拒絶
自室に戻り、緑茶を啜ると緊張が一気に解けるような気がした。ちゃぶ台に置いてある饅頭を口に詰め込むと、落ち込んだ心が少しだけ回復する。
「気にする事はない。君が誰よりも努力し、励んでいることは私が良く知っている。もっと誇りを持て」
私を慰めてくれるのは式神の銀庭だ。名の通り銀に近い髪を纏め上げ、鋭い眼光を放つ堅気じゃない雰囲気の男性。はっきり言うと、主人である私よりも威厳も貫録もある。しかし性格は至って穏やかで優しい。私にとっては叔父のような関係だ。
時節家は代々式を扱う風習があり、当主になるには私が今従えてる に認められなくてはならない。そして前当主から次期当主に引き継がれるとき、銀庭以外の式は全員契約が解除され、また新たに契約を結び直す必要がある。式は主と認めた者にしか尽力しないので、当然と言えば当然であるが。
現在、仕えている式、約一名。先程呼び出した式の宵闇には、握手どころか主が女であるというだけで嫌がられてしまった。前途多難である。
「だけど『主が女で嘗められそう?』って聞いたら凄く困惑してた」
「それはするだろうさ。初対面の相手に言う台詞じゃない。それに言葉を待ってやることも大切だ」
穏やかに、諭すように言われた。眼は慈悲に溢れていた。だから納得もする。私は恐らく焦っているのだ。代々の主君に恥じない働きをしようと。
私は銀庭から目を逸らすと、バレないように溜息を着いた。
「私の声に応え、呼ばれた者達に、屈辱を与えることはしたくない」
別の視点から見てみると、彼は全く違うことを考えてることが分かります。
俗に言う、コミュ障ってやつです。
もっと喋れ、宵闇。




