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戦国武将異世界転生冒険記  作者: 詩雪
第二章 帝国中央編
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第39話 大地魔法

 川底のダンジョンからマイルズに戻る道中は流石と言うべきか、アーバインさんらの相手となる魔物や魔獣には出くわさなかった。


 エビルプラントという、やたらに堅い黒い木の魔獣や、毒攻を持ったアッシュスコーピオンと言う厄介な魔獣に遭遇したが、俺が先手で発見し、壁と攻撃役のアーバインさん、デイトさんの火魔法、ガンツさんの打撃に手刀にと連携がとどまる所を知らない。


 一度だけアーバインさんに攻撃が(かす)った時も、即座にシズルさんが離れたところから治癒魔法(ヒール)を放っていて、そんな事も出来るのかと驚いた。


 飛ばす治癒魔法(ヒール)は手で触れるより治癒効率は落ちるが、戦闘中の前衛が万全の状態を維持するには有効な手段だと、後で教えてくれた。


 村でも俺と父上、そこにエドガーさんとオプトさんを加え何度も狩猟に出たが、このパーティーと比べるとどうしても攻撃面で見劣りしてしまう。これがAランクパーティーかと俺は感心した。


 四人が連携して戦っている最中に、戦闘エリアに入って来そうな魔獣の警告と、奇襲での討伐が今の俺の役目とはいえ、はっきり言ってこの四人には不要。それほど個々人の強さと連携は見事なものだった。


 そうして苦も無くマイルズに帰還した俺達は同じ宿を取り、食事処(食堂というらしい)で同じテーブルを囲んでいる。


「皆さん、本当に勉強になりました。ありがとうございました」


 深々と頭を下げ、感謝の意を述べる。


 特にアーバインさんの指示と守りの立ち位置、素手にも関わらず打撃に斬撃にと、多彩な攻撃を繰り出したガンツさん、牽制も止めの一撃も遠距離からこなしたデイトさん、遠距離から回復を行える技術と味方の少しの損傷も見逃さなかったシズルさん。


 俺はそれぞれ感心したポイントを興奮しながら挙げていく。


「よく見てるっすねぇ。でもジンの警戒があったからこそ、思いっきりやれたってのもあったっすよ!」


「あたしたちの本気はこんなもんじゃないわよぉ? って言いたいところだけど、居てくれて楽だったのは確かだわぁ」


「今日の治癒はいつもならやらない。暇だったからやっただけ」


「俺達の戦いで学べる事があったのなら、それに越したことは無い。それにジンの木魔法。そもそも木魔法自体、相性があっても実用に足るレベルまで上げられるヤツは珍しいんだ。斥候に魔法に近接に、本来ならどれかに特化して育てた方が戦力になるんだが」


「オールラウンダーにも程があるっす! 俺は今のままのスタイルでジンがどこまでやれるのか見てみたいっすね」


「ジンってさぁ、大地属性もってるー?」


 ここでデイトさんが俺の知らない属性の名を挙げた。


「大地属性? いいえ。今分かっているのは風、木、地の三つです。聖属性は母上が無いと言っていました」


「そうなんだぁ。あのねぇ、大地属性はその三つの複合属性なのよぉ。魔法としては耐性魔法(レジスト)がほとんどらしいわねぇ。毒が効かなくなるとかぁ、混乱とか恐怖心が軽減されるとかぁ。相性があれば他人にも付与出来るようになるからぁ、すっごい戦力アップになるわよぉ♪」


 そんな属性があるのか。単独(ソロ)で動く俺には是非とも欲しい魔法だ。


「大地魔法が使えれば状態異常を恐れる必要が無くなる。状態異常を解除する魔法は聖属性魔法で神聖術師(プリースト)の魔法。私は解毒魔法(アンチヴェノム)しか出来ない。覚えればとても有用」


「毒攻は多くの魔獣や魔物の十八番おはこだ。解毒魔法(アンチヴェノム)が使えるメンバーがいるだけで戦闘の不安要素は大幅に減少するから、シズルには助けられているんだ。ついでに言うと、状態異常を治す薬は総じて高いんだ。治療や耐性を付与できるメンバーがいれば財布が助かる。一番安い毒消し薬が銀貨一枚、一番高いやつで呪縛を治す聖水は帝国内で金貨三枚する。他の国ならもっとするだろうな」


「しかもぉ、薬は治すのにちょっと時間かかるのよねぇ。魔法ならソッコーで治るしぃ」


「薬が金貨三枚!? そ、それは是非とも覚えておきたいですね。これはまたいい事を教えて頂きました。デイトさん、ありがとうございます。」


「いいのよぉ。ジンの事は気に入ったからぁ♪」


 その後食事をしながらまた色々な事を教わり、皆その日は休んで、明日ギルドへ向かう事になった。依頼期間は三日だったので、明日の報告でも問題ない。


 その夜部屋で瞑想し、さっそく大地魔法のイメージ構築に取り掛かった。


 ◇


 とりあえず『毒が効かなくなる』というイメージを持つ為、前世の記憶を利用する。前世ではトリカブトという危険な毒物があった。食事や飲み物に混ぜて相手を毒殺したり、矢じりに塗りつけたりして対象を暗殺する際に使われるのだが、俺は前世で野草の中に少量のトリカブトが混ざっている事に気付かず、食べてしまった事があった。舌が痺れ、その痺れが手足にまで及び、そして猛烈な腹痛に襲われて死にかけた。なぜ死ななかったのかは分からないが、恐らく誰かが治療したのだろう。その事をイメージする。


 毒で死ななかった経験は大きい。それにトリカブトは痺れを伴う麻痺毒だった。


 深呼吸をし、イメージを作り出す―――


  種子が()に運ばれ花をなし、その花と()が織りなす豊かな森を想像し、森を支える()の力強さを想像する。


 大地が手の平の上にあるイメージを、魔力を使って形作るのだ。大地は毒も薬も作り出す。その大地から毒だけを取り除くのは我儘というもの。薬も同時に除かなければ均衡がとれない。


 毒も、それを治す薬も、人の手が入ると(ごう)となる。大地から毒と薬を取り除き、それ以外は拒否する。



 ―――風になびく草木 日の光を反射する湖


 ―――雨に地面は濡れ 雪は一面を白銀に染める



(これだっ!)


 その瞬間、手の平には深い緑の魔力の光。


 俺は大地魔法の発動に成功した。


 ◇


 翌日。


 四人と合流し、早速大地魔法の事を皆に話して改めてデイトさんにお礼を言った。皆はそれを聞いて大いに驚いて、どの耐性魔法(レジスト)なのかを聞いてきた。


 そういえば最初は毒を取り除くイメージで作ったが、自分にかけた時にそれだけではないような気がしていた。正直分からなかったので、試させてもらえるか聞いてみた。


「ちょっと待てジン。まさか付与できるのか?」


「はい。昨晩覚えたばかりなので自分以外に試したことはありませんが、多分出来ると思います」


「よっしゃあジン! 俺にかけてみるっす!」


 ガンツさんが勇敢? にも試させてくれるとの事なので、ここは遠慮なく。


「では行きます。―――獅子の心(ライオンハート)!」


 ガンツさんの身体が緑の光に包まれ、少しすると光が消える。ワナワナと震えその効果を実感していた。


「な、なんじゃこりゃ! 多分、いろんな効果があるっす!」


 すると、シズルさんが傷薬の調合に使う毒草を鞄から出し、食ってみろとガンツさんに差し出した。


 流石に俺が慌てたが、


「即効性はあるけどこのくらいじゃ死なないし、毒は私が治せる」


 といい、ガンツさんは毒草を受け取るや否や、躊躇(ためら)いもなくむしゃむしゃと口にした。


 その瞬間、パッと緑の光が(またた)いた。


「今のは耐性魔法(レジスト)が反応した光ねぇ」


 おお、分かりやすい。


「まっず! けど…なんとも無いっす! それになんっすかねぇ、身体が熱いっす。やる気というか何というか、強くなった気がするっす。別に力が上がった訳では無いと思うんすけど」


「さっき食べたのは麻痺毒の草。少量なら薬の効果を上げてくれる。今の量は完全に身体を害する量。間違いなく毒耐性、麻痺耐性がある。それに恐らく『毒草』と言われて躊躇ちゅうちょ無く口に出来たのは恐怖耐性のおかげ。強くなった気がするのは、血流が上がって運動中の状態になっているからだと思う。顔が上気してるのが証拠。今は分からないけれど、もしかしたら混乱耐性と、やっかいな幻覚耐性もついているかも知れない」


 シズルの分析に俺を含む全員が納得し、感心した。


「つ、つまり…普通なら一つの効果しかない耐性魔法(レジスト)を、あらゆる状態異常耐性を持つ魔法、それを固有魔法として生み出して、さらに戦闘中のピークの状態に入れる魔法だという事か」


「そういう事。しかも今は実際に動いている訳では無いから、魔法の効果が切れても疲れる事は無いと思う」


「はい。確かに昨日の夜私もそうなりましたが、効果が切れても何も感じませんでした」


「なんて魔法だ…長年冒険者をやってるが、こんな魔法は初めて見る」


「ジ~ン~、一晩で複合属性使えるようになるのもおかしいけどぉ、何をイメージしたらこんな固有魔法になるわけぇ~?」


「えっと、そうですね…私がやったのは雄大な大地をイメージすると同時に、大地を悠然と歩く獅子のイメージを加えてみたのです。大地だけでは生きる力が伝わりにくい気がして」


「なるほどねぇ…それが効果の追加に役立ったかもしれないわねぇ。獅子がいるおかげでぇ、恐怖に対する戦意、言い換えると『勇敢さ』かなぁ? その効果が出たのかもねぇ。それに新たにイメージを()()こと自体がぁ、他人に()()するっていう追加効果を生み出したのかもしれないわねぇ」


 次々と分析して紐解いていくシズルさんとデイトさん。二人の知識と経験、それを解答に結び付けていく思考力と速度は凄いとしか言いようがない。


「とにかく凄いわぁ! あたしも勉強になったぁ! ありがとーねジン!」


「私も。同じ魔法師として負けていられない」


「俺とガンツは魔法の事は詳しくないが、この二人がそういうんだ。俺達にまだまだ学べる事があるという事を示してもらった。感謝するよ」


「そうっす! 俺なんかやる気とまんねぇっす! 今すぐにでも戦いたいっす!」


「ありがとうございます。皆さんにはまた御恩が出来てしまいました」


 (はや)るガンツさんを皆でなだめてからギルドへ向かう。


 出発前にえらく時間を使ってしまったが、皆のお陰でどういう魔法か理解することが出来た。これはかなり使えそうだと俺は一人こっそり拳を握った。



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