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08 マナの中心


「おい!コペル!どこ行った!」

学校に向かっている中、そんな怒号が町中に響いていた。

マータンの声だ。


きっと先生にチクられた事を怒っているのだろう。


まさかこんな朝早くからあいつと会えるなんて思ってもいなかったわ。


「おいコペルどこいるんだテメェ!」


そんな怒号がまた聞こえてくる。


「まだ門の潜ってないっつーの」


「コペル呼んでるわよ。早く行ってあげないと可哀想よ」


あくびをしながらエネムがそう言った。


「お前まだいるのかよ。てかお前も睡眠とかとるのか?」


「睡眠ぐらいするわよ。馬鹿にしてるの?」


「まぁ、睡眠ぐらいするか」


そんな会話をしていたら、前から男が二人やってきた。


「おいコペル…よくも先生にちくってくれたな」


マータンと、もう一人の取り巻きだ。


「ちくったの俺じゃねぇし、だから躾けてないと噛まれるって言ったんだろうがよ。学習しろ。脳みそ溶けてるのか?」


「お前おちょくるのもいい加減にしろよ」


そういうとマータンは背中に背負っていた大きな大剣を取り出した。


「へへ、お前に恨みを返すために父さんが冒険者をしていた頃の武器をこっそり持って来てやった。恐ろしいだろ?早く泣いて謝れよ」


なんだこいつマジで俺のこと殺す気じゃん。馬鹿の相手は困る。


後ろにいる男も流石にまずいだろって顔をしている。


そう思うなら止めろって俺は思うが…


「お前の方が何て謝れよ。てかここ通学路だぞ、周りを見てみろ」


あたりを見渡すと学生たちが俺たちのことを遠巻きに見ていた。


「関係ないね。俺は今お前を殺したい気持ちでいっぱいなんだよ」


はぁ…仕方ない。


「じゃあ俺も手加減してやれないな」


「え?コペル戦えるの?そうは見えないんですけど!」


そんなこと言いながらエネムが笑っている。

もちろん俺も戦えるなんて思っていないさ。でも、勝つことはできる。


「お前、だいぶ色々やってるらしいな?」


嫌味ったらしい顔を作り、マータンにそう言った。


「な、なんのことだよ」


「お前のわんちゃんが昨日わんわん吠えてたから色々聞こえてきたんだよ。ご主人様のペニスの味から色々なやましい事まで」


そういう時マータンの顔がひきつった。

ビンゴだ。やっぱり色々悪いことしてるんだな。


「おい!あいつ何を喋った!?」


「ここで喋っていいのか?」


そう言うとマータンはあたりをキョロキョロと見た。


「まぁ、言われたくなければ解毒剤寄越せよ」


そういうとマータンは歯軋りを始めた。


そしてあっさりと薬の入ったビンを渡してきた。


どれどれ本物かな?


そう思い【探索】のスキルを発動した。


…大丈夫そうだ。


「じゃあ、俺これをユンにあげなきゃいけないからもう帰るね。マータンくん」


そう言ってくるりと周りユンの家に行こうとした時だった。


「コペル!危ないわ!」


そう言われ後ろを見ると剣を振り上げている血管剥き出しなマータンがいた。


「やべ!」


とっさに声には出たが体は動かなかった。


死ぬ!!


そう思い目を閉じた。


そして数秒間。



無音が続いた。すべてが凍ったかのようになんの音も聞こえなかった。


死んだのかと思い目を開けた。


そして俺は目の前の情景に驚いた。俺以外の全てがゆっくりに見えていたのだ。

マータンの動き、周りの人の動き、その全てがゆっくりと進んでいた。


そしてマナの流れが鮮明に見えていた。


俺はその流れに沿って手を伸ばし、流れの中心、マータンのへそのあたりを掴み上げた。そしてその中心を引き抜いた.



すると時間の流れが戻り、マータンの動きが止まり、その場に倒れた。


ふぅ…なんとか生き残った…にしても人にもマナの中心がありそれをとると倒れるらしい。


そう思っているとエネムが驚いた顔をしていた。


「コペル!その目龍の瞳じゃない!私によこしなさいよ!」


急にそんな事を言ってきた。


「バカ!嫌に決まってるじゃないか!それよりこいつのマナの中心を奪っちゃったんだが、こいつどうなるんだ?」


「それは…あれよ。マナの中心はスキルとその人の経験の塊だから、その人スキルがなくなるわね。可哀想に…それよりいつそんなものを手にしたのよ!私だってーーー」


それ以降のエネムの言葉は聞かないことにした。


てことはこれはマータンの経験値のようなものなのか…


手の中にある光の糸の塊のような物を見てそう思った。


「これどうすればいい?戻す以外に何かないか?」


「じゃあ、龍の瞳はいいから、それを私によこしなさい」


「お前にか?お前それで実体を得れるとかそんな感じか?」


「そうよ!それに私の力にもなるしね」


いやいやならこいつには渡しちゃいけないだろ。こいつ実体ができたら世界吹き飛ばしかねないぞ。てか過去では吹き飛ばしていたし。


「…一旦保留で」


そういい、その塊をポケットにしまおうとした時だった。


体にすっと溶けて行った。


「あれ?、消えちゃったんだが?」


「あー…自分が吸収しちゃった…欲しかったのに!」


そんな事を言いながらエネムは手をガンガン振っている。相当キレてるな。


てか、俺は人のマナの塊なんて体に取り込んで大丈夫だったのか?


今のところは大丈夫そうだが…


前を見るとマータンの取り巻きの男がこちらを不審そうに見ていた。


「おい、なんだその目は。飼い主同様お前も立たない体にしてやろうか?」


「ひぃぃ!」


そういうと男はマータンの事など目に求めずに走ってどっかに逃げて行ってしまった。


まぁ、薄い友情なんてそんなもんだよな。こいつらの場合友情でもないが。


そんな事を思いながら、野次馬共を見渡すと、そいつらも不審そうにこちらを見ていた。


「あれ?俺何かしたか?…あ!」


エネム、こいつだ。こいつは誰にも見えていないんだからこいつに喋りかけてるのを見て不審そうに見てるんだ。


「ん?私の惚れた?」


バカ言え!とりあえずここを離れなければ、てか、薬届けなきゃ。そう思いユンの家へと向かった。



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