2輪目 坂本かずき
花が咲いたら伝わるかも
花が咲いたら喋れるかも
花が咲いたら
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中学1年。夏。坂本かずき。
「はぁーーーーーーーーーー!!!」
曇り空のした、屋上で肺に目一杯酸素を溜め込んで吐く。
すぅ…
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!!!!!!!!!」
………。
「くそぉ…」
何も怒らないことに小さくぼやいて校舎へ戻る。
教室の前で止まる。
教室からは賑やかな声がきこえる。
ガラッ…
俺が扉を開けると静かになる。
そのまま入り口から2列目、後ろから2番目の席につく。
やることもない。友達もいない。一人でケータイを触りチャイムが鳴るまで暇をつぶす。
静まり返った教室でヒソヒソ話し声が聞こえる。
「坂本くんの目つき怖いよね…」
生まれつきです。
「てか目が血走ってない?」
ドライアイです。
「威圧感やばいのね…」
困って固まってるだけです。
「目の下の傷が怖い」
ねこのミーコにひっかかれた傷です。
クラスの連中は俺のことを遠巻きに見てる。
俺は…俺は友達がほしいのにっ!!!
入学式から緊張しすぎて過ごした数日。
何故か俺がヤンキーの類だと思われてる。
そんなことない…俺は緊張症なだけなんだっ!!!
しかし目を合わせると緊張する。
威圧感に感じるこの傷と父親譲りのツリ目、母親の遺伝ドライアイを兼ね備えた俺に誰も話かけてこない。
俺から話しかけようと努力もした…したのに…
『え!?坂本…くん!?俺何かした!?』
『え?!えっえっ!?ごめんなさ……う〜!!!』
なんて反応をされては話しかけれもしない。
黙って過ごす、休み時間にはいなくなる。
そんなふうに過ごして2ヶ月。
クラスだけでなく学年で1番やばいやつになってしまった。
授業は真面目に受けてるのに…
けど、花が咲けばみんな俺のことをわかってくれるかもしれない!
数日前の社会の授業。
社会の先生の話はとても眠くなる。
「…得てして我々人間は自分の肺からみえない種子を飛ばし、感情を花として咲かせます。」
そんな常識的な事小学生でも知ってる。
思春期をすぎると花が咲いて心の内が丸見えになる。
大体が中学2年過ぎてから咲かせる。
「えー…基本的には14歳、中学2年生から咲き始めると言われておりますが最近では早熟な中学生未満の子供も発芽させてるそうです。」
……は?
「君たちも発芽させたら花はきちんと処理すること。」
授業終了のチャイムが鳴る。
「今日はこれまで。」
先生が教室から出ていってからも俺の頭は花が咲いたら…ってことばかり考えてしまう。
基本的に花は中学2年。14歳を過ぎてからじゃないと咲かない。はずなのに、、
もしかしたら、俺も花を咲かせられるのかも、
花が咲いたら!
『坂本かずき』は怖い人間ではないと伝わるかもしれない!
口下手緊張症の俺はその授業をきっかけに屋上で花を咲かせる練習を始めた。
ため息
「はぁ。」
大袈裟なため息
「はぁ〜」
腹式呼吸
「ひっひっふー!」
呼吸の仕方で花は咲かない。
別の日
「はぁぁぁぁーーーーー!!!!!」
咲かない
「ふっふっふっふっふっーーーーーーーー!!!」
咲かない。
今日もだめだと屋上から降りるときに先生に見つかって精神的に大丈夫かと心配された。
『花が咲かないか実験です』っと済ませた。
怪しそうに見ていたけどなんとかやりすごした。
自宅の風呂
「ふぅーーーーーーーーーー!!!!!」
「はっはっ!はぁーーーー!!!!!!!!!」
「かずきっ!しずかにしなさいっ!!!」
母さんに怒られた。
部屋で
「はぁー。はぁ!はぁ?はぁーはっ!!!」
視線感じて目をそらす。
「……あんた、どうしたの?」
母が心配そうにこちらを見てる。
家じゃだめだな……。
学校の休み時間、また屋上へ行く
「うーーーーーーーーー!!!!!」
咲かない
「わぁーーーー!!!」
咲かない。
「ともだちぃーーーーーーーーー!!!」
咲かない。
別の日
「ふうー!」
咲かない
「はぁぁぁぁーー!!!」
咲かない
「はなしあいてぇーーーーーーーー!!!!!」
咲かない
また別の日
「はぁーーーーーーーーーーいーーー!!!!!」
咲かない
「ふっふっふっー!!!」
咲かない
「あーーーーーーー!!!」
咲かない
友達がほしい!友達がほしい!友達がほしいっ!!!
だけど花は咲かない。
「友達が…ほしいんだよ……」
ポツリとため息混じりに呟いた。
何も咲かない何も起きない。
ここまでやってるのに、2ヶ月と少し…
まったくだめだった。
やっぱり14歳を過ぎなきゃだめなのか、
過ぎたら咲くかもしれない。
だけど14歳になってすぐに咲かないかもしれない。
俺は花が咲かないのかもしれない。
そう思いながら教室へ戻る。
賑やかな声がする教室。
俺が扉を開けたらここも静かになる。
俺は…いないほうが……
「じゃあさ!坂本くんがきたらみんなで言おうぜっ!」
教室から声が聞こえてきた。
俺の話?
「おはよーって挨拶違くない?」
「あっ、昼だしね。」
「じゃあさ!またあした?」
「早く帰ってほしいみたいじゃない!」
「あっ!こっちおいでは?」
クラスのみんなが俺の話をしてる。
「ご趣味は?」
「好物は?」
「好きなタイプは〜???」
バーカなんてみんなで話してた。
どうすれば俺と話ができるかなんてはなしてる。
どうして…いま?
いたたまれない気持ちになって扉を勢いよく開けた
「「「「あっ。」」」」
「どうして…みんな、」
不安そうに聞いてしまった。
「や、ごめん。先生から坂本くんの奇行についてきいちゃって…」
「私達…気になって屋上の扉の前にいったことあって…」
は?
「坂本くんが『お友達』とか『話し相手』とか叫んでるのをきいちゃって…」
え?
「だから俺達、坂本くんってものすごい…口下手なのかなって…」
そう言われてどんどん顔が熱くなるのを感じた。
「あっ、照れてる。」
誰かがそう言ってもっと赤くなる。
はずかしくてしゃがみこんだ。
「ごめん、もしかしておこった?」
そう言われて素直に答える。
「…照れて、います。」
ぽかんとした空気の中、
1人が笑いだした。
そしたらみんな笑いだして、
俺も笑ってしまった。
そのうちの一人がしゃがみこむ俺に
「坂本くんのこと、おしえてよ」
て聞いてくれた。
涙声で言った。
「もちろんっ!」
答えた瞬間【フリージア】が咲いた
フリージア
【友情・感謝】
途中保存の方法がわからず何度も編集をしています。
お手数おかけしております。