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ケラケラと笑いながら、私の頭をぐしゃぐしゃと掻き回す。登場時から何一つ変わらない、この明るい空気。此処まで来ると傍若無人かも知れない。
「はー.......もう少し丸くなってくれ」
「んー。ヤダ」
銀庭が溜息を着いて背を逸らす。それを否定して、にやっと笑った。悪巧みの微笑み。そして次の瞬間、目に冷徹な光が宿った。変化が及んでからは本当に一瞬だった。目にも止まらぬ速さで顎を掴む。今回はちぃと遅かったな。と明昼は言った。宵闇がまたも彼女の腕を鷲掴みにしていた。
「あたしを従えたいなら、それなりの気概を見せな」
出来るだろ? お前なら。としたり顔が言っていた。霊圧の上昇を感知。今までの気圧が全て嘘のように膨張する。圧倒的火力を瞳を通じて流し込んで来る。眼が..............熱い.......。溶けてしまいそう。でも、過去に会った桜華程じゃない。まだ全然手加減してくれてる。だから私は明昼を真っ直ぐ見つめる。
「良いねぇ。好きだよ。その目」
「おい、明昼。これ以上は目に余る」
宵闇の霊圧も明昼に負けないくらい膨張する。それを見て、彼女はまたも軽蔑の眼差しを向ける。二人の睨み合いは、見ている側からしたら永遠のように感じられた。
「あんたってなんでそんな無粋なのさ」
先に折れたのは、いや気が変わったのは明昼の方だった。不愉快な感情を思い切り顔に出しながら、そっと顎から手を離す。
「あーあ。興醒め。先抜けるわ」
方向性の違いって奴です。性格の相性ってよりも。
明昼の場合、優等生かぽやんとした子じゃないと合わせてられないんじゃないかなぁ。
火に油を注ぐような真似したら止まらないし、そしたら彼女の努力も無駄になるし。




