19 能力
俺は朝早くに起き、【探索】の技能で出来る事を確かめていた。
その方法は、朝早い農家の人に挨拶をすることだ。
「おじさん、おはようございます!」
遠くにいる帽子を被ったおじさんに呼びかける。
「ん?おう。おはような!」
と、こちらに気づき挨拶を返してくれた瞬間に【探索】を発動し相手の過去を見るというものだ。
このおじさん、ハゲ気にしてるのか…
なんか見ちゃいけないものを見た気分になった。
「はぁ…意外と疲れるんだよなぁ…」
能力に関して分かったことは見たい物があってもこちらではそこまで指定ができない事だ。
まぁ、一日目の朝にしては上出来だろう。
「にしても、、龍の瞳の方だよなぁ…」
エネムの過去にいたカトールとかいう龍のものなのだろうか?
エネムが口から手が出るほど欲しがってるが使い方も能力も発動仕方も不明でさっぱりわからない。
ただ…
俺は自分の目に指を入れ瞳に触った。
明らかに硬い鉄の様だ。それに目自体に感覚がなく触られてる様に感じないのだ。
これは本当によくわからない。ただ、エネムが言うなら身体強化とか言っていた気がする。俺が体感したのは時間の流れが遅く感じるやつだ。
…わかんねぇわ。
それより何よりこの瞳がカトールのものとした時、俺は過去を見るんじゃなくて、過去に行っていることになるんだが…それもよくわからない。
「わからないことだらけだ」
そんな事を考えながら家に戻っていると、マナの流れとはまた違う何かを視線が捉えた。
家と家の間の雑草が多い茂った空き地に綺麗に長方形に切り取った様な紫色の空間があった。
「何あれ…」
感じたのは恐怖心だった。まるで人工物と思えるぐらい綺麗な長方形、みんなに見えていないはずの世界に人工的とも思えるような物があるのが不自然で不気味だ。
俺は怖かったが近づいてみてみることにした。
その長方形は俺よりも背が高く2メートルぐらいあり、どの方面で見ても正面しか向かずに決して背を見せることがない。
触ってみるか?でも一回帰ってエネムに聞いてからの方がいいのか?
いろいろ考えたが結局触ることに決め、それに手を伸ばした。
そしてそれに手が触れたと思った時、手には何も触れておらずそのまま通り過ぎて腕の方まで貫通していた。
「なんだ。触れられもしないのか」
そういったのも束の間、手を出そうとしたが出せず、引くことも押すこともできなくなった。
「やべやべやべぇ!」
紫の意味わからん物体に捕まった。押しても引いてもすんともしない。
「エネム!」
とっさき叫んだが、エネムは来ない。まだ家で寝ているからだ。
誰か!誰かいないのか!
そう思っているとこちらに誰かが向かってきた。
「あれ?コペル?」
それはシーシだった。
「あ、シーシ!いいところに来た!」
そう思ったがシーシはこれが見えないだろうし、どうしようもないか…
そう考えているとシーシが俺の方ではなく紫の長方形を見ているのに気がついた。
「お前見えてるのか?」
「うん。こう言うのらたまに見える」
そうなのか…そういえば蜘蛛も見えてたな。
「シーシ、これが何かわかるか?」
そう聞くと首を横に振った。
「でも、試してみる」
「ん?何を?」
そう聞いても答えてくれず、なんらかの呪文の詠唱をし始めた。
「なにをするきなんですか?」
と尋ねるが何も答えてくれない。そして詠唱を終え、手を前にかざすとそこに大きな火の玉が現れた。
「おい!ちょま!」
その火の玉を長方形に目掛けてフルスイングで投げ飛ばした。
だがしかし、その長方形は全く動かずにびくともしなかった。
「あっち!」
熱かったのは俺だけらしい。
「あれ?溶けてない」
シーシは溶けるの思っていたらしい。
長方形はびくともしなかった。さてどうしたものか…
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