07 知らない過去
気がつけば綺麗な草原の真ん中でポツンと立っていた。
俺なんでここに立ってるんだ?
そう思い体を動かそうとするが体どころか目線すらも動かせなかった。
(あ、そっか今はエネムの中にいるのか…)
自分が何をしたかなんとなく思い出した。俺はエネムの過去を見ているんだ。
ふと頬が冷たく感じた。
(エネム泣いているのか?)
するとエネムは何かを唱え始めた。
自分で発音しているはずなのに早すぎて頭が追いつかない。
そして唱え終えた時、地上が一瞬にして消えた。
それはエネムが目にも止まらぬ速さで飛んだわけじゃなく急に地上というものが消え失せたのだ。
あたりは真っ暗、地がなくなり天がどこまでも果て無く続き、今ここがどこなのかも分からなくなった。
(は?)
エネムこいつ俺の思っていた900倍もヤバいやつじゃん。
そんな事を思っていると、遠くの方から咆哮が聞こえてきた。
あまりのうるささに耳を塞ごうとしたが、この体はエネムのもののため動かない。
(くそ!なんなんだ!)
そしてそれは姿を表した。
どこにこんな物が潜んでいたのかが分からないぐらい巨大なそれはエネムの顔ギリギリに己の顔をつきあわせた。だが、その顔はあまりにもデカすぎてエネムはこいつの前歯よりも小さい。
肌は金色の鱗に包まれどこまで続くか分からないほどの長い胴体を持つ生き物がそこにいた。
(龍だ…)
それもとてつもなくでかい龍だ。その龍は我々がいた大地よりもでかいだろう…
「お前がカトールか…」
(これ本当にエネムか?雰囲気が違う)
エネムがそういうとカトールと呼ばれる龍は口を開けた。だがその余りの大きさにそこにいきなり穴が空いたように見えた。
「そういうお前は…エネムというのか…?」
「なんで私の名前がわかった?それもお前の能力か?」
「ん?お主気づいておらんのか?」
「何がよ?それより星を壊した甲斐があったわ。あなたに会いたかったの」
「ちょっと待て、気になって仕方がない」
カトールがそういうと、エネムに息を吹きつけた。すると俺は後ろに吹き飛ばされた。
「うわぁぁぁ!」
前を見ると前にはエネムの姿があった。そしてエネムはカトールの息で飛ばされることなくその場で止まっていた。
それも時が止まったかのように髪の毛一や服が石像のように固まっていた。
「なるほど…お前が心の声の主か」
俺はあたりを見渡した。だがさっきも言った通りエネムが全部壊してしまったので俺以外誰もいなかった。
「俺に言ってるのか?カトールさん」
「あぁ、お前に言っておる。お前どうやって心に入った?見たところ人間だが…」
「なんか、エネムの過去を【探索】したらここにいて…」
「なるほど…極めた物がいたか…何年後からやってきたのだ?」
「え…分からないわそれはでもエネムが500年間封印されてたって言ってたし…多分500年は立っているはずだと思うが…」
てかここで世界が壊れちゃってるのになんで俺らの世界があるんだ?
「なるほどな。楽しいか?未来は?」
なんだ?急に父さんみたいこと聞いてきたぞ。
「まぁムカつくことはあるが大体楽しいぞ。退屈なのか?」
「まぁな…」
最強だからこそ退屈なのか。
「なんか可哀想だな…なんかできることとかないのか?」
「お前にか?…うむ、そうだな…私のひとみを持って行ってはくれないか?」
「え?瞳を?お前の目ってめっちゃでかいっ自覚してか?」
「そこら辺は心配するな。どうだ頼まれてくれるか?」
んーどうしようか、でもアクセサリー感覚で持っているだけでいいなら別にいいか。
「別にいいぞ」
「そうか、恩に寄付」
そういうとカトールは目を瞑った。すると急に体が光に包まれた。
「では、また会おう」
カトールがそういうとさらに光が強くなったかと思うとパッと真っ暗になった。
「コペル!戻ってきなさい!あなた許さないわよ!コペル!」
そんな声が聞こえた。
「ん?エネムか?」
気が付けば馬小屋に戻ってきていた。
「ん?じゃないわよ!乙女の過去を探ってるんじゃないわよ!…て、その目どうしたの?」
「え?なんか変か?」
「なんか…あんまり変わらないのだけど…ガラス玉みたいに見えるわ。それに…」
「それに?」
「マナの集まり方が尋常じゃないわよ」
「え?」
見ようとしたが自分のことは自分だは見えない物だ。
「家帰ったら見てみるわ。鏡あるし」
じゃあ帰るか。俺は馬小屋から出た。
「まって!私の何を見たのよ?封印されてる最中とか見てないわよね?」
「教えないよ、そんな大したことじゃないだろ」
そうして俺は家に帰った。
馬小屋から出たらあたりは真っ暗だった。
「そう言えば俺。今日誕生日だったんだよなぁ…」
「そうなの?どんまい。いいことあるわよ」
何言ってるんだこいつは。
実際ならユンが祝ってくれたのかな…
そう思うと急に怒りが湧いてきた。
「マジで明日どうしてやろうかなあいつ」
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