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僕と惣領を一瞥し、僕らを見ながら遠い目をした。此方を見ているようで、全然違う世界を見ている。それからそっと惣領の髪に触れた。乱雑な明昼らしくない、割れ物に触るような手つきだった。
「悪くないね。愛いもの見ながら飲む酒も」
「そんなんだから、宵闇に警戒されるんだよ」
「んー?」
「とって食われそう」
「自覚無いなぁ」
むくれた顔をする僕に明昼はいつものように朗らかに返した。明昼も惣領に負けないくらいの人垂らしだ。そうして数分間、明昼と惣領の寝顔を見ながらお茶を飲んでいると、惣領の眉間に皺が寄った。即座に彼女と同調し、夢の内容を見る。どうやらご本家の神様と話をしているようだ。
「怖い夢、見てるみたいだよ。でも必死に戦ってる。相手はご本家の神様かな」
「逃げた?」
明昼は酒を飲みながら冷徹な眼差しを寄越した。此処でも惣領としての器を推し量っている。何処までも、何処までも、自分の主人を見ているし、多少の試練ぐらいじゃ助けてやらない。少しの試練は人を成長させるとでも言うように。そんな彼女に、僕は安心しさせるように返した。
「まさか。ちゃんと食って掛かってる。銀庭の名前さえ呼ばない」
「それでこそ、あたしが認める主だよ。薄暮助けてやんな」
「言われなくとも」
僕は夢の中に意識を飛ばし、そっと本家神の幻影を払ってやった。せめて、せめて夢だけは甘いものを。もう少しで、君の最大の天敵と会うことになるだろうから。
次回、桜華出ます。
可愛いものを全力でからかいに行くスタイルで来ます。
色季は可哀想ですが、乗り越えられるでしょう。




