表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

雨と放課後

作者: しししし

なんとなくいつかのあの日を思い出してください。

 また、雨が降っている。

 昨日よりも、少しばかり強いかもしれない。

 分厚い、灰色の雲から、さあさあと、小粒の雨が絶え間なく降り続ける。

 半透明のビニール越しの視界。

 いつか駅前の、コンビニエンスストアで買った、このビニール傘をずっと使っている。

 それに雨粒が、無数に乗っかるもんだから、前なんてよく見えない。

 足下は、すでに濡れている。サンダルで登校してはいけないなんて校則は無いのだから、次はサンダルで登校してやろう。

 ズボンのポケットから、スマートフォンを取り出す。

 午後四時二〇分。

 あと四分でバスが来る。

 少し先のコンビニの駐車場に、白い軽自動車が入り、車から人が降りた。そうして、駆け足で入り口に向かう。

 なんとなく、それを目で追う。すると、視界の隅にバスが見えた。

 やっと来た。

 学校指定のカバンから、定期券を取り出す。

 バスが止まる。ドアが開いて、乗客を向かい入れようとする。

 僕は、傘をたたんで、バスに乗る。

 ふと、さっきのコンビニエンスストアの入り口を見た。

 時が止まる。

 雨の音も街の喧騒もイヤホンから流れるお気に入りの音楽も、耳に入らない。

 さっきよりも強くなっていたはずの雨も、僕の目には映らない。

 映るのは、彼女だけ。

 雨に濡れた、淋しげな紫陽花。

 こんな風に感じるのは、今が梅雨だからか。

 でも、他には例えられない。

 なぜか、こっちを見て、微笑んでいたような気がする。

 急に、視界が遮られる。

 バスのドアが閉まったのか。

 バスが発車する。僕の心はそこに置き去りのまま。

 雨に濡れたガラス窓越しに、コンビニエンスストアの黄色い電飾が、滲むようにぼやけてゆく。

 それはまるで、幼い時分に見た季節はずれの花火のように、明るく、だけどどこか切なく輝いて見えた。


拙い文章をお読みいただきありがとうございました。この話はきっと、私の理想だったのかもしれません。ノスタルジーの好きな私の、心の片隅にある。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ