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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

女子高生がダベるだけ

作者: ピッチョン

【登場人物】

みっちゃん:だらけ気味の女の子。その発言は特に何も考えていない。

きぃちゃん:少しおっとりとした女の子。たまにつっこみが鋭い。



 話し声、笑い声、金属が食器に当たる音、コップがテーブルに置かれる音。夕方のファミレスというのはとにかく賑やか極まりない。一人だと静かな食事も十人集まれば途端に騒々しい空間へと変わる。

 しかし騒がしいのは悪いことばかりではない。雑多な雰囲気は周囲への注意を疎かにさせる。すなわち、よほど聞き耳を立てでもしない限りは近くの会話など聞き取れないということ。ましてや広い店内の隅にいる少女たちの会話を誰が気に留めるだろうか。


「みっちゃんさ~、100万あったらなにする~?」

「100万かー。1000万になんない?」

「なるなる」

「1000万ならとりあえず一年間遊んで暮らす。ディズニーの年パス買って毎週末遊びに行ったり夏休みに海外に行ったり。お金使い切る勢いでぱーっと」

「わ~計画性ゼロ~」

「貯金してちびちび使うより一気に使った方が満足度高いんだって。あたしの人生をこのコップに例えてみ? いっぱいまで入れた水にシロップ溶かすのと、水をスプーンですくってそこにシロップ入れるの、どっちが甘くなるよ?」

「スプーンだね」

「それと同じで、量が少なかろうが人生でも濃い時間を楽しんだもん勝ちよ」

「でも甘くなりすぎたらえぐくて飲めなくない? それと、なんの味もついてない水よりかはちょっとでも味がある水の方が飲みやすい人もいるだろうし」

「いい発想だ。きぃちゃんもまた、あたしと同じく天才か」

「ほんとの天才なら学校帰りにこんなとこでありもしないお金の使い道を話したりしないけどね」

「じゃあもうちょい実のある話をしよう」

「どんな?」

「昨日晩ごはん何食べた?」

「実、あった?」

「晩ごはんが何かってのも年頃のこどもにとっちゃ大事なことでしょーが」

「大事かもしれないけど、今ここでわたしたちが話す意味あるのってこと」

「晩ごはんでマウントを取り合える」

「わ~意味なかった~」

「いやさ、例えばだよ?」

「例えるの好きだよね」

「例えばクラスで人気者のA子ちゃんと、見るからに陰気でいつも独りぼっちのB子ちゃんがいたとするでしょ」

「うん」

「お昼の時間になってそれぞれご飯を食べ始めるわけよ。A子ちゃんはコンビニで買ってきた菓子パン2個と野菜ジュース。かたやB子ちゃんは漆塗りの重箱を取り出して中からは鯛の姿焼き。どうよ?」

「教室がお魚くさくなっちゃうね」

「そこじゃないだろ」

「あ、鯛一匹は重いか」

「そこでもない」

「そんなこと言われても、お昼ごはんだけじゃなんとも言えないし~。もしA子ちゃんの家庭が母子家庭だったらとか、B子ちゃんの両親は海外にいてお弁当はお抱えのシェフが作ってたらとか考えたらどっちが良いとか判断できなくない?」

「複雑な家庭事情ゆえのデリケートな問題だね」

「ていうかみっちゃんがお昼ごはんでマウントとってるの見たことないけど」

「とる理由ない、ってかそもそもとれないし」

「じゃあ何で言ったし」

「豪華なお弁当いいなぁって」

「そこかい」

「だってさー、あたしのお弁当絶対あたしが嫌いなもの一個は入ってんの。お母さんに言っても『ちょっとなんだから栄養の為に食べなさい』って。そんなちょびっとの栄養の為にあたしの午後から授業に臨もうとするモチベーションが下げられるわけよ」

「お弁当でモチベーション上下するんだ」

「え、しないの?」

「むしろする理由がわからない」

「食育って言葉知らない? 美味しいものを食べて健やかに育とうってやつ」

「わたしの知ってる食育と違うなぁ」

「とにかく、美味しい食べ物は世界を救うってこと」

「今わたしたちが食べてる山盛りポテトも世界を救う?(もぐもぐ)」

「当然。(もぐもぐ)ん、揚げたてのフライドポテトにマヨネーズとケチャップをつけて食べてるとき、人は幸福になる。幸福になると争いを生まない。争いがない世界は平和になる。ほら、世界救った」

「わ~雑な理論~」

「マヨネーズより明太マヨのがいいか……?」

「ニーズに応えるならバリエーション増やしまくった方がよくない?」

「それだ。チリソースにバジルにガーリック、アボカド、チーズ、サワークリーム。世界をあまねく席巻する数々のディップソースを用いることでフライドポテトはより世界平和料理として完成するはず」

「完成したらどうする? 世界中に配る?」

「全世界にフライドポテト供給所を作って食べ放題で提供する」

「ずっとそれだけだと胃もたれしそうだね」

「飲み物とハンバーガーもつける」

「ただのファストフードだ~」

「マスコットは赤い髪のピエロ」

「マックだった~」

「つまりマックは世界平和の為に活動していた?」

「だといいね」

「逆に世界征服を企んでいたとか、もしくは荒廃した地球に新たな神として君臨するための下準備とか」

「みっちゃんのなかのマック像が心配になる。あ、でもわたしベーコン教っていうの聞いたことあるよ」

「ベーコン教? ベーコンを崇め奉るの?」

「うん」

「マジ? え、そんなん入らざるを得ないんだけど」

「神様は目に見えないけどベーコンは目に見える、とかなんとか。ジョークの一種だけどそこそこの人が信仰してたはず」

「よし、じゃああたしたちは対抗してフライドポテト教作るか」

「ツイッターで募集したら結構集まりそう。……調べたらハッシュタグであった」

「先越されたー!(ドン)」

「悔しがるのウケる」

「こうなりゃあたしたち自身を神として崇め奉る宗教作ろう」

「危ない未来しか想像できないのがすごいよね」

「神様が二人いたらややこしいか。どっちが唯一神になる?」

「わたしはイヤだなぁ」

「あたしもヤだよ」

「おい言い出しっぺ」

「もう『きぃちゃん教』でいいじゃん。あたし入ってあげるから」

「じゃあはい」

「なにその手?」

「神様への捧げ物は?」

「ほい、フライドポテトあげる」

「ちょっと、手のひらに乗せたら汚れるでしょ~、も~!(もぐもぐ)」

「文句の多い神様だなぁ」

「……『みっちゃん教』は?」

「え?」

「『みっちゃん教』、わたしも入って神様に供物を捧げてあげる」

「いやー、あたしは信者に見返りを求めないタイプだから」

「遠慮しないで」

「きぃちゃんそれマヨネーズ付け過ぎだって! そんなの受け取んないからね!」

「じゃあ直接御口に持っていってあげましょ~ね~」

「ま、ま――!」

「口閉じたら変なとこに持ってっちゃうかも。鼻の穴とか」

「っ!?」

「はい、あーん」

「……(ぱく。もぐもぐ)……おぉう、カロリーの味だぁ……」

「よかったね。幸せの味だよ」

「カロリーが幸せに繋がるのはよく知ってる」

「だね~。美味しいものってどれもカロリー高いよね」

「バターと砂糖は人をダメにする二大兵器だと思う」

「今度は兵器ときたか」

「じゃあ聞くけど、もしバターと砂糖たっぷりのマドレーヌとかフィナンシェとかの洋菓子が毎日食事の後に支給されたらどうよ?」

「美味しく食べる」

「それが一カ月、半年、一年と続いてみ? 心配になってこない?」

「……なる。お腹まわりが」

「そうやってまずは人々の体重を増やし、膝関節にダメージを与え動くのを億劫にさせて、最後は活動すら停止させる。立派な兵器じゃん」

「わ~ただの不摂生~」

「だから我々は日々誘惑に耐えられるように精神を鍛えなければならないのだ。……話してたらこのイチゴパフェめっちゃ食べたくなったんだけど」

「精神を鍛えるチャンスだね」

「いや、きぃちゃんもこの写真見てよ。ソフトクリームの白色とイチゴソースの赤色の織り成す色鮮やかなコントラスト。容器の縁にそって花開くみずみずしいイチゴの果肉たち。スプーンで一緒にすくって口に運ぶとイチゴとバニラの風味が混ざり合い、ソフトクリームの甘さを酸味がより一層引き立ててくれることは想像に難くない……」

「めっちゃ食レポするじゃん」

「そんくらい食べたいってこと。きぃちゃん食べたくないの?」

「誰かさんの食レポのせいで今食べたくなった」

「じゃあ頼む? 二人で半分こしよ?」

「精神を鍛えるって話は?」

「帰りちょっと長めに歩けばだいじょぶだってー」

「それ足腰鍛えちゃってるね」

「美味しいものを食べたから運動する。運動したから美味しいものを食べる。幸せになれて体重も増えない最高のサイクル」

「健康的には違いない。でもね、みっちゃん」

「ん?」

フライドポテト(これ)も美味しいものの分類に入るってこと忘れてない?(かり、もぐもぐ)」

「……(かり、もぐもぐ)。よし、食べ物の話はこのくらいにして違うこと話そう」

「賢明な判断だね」

「最近さー、寝る前にストレッチするとよく眠れるって聞いたからやってんのよ」

「あ~、ラインで言ってたねぇ。効果あった?」

「わからん。てか別に寝付き悪かったわけでもないし」

「なんのためにストレッチ始めたのか」

「でも体はちょっと柔らかくなった」

「効果あったじゃん」

「予期せぬところで結果が出てラッキーだわ」

「う~ん、ラッキーなのかなぁ」

「ただ、寝る前にやった方がいいことを調べてたら気になるの見つけちゃって」

「なに?」

「寝る直前までスマホいじってるのはよくない」

「らしいね。ブルーライトがよくないとか脳が活性化するから眠れないとか」

「あたしたちほぼ毎日寝る前にラインしてんじゃん」

「うん」

「よくないんだって」

「聞いた聞いた」

「つまり安眠のためにはきぃちゃんとラインしちゃダメなんだ」

「でも寝付きはいいんでしょ?」

「まぁ普通くらい」

「じゃあ別にいいんじゃない? 実害ないし」

「言われてみればそだね。眠れなくなったときに対策を練ればいっか」

「対策だったら簡単だよ」

「なにか策が?」

「通話にすればいい」

「ほう」

「画面見たり指で操作したりがダメだと思うから、イヤホンでも付けて目を瞑りながら通話すれば大丈夫だと思う」

「それいい考えかも。きぃちゃんの声って聞いてると落ち着くから安眠効果も期待できるね」

「そんなに落ち着く?」

「落ち着く落ち着く。授業できぃちゃんが教科書読んでるときとか寝ちゃうくらい。とくに午後の授業」

「それわたしの声関係ないよ」

「だったら今日試してみる? きぃちゃんが電話越しに子守歌を歌ってあたしが眠れるかどうか」

「ずっと子守歌歌わされるのはイヤだなぁ」

「なら会話の途中にサブリミナルで入れてくれていいから」

「……?」

「今日の、ねんねーん、晩ごはん、ころーりーよ、なに食べた? おこーろーりーよー」

「それで眠れたら逆にすごい」

「じゃあ普通に話しててあたしが寝そうになったら子守歌に切り替えて」

「要求の難易度が高い」

「きぃちゃんなら余裕だって。それにしても、あたしたち今の時代に生まれてよかったよね」

「なにが?」

「無料通話があってよかった」

「そこ?」

「昔はアプリもなかったし、携帯会社のプランでしか無料で通話できなかったらしいじゃん? それが今や一晩中だって友達と話せるってのは良い時代になったもんだ」

「わたしたち前の時代を経験してないけどね」

「生まれたときからあるってことが一番恵まれてるんだよ」

「お、なかなか含蓄のありそうなお言葉」

「でも一番恵まれてるって思うのは、きぃちゃんと同級生だったことかな。じゃないとこうやって二人でだらだらお喋りできなかったし」

「……」

「ん? 照れた?」

「照れてません~。恥ずかし気もなくよく言えるなと思っただけです~」

「ひっど! 人が友達に対して日頃の感謝を口にしたっていうのに!」

「はいはい、感謝してくれてありがとうございます。わたしも感謝してますよ~」

「はー、白々しい態度」

「ちょっと飲み物入れてくる」

「あ、あたしのもお願い」

「なに飲む?」

「カルピス8、オレンジ2で」

「はいはい」

「………………ふふ」(自分のスマホをいじる)


「……はい、お待たせ」

「ありがとー。あ、なんか通知来てたよ」

「そう? ……!!」

『めっちゃニヤニヤしながらドリンク入れてたじゃん』

「に、ニヤニヤしてないし!」

「いやいや、してたしてた。すっごい嬉しそうだった」

「みっちゃんの目がおかしいんだって! どこからどう見ても平常でしょ!?」

「ムキになるのがあやしいなー」

「――っ!(ぱくぱくむしゃむしゃ)」 

「あぁポテトが!?」

「(もぐもぐ)平和の為にはポテトの犠牲も仕方ないんだったよね。もう冷めかけてるし全部食べよ」

「あたしも食べる!(もぐもぐ)」

「…………ふぅ、え~と? みっちゃんが眠れないって話だっけ?」

「それもう終わった」

「他に悩み事は?」

「きぃちゃんが素直になってくれないこと」

「なにもなし、と」

「へいへい。逆にきぃちゃんは悩み事ないの?」

「ん~? 特には思いつかないなぁ」

「悩みがないのが悩みってやつか」

「勝手に悩みにされた」

「俗物的なのでもいいんだよ? お金が欲しい連休が欲しい恋人が欲しい」

「悩みっていうか願望になってるし。願望でいいなら何個かあるけど」

「なになに?」

「……大人にならずにずっと高校生でいたいなぁとか」

「それは不老不死的なアレ?」

「違うよ。ループものじゃないけど高校生をずっと繰り返したいなってこと」

「今が一番気楽だもんねー。お金の自由はあんまないけど、時間はそこそこあるし」

「……うん」

「なんと言っても女子高生って肩書は今じゃないと使えないもんね」

「学生割り引きとか?」

「それもあるけど、女子高生の単語パワーにあやかれるってのが大きい」

「単語パワー?」

「例えば『女子高生探偵』って聞いたらなんか若くて可愛くて頭が切れて、みたいな印象になんない?」

「キャラデザによる」

「『女子高生エージェント』」

「う~ん、凄腕感はちょっとあるかな」

「『女子高生アイドル』」

「普通にいる」

「『女子高生ロボット』」

「同級生がみんな成長するなかで自分はずっと女子高生のままっていう悲哀みを感じる」

「『女子高生忍者』」

「若いくのいちかな?」

「『女子高生勇者』」

「転生ものかな?」

「『女子高生ゾンビ』」

「ゾンビの単語パワーが強すぎる」

「……とまぁ、こんな感じに女子高生が付くことで自然と可愛さとかをアピールできたりするわけよ」

「雰囲気だけは伝わった」

「あたしたちも女子高生じゃなくなったら途端にちやほやされなくなるんだよ?」

「言うほどちやほやされた記憶はないなぁ」

「あたしもないや」

「単語パワーにあやかるとは」

「どうせあと二年くらいしたら女子高生じゃなくなるんだから誤差誤差。それよりも社会人になってからの方が人生長いんだから、今のうちにやりたいこととか挙げといた方がよくない?」

「死ぬまでにやりたいことリストでも作る?」

「いいねー。やっぱ旅行! 海外はまだちょっと怖いから、とりあえず北と南かな」

「エメラルドグリーンの海で泳いでみたいね」

「流氷も乗ろう。ペンギンとシロクマも生で見たい」

「野生は無理じゃないかなぁ」

「そんときは動物園で。あー、なんか話してると動物園行きたくなってきた。今度上野でも行く?」

「行く行く~。……あれ、あそこペンギンとシロクマいたような……」

「ヤバ、もうやりたいこと達成しちゃうじゃん」

「流氷に乗るのが残ってるよ」

「あそっか。じゃあいいや」

「……でもこうやって色々決めても社会人になったら忙しくて、旅行とか出来ないんだろうなぁ」

「土日でとかはきついだろうから、狙うならGW(ゴールデンウィーク)SW(シルバーウィーク)じゃない?」

「そこで休める会社ならいいんだけど」

「そのときはあたしがきぃちゃんに合わせて休み取るわ」

「――え?」

「有給とかいうの申請すれば休めるんだっけ?」

「えと、多分。会社とかにもよるかもだけど」

「まぁダメでも都合つけてなんとかするから」

「……一緒に旅行行く流れに聞こえるのは気のせい?」

「え!? 一緒に行くんじゃないの?」

「い、いや、みっちゃんがいいならいいんだけど……」

「ひとりで行ってもつまんないしね。きぃちゃんとだったら絶対楽しいじゃん」

「……うん! 絶対一緒に行こ!」

「ホントは夏休みもどっか行きたいけどねー。お金がないってなったら鈍行とかでしょ? 旅行に一週間以上かかったら行かせてくれないと思うんだよね」

「高校生の間は日帰りでもいいよ。近場でも十分楽しいし」

「まぁねー。とりあえずは上野か」

「いつ行く?」

「今週の土曜か日曜でいんじゃね?」

「おっけ~」

「あ、動物園って飲食禁止だっけ?」

「どうだったかな? 飲み物はともかく食べ物はあんまりよくないんじゃ。どしたの?」

「フライドポテト教を動物たちにも広めようかなと」

「百パー怒られるよ」

「エサをあげるんじゃなくて、美味しそうにポテトを食べてるところを見せつけてやるの」

「わ~畜生~」

「もしかしたら『檻の外にはあんなに美味しそうな食べ物があるんだ。よし、頑張るぞ』って動物たちがやる気になるかもしれない」

「その場合、檻から逃げるのを頑張っちゃうね」

「いや冗談だよ冗談」

「わかってる」

「――さぁってと、そろそろ出ますかー」

「そうだね」

「えぇっと合計の税込は……ってことは、ひとり405円」

「細かいのないからわたし払う」

「あいよ。ほい、釣りはいらねぇ、とっときな」

「ありがと。お釣りは五円だけど」

「五円を笑うものはご縁がなくなるっていうことわざがあってね」

「初めて聞いた」

「うん、初めて言った」

「じゃあご縁はなくならないんじゃない?」

「かな?」

「もうレジ行くよ。忘れ物は~」

「おっけー」


(ありがとうございましたー)


「はぁー、だいぶ暗いねー」

「あっという間に暗くなっちゃうからね」

「学校帰りにファミレスでダベって、店を出るころにはもう夜か……時間をムダにしてる感ハンパない」

「……みっちゃんと話してる時間がムダだなんて、一度も思ったことないけど」

「……え、もしかしてデレた?」

「デレてないです~」

「いやいや今のはデレたっしょー」

「勘違いもいい加減にしてくださ~い」

「素直じゃないなぁ」

「言ってる意味がわかりませんね~」

「へいへい。あ、寝る前に電話するの何時くらいがいい?」

「あれ本気だったの?」

「そりゃもう。きぃちゃんの声で安眠できるってのを証明しないと」

「証明する意味ないと思うけど」

「一緒に泊まるときに役立つじゃん」

「…………」

「あれ? ニヤニヤしてない?」

「してません~!!」


 冷気が肌を刺す寒空の下、街灯や店の明かりに照らされながら、少女たちは楽しそうにレンガの歩道を進んでいった。



     終



前々から会話だけで一万字くらい書いてみたいと思っていたのでpixivのコンテスト終了の息抜きも兼ねて書いてみました。書いてる途中で『百合要素薄すぎない?』と不安になったので7000字で終了。


ツイッターの方にたまにあげてる一発ネタ百合劇場みたいなものですが同一のキャラとかではないです。


こういう会話だけが延々と続くのはやっぱり読みづらいですかね。

書いている側に情景が浮かんでも、共有出来なければ意味がないのかな、と。要所要所で地の文めっちゃ書きたくなりました。


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