は桜華殿の神域である。相も変わらず一年中桜が舞散り、空間全体で春を表現している。私は彼の気に入りの枝垂れ桜の根元に立つと、下から声をかける。
「感謝する。桜華殿」
「なんの事?」
声をかけても降りて来るつもりは内容で、上から声を降らす。どうにも眠りを妨げられて不機嫌なようだ。何時もより声が低い。もう少しだけ付き合ってくれ。
「色季を認めてくれて」
「認めてないよ。あんな子。『本家神だろうと許さないからな』って何様のつもり?」
どうやら胸倉を掴まれたことを根に持っているらしい。背筋を逸らしてそっぽを向く。一度機嫌を悪くすると、彼は表情よりも態度で示すのだ。昔から変わっていない。
「それに、僕の力が無くても顕現させた奴居るし」
「前当主か」
「そ。あれぐらいじゃないと、当主に相応しくない。また強くなって戻って来いよ。弱い奴に興味ないんだ」
春に吹き荒ぶ風のように、奔放な言葉を放つ。彼なりの愛情表現か。声には愉悦が含まれている。霊力のある者が好き。強くて霊力があればもっと良い。気に入らない奴にちょっかいかける程暇じゃない。色季もそれなりに気に入られているらしい。
「それと春暁は僕の大切な眷属でもある。雑に扱ったら末の代まで祟るから。そのこと、色季に言い聞かせといてよね」
それだけ言うと、さっさと去れと言うように、手を払い除けた。
これぐらいの仲。決して険悪じゃありません。
白無垢見返して見ると、桜華の気まぐれがどれだけヤバいか分かります。
お父さん、自力で呼べたのは訳がある。なんでもきっかけは必要です。




