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戦国武将異世界転生冒険記  作者: 詩雪
第三章 帝国西部・刀編
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第65話 塔のダンジョンⅡ

「右からアーマースケルトン五体! 魔法以外は効きにくい! ケンはオルガナを護衛、レオは引き付けて魔法の射線を作るんだ! ミコトは胸の魔力核を打ち抜け!」


「「おう!」」

「了解!」


「同時に左から見た事無いやつが二体来る! こっちは俺がやる!」


 中衛のミコトと後衛のオルガナを繋ぐ位置で次々と指示を出す。敵は彼らにとって初めて相対する奴らばかりなので、初回遭遇時のみ俺が助言を出す事になっていた。


 湧き出てくる魔物を四人に対処させ、俺も未知の魔物に対処すべく移動を開始。行く先にオークよりも一回り大きい二足歩行の鬼が二匹いた。


 事前に調べていた魔物のオーガだ。オークよりワンランク上のD級指定の魔物で、アーマースケルトンを相手にしている四人の元へなだれ込まれると彼らにとって危険な存在となる。


 ここは俺で一人で対処すべく、駆け寄って二匹を挑発した。


「俺が相手だ!」


『ヴァァァァァ!』


 俺を視認するや咆哮を上げて駆け寄ってくる。オークより一回り大きく、動きも若干素早い。オークはどこから拾ってきたのかと思えるようなこん棒を所持しているが、オーガは四肢を使って攻撃して来るタイプの様だ。長い爪は鋭く尖っており、それも武器とするのだろう。


 接敵すると同時に振り下ろされる拳を避け、一匹の足元へ入り込み斬撃を入れる。よろめいて尻もちをついた瞬間にそいつを足場にもう一匹の頭上へ飛んだ。


 空中で俺を掴もうとする手を風刃で切り裂いて引け、そのまま脳天へ舶刀二本を突き刺した。


『ウボォォォォォ……』


 ズゥン―――


 一匹を早々(そうそう)に倒すと、足を斬られ足場にされたもう一匹は尻もちをつきながら腕を振り回している。魔獣ならここで逃げようとしてもおかしくはないが、魔物はそうはならない。自分が消えるか、相手が死ぬまで戦おうとする。


「はぁっ!」


 大雑把に振り回される腕をことごとく(かわ)し、懐に入ると同時に舶刀を逆手に持ち直し、脇から腕を斬り上げた。


『ボァァァァァ!』


 まだ消える様子は無い。やはり生物と同じく、致命となる部分に攻撃を加えないと魔物の魔力は一気に無くならないようだ。小さい魔物ならどこにダメージを与えてもほとんどの場合倒せるが、大きい魔物は部位ダメージでは死なないらしい。


「とどめ…だっ!」


 喚くオーガの首に斬撃を入れ討伐完了。人型の魔物の弱点は人間と変わらないようだった。


「ふむ、覚えておこう…っと、レオ達は」


 オーガと戦っている最中に彼らの気合の声が聞こえていたが今は静かだ。俺は四人の元へ駆け戻る。


 すると、彼らもアーマースケルトンを倒したようだが疲れ果ててその場でへたり込んでいた。


「アンデッドめんどくせぇよ…はぁはぁ…」

「ていうか怖いわ! 半分になっても上半身にじり寄って来るし!」

「あいつら矢躱すのよ…核が弱点なの分かってるんだよね。魔物のクセにありえないわぁ…」

「ごめんねぇ、もう魔力切れです~」


「ははっ、お疲れみたいだな。ちょうどほら」


 オーガが来た方向を指差し、魔法陣の存在を伝える。


「あれより先は下層だ。もうここで引き上げてくれ。心配しなくていい。無理するつもりは毛頭ないから」


「くっそー、ここまでかぁ」

「仕方ねぇな。もしこの先アンデッドばっかだったら正直キツイわ」

「ホントに無茶はやめてよね」

「上で頑張り過ぎたのかなぁ。次からは中層(ここ)メインに切り替えよーよ」


 ある程度の達成感は得られたのか、あれこれ言いながらも『じゃあ先戻らせてもらうわ』と言って四人は帰還魔法陣で戻っていった。


 Dランクで中層を攻略したのだ。正直彼らは大したものだと思う。


「さて、行くか」


 ◇


 六つ目の帰還魔法陣を通り過ぎ、下層へ行くための螺旋階段を一人進む。進むにつれて()素が濃くなっていくのを感じる。


「アーマースケルトンナイト三体にスケルトンウィザード三体か…」


 階段が終わり、広い通路なんだか広間なんだかに入ると、次々にD、C級指定の魔物達が行く手を阻んでくる。下層と呼ばれるだけの事はあり、過剰回復魔法持ちの治癒術師(ヒーラー)が欲しくなるアンデッドな魔物ラインナップだ。


 色々と思いつつも、所詮今の俺の歩みを止められるレベルの魔物ではないのだが。現れた六体を容赦なく土壁で挟み潰し、どんどん先へ進んだ。


 七つ目の帰還魔法陣を過ぎた辺りから、徐々に遠視魔法(ディヴィジョン)に掛かる人の魔力も少なくなり、同様に魔物の数も減っている様だった。


「どういう事だ。先行者が全てを狩っているのか? そんな事あるのか?」


 その時、進んだ先に交戦している反応がある。道は一本だったので進まざるを得ないが、獲物の横取りはご法度。進むと前方に円形の広い空間があり、三人の冒険者が戦っているようだった。相手は森でたまに遭遇したアラクネと呼ばれる蜘蛛型の魔物である。


 ――!―――!!


 これ以上進むと俺も会敵してしまう危険があるので、隠れて魔力反応で見守る。だが、少しおかしい。


 アラクネはアラネアと呼ばれる対の蜘蛛型の魔物と行動しているのが通常だ。森で会った時も必ず二匹で行動し、同時に襲い掛かってきた。ダンジョンでは単独で出てくるのだろうか。魔力反応が無いという事は、倒したという事なのかもしれない。



 二十分後。


 ――!!――!?


 なかなか戦闘が終わらない。アラクネに苦戦しているという事は、結局アラネアは居なかったという事になる。瞑想して待っている間に、後方から魔力反応が湧き、魔物が新たに生まれ始めてしまっていた。このまま待っていてはまた俺が相手をしなければならないし、素通りさせてしまったらあの三人は挟み撃ちに合ってしまう。


 正直尻ぬぐいは御免である。もう待ってられない。


 広場に向かって歩き、中の様子を伺った。その瞬間、アラクネに張り付いて戦っていた前衛二人の内、一人が攻撃を受け吹き飛ばされた。


 ガコッ!


「ぐあっ!」

「タイチ!」

「シルマール! 援護を!」

「あ…あ…うわぁぁ!」

「ちょっ! シルマール!?」


「逃げるとか…ありえない! ぐっ!」


 俺の横をシルマールと呼ばれた後衛の男が二人を置いて逃げ去っていく。残された前衛の女は、アラクネの糸と脚の攻撃をギリギリで回避しているが、あちこち負傷しているようだ。


 アラクネに吹っ飛ばされた男は壁際で気絶しているし、どう見ても負け戦。女はこのまま逃げなければ確実に殺されるだろう。恐らく女はタイチと呼ばれた男を見捨てられずにいるのだ。まぁ仲間なら当然だが、逃げた男はどうしようもないな…


 女が一人になった瞬間、地中の浅い部分に魔力反応が一つ発生する。アラネアである。(つい)の魔物は敵の息の根を確実に止めるべく、地中深くに隠れていたのである。


「そこを離れろ! 下にいるぞ!」


 俺は大声で女に警告した。


「えっ!?」


 ボゴン! と地中からアラネアが現れ、女目掛けて両牙を大きく開いている。女は空中で体勢が悪かったようで、回避が間に合いそうに無い。


「くっ!―――風刃(ウィンドエッジ)!」


 ズバッ!


『ギュィィィィィ!』


 風刃で切り付けられたアラネアは体勢を崩してよろめく。真っ二つに切り裂く勢いで放ったが、思ったよりダメージが無かった。堅い皮膚と細かな毛で威力を散らされたんだろう。


「ちっ!」


 森では木魔法で拘束して斬りつけていたから、風刃の相性が悪いとはつゆ知らず。所変われば魔物の戦い方もその対処法も変わるのかと舌打ちしつつ、よろめいたアラネアを踏み台にしてこちらへ飛んできた女と話をする。


「助かったわ…ありがとう」

「傷薬は持ってますか?」

「さっき逃げられたの」

「あやつか…とにかく気絶している男を連れて逃げて下さい」


「嫌よ! 魔物(アイツら)をあなた一人に押し付けて逃げるなんて出来ない!」


『キキキキキキキ!』

『キシキシキシキシ!』


「なら、大人しくそこで休んでて頂きたい!」

「なっ! ちょっ、一人でやる気!?」


 正直、連携もままならない初対面の、しかも負傷者が居ては邪魔である。


 舶刀二本を抜いて二匹に突進する。アラクネから吐き出される糸を避け、立ち直ったアラネアの前足攻撃を受け流してさらに斬り付けた。


「はぁっ!」


 ズバン!


『ギュィィィィィ!』


 糸を避けられたアラクネはカサカサと俺の後ろに回り込むが、それを無視してアラネアを追撃。胴体に舶刀を突き刺すと同時に雷魔法を放った。


「―――衝雷鼓(エレ・トロン)!」


 ドンッ!


『ギギュゥゥゥゥゥ……』


 敵に触れて体内に強力な雷撃を食らわせる。狙った場所に飛ばすのが難しいなら直接当ててしまえと思い立った末に出来た魔法である。飛距離が無い分、魔力出力は上げてあるので大抵の相手には必殺だ。


 虫の焼ける嫌な臭いと共にアラネアは焼け焦げ、地面にひっくり返る。


 動かなくなったアラネアを飛び越えて後ろに回り込んでいたアラクネを振り向きざま見定めるが、どうやらアラクネは先の二人との戦いで動きが鈍っているようだった。


 俺を何とか捕らえようと糸を何発も吐き出しているが、そんな予備動作から丸見えの攻撃を食らう訳も無く全て回避。真正面から歩いて近づく俺にアラクネは後ろ脚四本で立ち上がり威嚇する。


『キシキシキシキシ!』


「もう手は無いか? ならば終わりだ。―――流気旋風(バーストストリーム)!!」


 シュシュン!


 飛び掛かって固有技スキルを発動。


 アラクネの動きがピタリと止まり、そのまま縦三つに割れて消失した。ひっくり返っていたアラネアも消えているので、二匹の討伐は完了した。


 手強いという程でもなかったし、まだ体力と魔力には余裕がある。このまま深層手前、十個目までの帰還魔法陣まで行けるかもしれない。


 先に戦っていた二人を気に掛けることなく、先へ進もうとしている俺を見て後ろから声が上がる。


「ちょっ、ちょっと待ってよ!」


「……」


 振り返ると、男に肩を貸しながら女が俺を見ている。男は気が付いたようで、顔を歪めながらも女と同様に俺に顔を向けていた。


 助けた感謝とかも全くいらないので、さっさと先に進みたかった。元々はこの二人、いや三人の獲物だったのを先を行きたいがために横取りした形になったので、少々バツが悪いというのもある。


「ああ、魔力核なら持って行って下さい。こいつらのに用は無いので」


「核なんかどうでもいい、命を助けられた。礼くらい言わせてくれないか。ありがとう。俺はタイチでこっちはミリィだ」


「君が倒したんでしょ! 受け取れるわけ無いじゃない!」


「礼なら結構です。それより貴方達はもっと仲間を選んだ方がいい。あと、引き際も見極めなければ命がいくつあっても足りません」


「…君の言う通りだ。下層まで下りるには俺とミリィだけでは心許なくてな。魔法術師(ソーサラー)をギルドで募集した結果があのザマだ」


「ほんっとありえない! ここ出たらギルドでボロクソ言ってやるんだから!」


 愚痴に付き合っている暇は無いんだがな…しかし、恐らく逃げた男は助からないだろう。もう後ろにも魔物は再発生しているし、アラクネで逃げ出すようでは、7つ目の帰還魔法陣まで一人で戻れない可能性が高い。


 俺はその旨を簡潔に告げると、二人は俯いて黙ってしまった。


 そんな二人を無視して歩き出すとまたも呼び止められる。


「あの! 次の魔法陣まで同行させて下さい! お願いします!」

「恥は承知している」


「いいですよ」


「え?」

「いいのか?」


 あっさりと了承した俺に二人は意外そうな顔をする。


 逃げた男の末路を話した後に再度呼び止められた時点で、助け舟を欲されるのはさすがに分かるというもの。タイチはダメージが大きく戦えないだろうし、そんなタイチを守りながらで、ミリィ一人で戻るに戻れないのは一目瞭然だ。


「その代わり―――」


 俺はアラクネとアラネアの魔力核を拾い、


「私はジンです。では、この二つは頂いておきますね」


 と笑顔で自己紹介した。



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