夢の世界に辿り着いた話し
もともと私の現状に一番近い大学のサークルとか会社を舞台にしようと思いましたが、何か、どうなん?って思ってやめました。
だから私は俳優じゃナイヨ。
私はこのネオンに輝く街が、キラキラ輝く光が、ひどく遠く思えた。
ここは世界のトップスター達が多く暮らす街。それだけあって朝から晩まで人の笑い声が絶えない。
「あそこに映画俳優の○○がいる!」
「この店はかの有名なバンドマンがこれまた有名な女優にプロポーズした店さ。凄いだろう」
トップスターにもしかしたら会えるという希望を持って観光しに来る人もいる。一年に数種類ある大きな祭典ではメディアの数も増える。
私はその大きな祭典のために着る服を見ていた。
なぜなら私は映画俳優だから。
壁に掛かった、二つボタンのノッチラペルのタキシードにストレートタイ。蝶ネクタイよりもこっちの方が似合う、と同じ作品の出演者が言っていた。確かに、ただ似合わないというわけではないと思う。
祭典はこれで何回目だろう。忘れた。
空いていた全開口の窓から風が吹いてカーテンがなびく。外を見ると三キロメートル先までは暗く、その先は明るいネオンの輝きがある。
求めていた輝きはこんなにも遠いモノだったのだろうか。
ここは世界のトップスター達が多く暮らす居住地。丘の上にはスター達の邸宅が並ぶ。ホームパーティーのにぎやかな音と光でさえ遠く感じる。
私がまだ無名だった頃、丘の麓にあるボロアパートに住んでいた。地価が高いためボロアパートでも生活していくことが厳しかった。それでも私はそこに住み続けた。輝きが欲しかったから。
私はよく夜になるとアパートのベランダから丘の方を見ていた。
丘の麓は店が多く立ち並んでいるから、いつもネオンの光に満ちている。丘の上もキラキラ輝いていて眩しかった。でもそれが良かった。笑い声の絶えないにぎやかで光輝く街。
夢を描いていた。私は世界一輝くスターになり、祭典も常連、キラキラ輝く丘の上で暮らしていて、このネオンに輝く街を見下ろす。とても楽しい夢の世界だった。
「もう、あなた世界一有名な俳優じゃない?もっと誇ってもいいと思うわ!」
祭典の夜、ちょうど日付が変わる頃。私は家のテラスから街を見下ろした。
「夢の世界に辿り着いたときとは、こんなにも虚しくなるのだろうか。いや、ならないはずだ」
なら、一体これは何なのだ。
読んでくださりありがとうございます。
私の最近の夢?はイギリス人のおじ様と数時間話すことです。