薄暮
「君が今代の惣領?」
神降ろし、成功。大広間の中心に小柄なおかっぱ髪の男児が現れた。一見すると小学生に見える。しかし聡明な目や、醸し出される空気が私よりもずっと年上であることを物語っていた。そんな彼に上から声をかけるのは失礼だろう。だから私は彼の目線に合わせて膝を着いた。
「あぁ。私が君の主となる。色季だ。宜しく」
手を差し出す。現れた式の方も笑顔を浮かべた。そして小さな両手で私の物をそっと包み込む。
「僕は薄暮。宜しくね。宵闇と明昼は先に来てるんだ」
握手を交わした後、彼は周りをぐるりと見回した。二人とも気配を押し殺しているが、同列の式である薄暮は分かるらしい。それから小さな頭部を僅かに傾けて、問いかけた。
「二人の契約は完了した?」
「いや、まだこれからで.......」
お恥ずかしい事に、宵闇との最初の契約の儀は失敗。明昼は認めているけど、儀式を行うのはまだ早いと言われている。だから私の正式な式は銀庭のみだ。前途.......多難。
「じゃあ僕が四神の中で最初になる訳だ」
「え」
彼は手を握ったまま、淑やかな笑みを浮かべた。その途端、蝋燭の炎が燃え上がる。宵闇の時と同じ。力を与えられた炎が歓喜し、踊り狂う。彼は一度笑顔を消すと、神妙な表情で掌に力を込める。すると、眩い光の鎖が私と薄暮に絡みついた。霊力が流れ込む。彼の、薄暮の力が手を通じて流れてくる。
束の間の出来事。一瞬にして膨張した光が砕け散り、後に残る熱を噛み締めていた。手の甲には銀庭以外の点。
「“惣領”、僕を上手く使ってね」
彼は手を離すと、得意げに微笑んだ。対して私は呆然と返す。宵闇にも明昼にも認められていない。だから今回もそんな簡単に行くはず無いと思っていた。しかし薄暮は満足そうな顔をしている。
「.......そんな簡単に認めて良いの.......」
「少なくとも、僕の基準は満たしたよ」
相棒にしたいのは?
と言われたらこの子。あと最後に出てくる式神。
毎日面倒見てもらいたいし、甘やかしたいです。
怒られそうだけど。




