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僕の彼女はノンセクシャル  作者: チェリり
2/2

楽しい楽しい初デート

続けて読んでくださってる方、ありがとうございます。1話が暗かった分、今回は明るめに頑張りました

放課後、マン喫でネトゲを満喫した後書店に向かった。上川さんの気を引こうと色々考えた結果、彼女の趣味である読書で話題作りをしようという作戦だ。小学生の頃にかいけつゾ〇リを読んで以降、読書とは全く縁がなかった僕は上川さんがおすすめしてくれた本を探すのに手間取ってしまった。


「いけね、もう7時じゃん」


寮の門限は7時なのだ。過ぎてしまうと怒られる。高校生にもなって門限7時とは笑ってしまうが今ではすっかり慣れてしまった。


それから1ヵ月、僕はひたすら本を読んだ。暇な時間があれば読書をして上川さんとの話題作りに励んだ。最も、自分が読書の楽しさに気づいて手が止まらなくなったというのもあるが。やはり上川さんが勧めてくれた作品は面白い。


そんなある日、僕は上川さんに図書館デートをもちかけようと決心した


僕 「今度、ぼくといっしょに図書館に行きませんか」


送信ボタンを押すのに5分ほどかかった。やはりチキンなのだ


上川さん「そろそろ誘われるんじゃないかなーと思ってましたが意外と遅かったですね。いいですよー」


喜んでいいの……か……?とにかくデートの約束をとりつけることに成功した。友達がいない、勉強もできない。そんなことはどうでもよくなるくらいデートまでの毎日は楽しかった。


デート当日、約束の場所に15分前に到着した。女の子を待たせるのはダメだと思い早めに来たのだ。10分もしないうちに


「お待たせしました。10分くらいまっちゃいましたよね……?」


そこには学生服とは一味違う清楚で可愛い女の子の姿があっ……ん??


「なんで10分待ったって分かったんですか……?」


上川さんは斜め横にあるマンションを指さして笑いながら答えた


「私の家あそこなんですよ。なので窓からここが見えるんですよね。貴方が来たら家を出ようと思ってたんですが思ったより早く来られたので急いで準備しました」


そうか。急がせてしまったのか。これから先のデートには2.3分前に来るようにしようと心に決めたのだった。


他愛もない話をしながら図書館へ向かった。図書館についた彼女はまるでお菓子売り場で何を買おうか迷っている子供のようにキラキラした目をしていた。本当に本が好きなんだなと思った。しかし彼女を見ていると15秒ほど本を眺めてすぐ棚に戻している。僕は聞いてみた


「なんでそんなすぐ戻すの?読んでる?」


「これでも私、結構読むの速いんですよ」


「え、そんな時間で1ページ読んでるの!?」


「はい」


彼女は真顔で答えた


「またまた〜僕の前でカッコいいところ見せようって腹だな!」


「はぁぁー?何を言ってるんですか」


これはチャンスと思い攻めた。いつもやられてることをやり返してるだけだ。


「慌てたところがまた怪しいですねー」


「あーはい。じゃあ分かりました。試してみますか」


そう言うと彼女は本を1冊手に取って読み始めた。そして15秒くらい経つと僕にその本を渡してきた


「次は貴方が読んでください」


「おぅ」


新庄真希という女の子が朝起きて学校に向かってる場面で1ページ目が終わった。このページから読み取れることは せいぜい主人公の名前と主人公は友達が多いということくらいだろう。ぼくと真逆じゃないかアハハ


「えーっと、確か主人公の名前は新庄真希。母親に話しかけられましたが友達にメールを返しながら適当に返事をして学校に行くところで1ページ目が終わりましたね」


遇の音も出ないとはこのことである。


「す、すげえ…」


「それに、私が見栄を張っていい所を見せなくても貴方はそのうち告白してくるでしょ?だったらそんなことする意味がないじゃないですか」


答えにくいことこの上ない


「ほ、ほら…俺が別に好きな人ができたらどうするんだよ。」


ボッチの自分に優しくしてくれる女子などいないのでそんなことは絶対にないだろうが、かまをかけてみた。これが失敗だった。


「そ、そんな軽い人だったんですね…幻滅しました今日は帰らせていただ」


「ちょっとまったぁぁこの後パフェ奢りますから!」


待ってましたかと言わんばかりに上川さんは笑顔でこう言った


「アップルジュースもつけてくださいね♪」


面白そうな本を2冊借りて僕達は図書館を出た。


「約束通りパフェ食べに行くかー。あの店でいい?」


僕が近くのファミレスを提案する


「いいですね♪行きましょう」


良かった、ファミレスに文句を言うタイプの勘違い女子じゃなかったと安心した。ファミレスに着くと上川さんと対面に座った。改めて正面から見ると可愛いなぁ。そんなことを思った。


「ジロジロ見てどうしました、そんなに見惚れるような顔してるのかなー私」


彼女には人の心を読む異能力でもあるのだろうかと疑いたくなった。


「いや、可愛いとは思うけど自分で言う?」


「いや、私は自分で自分を可愛いと言ったのではありませんよ。あなたの気持ちを想像して、その気持ちに返答しただけです。」


僕は笑うしかなかった


「あー負け負け、もうやめて恥ずかしいから。とりあえず頼もうか」


「誰に何を頼むんですか?私にお付き合いをですか?」


僕をおちょくってる時の彼女は最高にいい笑顔をしている。全く恐ろしい女だ…


「… 付き合ってくれる…の?」


「どーしましょーんー迷いますねーどーしょー」


いきなりビックリするくらいの棒読みになった上川さんの言葉に僕は笑いをこらえ切れなかった。僕は笑いながら


「俺の勇気返してくれ」


というので精一杯だった。こんな微妙な関係はいつまで続くんだろう。まだ初デートだしこんなものかと思いつつ僕は店員さんを呼ぶボタンを押した。




届いたアップルジュースを飲みながら彼女は真面目な顔で語った。


「私、リンゴが好きなんですよ。もちろん美味しいからっていうのが一番の理由なんですが、リンゴには何か特別なものを感じるんです。万有引力の法則って知ってますか?」


「真面目な顔でバカにしてるだろ。知ってるよそれくらい小学生でもなぁ!」


「まぁ、よく知ってますね!すごいですねー偉いですねーまさか貴方と万有引力の法則について話せるなんて思ってもなかったです」


上川さんはすごく楽しそうだ。


「ちょっとまってね、僕は語れるほど詳しく知らないよ。名前くらいなら知ってるけど…」


「そんなことは分かっていますよ。だって高一の時、物理のテストで12点取ってたじゃないですか。万有引力について詳しく知ってる人が物理であんな点数取るはずがありませんからね。」


「なぜそれを!!!」


「あなたのテストが何故か私の机に入ってたんです。恐らく尾崎さんのイタズラじゃないですかね」


尾崎というのは僕の唯一の友達だ。向こうは文系なので校内で会うことは滅多にないが、たまにすれ違ったら挨拶する仲である。尾崎は昔からこういうイタズラが好きなやつだった。


「あいつか……まぁ過去のことは話しても仕方ない。それで万有引力の法則がどうかしたの?」


「あぁ、話を戻してくれてありがとうございます。私ったらつい脱線しちゃって…。ええとですね、万有引力の法則を発見したニュートンという人はリンゴが木から落ちるのを見て疑問に思い、なぜリンゴは木から落ちるのか研究したそうです。そんな当たり前のことを疑問に思うって、実はとっても難しいことだと思うんですよ」


その話なら僕でも知ってるが、彼女が何を言いたいのかよくわからないので黙って続きを促す


「当たり前のことって色々ありますよね。例えば人が人を好きになったり、付き合ってる人とエッチしたいと思ったり。マジョリティの皆さんにはそれは当たり前のことですよね。でも私はノンセクシャルなのでその当たり前に当てはまらないんです。当たり前に当てはまらないというだけで偏見を受けるんですよ。私たちは。」


これを言いたかったのか。しかし僕には話が重すぎてどう返していいかわからないった。彼女は続ける


「当たり前から外れた存在が現れた時、幼稚な人はそれを小馬鹿にしたり面白がったりしますよね。例えば身体障害者や知的障害者を変な目で見る人がたまに居ますが私はそういう人たちが大嫌いです。私に言い寄ってきた人も今まで何人かいましたがノンセクシャルだと告げると (何それ病気?大丈夫?)と否定から入る人達ばかりでした。病気ではなく個性なんですよ。それを理解していただきたいと思いまして」


なんとなく分かってきたような気がした


「つまり、私というマイノリティを尊重しろと、そういうことですね」


「言い方悪いですねー。まぁでもそういうことです」


「なるほどね。真剣に話してくれてありがとう。ちょっとだけど上川さんの気持ちを理解出来てよかったよ。大丈夫、僕はそんなことで嫌いになったりしないし偏見も持たないから」


いいフォローができた俺最高と自己満足に浸っているところに


「優しいですね。性欲を理性で抑えないと私に嫌われますよ。溢れんばかりの性欲をお持ちとお伝え聞いておりますので大変だと思いますが頑張ってくださいね」


上川さんはパフェについていたサクランボを口に加えながらそう言った。今度会ったら尾崎を殴ろうと心に決めた瞬間であった。


ファミレスで充分弄ばれた後は解散することになった。初デートだし夜まで連れ添うのも気が引けたので今日はこのへんで解散ということになった。彼女のマンションの前まで着くと


「今日はありがとうございました、楽しかったですよ♪」


と 笑顔で上川さんが言った


「僕も楽しかったよ、来てくれてありがとうね」


「最後、私になにか言う事ないんですか?」


こ、これは…また弄ばれるのかと思ったが、今回は何故かリアリティがあった。


「んーと…また遊んでね?」


チキン発動!全力ではぐらかした。


「はー全く… ほんとに男ですか… まぁその言葉には また遊びましょうとお答えします。でも私たち、なぜ今日一緒に遊んだんでしたっけ?一緒に遊ぶ大義名分ができればまた遊んであげてもいいんだけどー」


えーいどうにでもなれー!!


「上川さん、す、す好きです!大好きです!付き合ってください!」


「う……ストレートに言われるとちょっと気恥しいですね。いいですよ。付き合いましょうか」


ようこそ、spring


今まで生きてきて本当によかった。そう思えるだけの感動が僕を満たした


「あ、ありがとうございます」


照れながらそう答えた


「でも、この先いっぱい我慢させることになると思うけど。ねぇ、貴方は本当にそれでもよかったの?」


「愚問ですね、上川さんのためなら性欲なんて粉砕してやりますよハッハー」


上川さんは可愛く笑った


「ありがとう。これからよろしくね」


こうしてノンセクシャルな彼女とのお付き合いが始まった



ここまで読んでくださってありがとうございます。楽しんでいただけましたでしょうか。話がまとまり次第続きを書きたいと思います

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