VSスライム
少し内容修正しました。
体の動きを確かめるように屈伸したり、シャドーしたり、跳んだりはねたりしている銀髪ロリ魔王(全裸)。
うーむ、封印状態の透け透けでは役得としか思えなかったが...生身の状態で真っ裸で動き回られるとひじょーに困ったことになるのは確実だ。
いくら俺が最高峰の紳士と言ってもそこは健全な男子高校生、限界というものもある。決してロリコンではないよ?
と、いうか羞恥心はないのかこの魔王...。
「とりあえずこれ着てろ」
「わっぷ!」
ジャージの上着を脱いで放る。
シルビアの背が低いせいで顔面を覆ってしまい少しあたふたしていたが、言われたとおり着替え始めた。
完全にブカブカだ。
大事な部分はきちんと隠れているのでまあ、良しとする。
と、ジャージの匂いを嗅いでにへらーと恍惚の表情を浮かべるロリ。
ちょ!?止めてくださいシルビアさんすごくこそばゆいです!!
しばらくして満足したのか腕を組み満足げに頷いた。
「うむ。封印の解除、我の名の件、それにこの貢ぎもの」
ジャージは貢いだわけじゃないんですが....。
「これほど尽くしてもらいながら、何もなしでは魔王の名が廃る!よって褒美を取らそう!無論、我に出来ること限定だかな」
ばばーん!と効果音がつきそうな感じで仰るロリ魔王様。
褒美?褒美だとぅ!?
予想もしてなかった展開に光を越える速度で思考する俺の頭脳。
むう、何でも何でもか...色々ある気もするが...シルビアが出来ること限定というのが.....。
ふと我に返った。
そうだ、そうだった!
目まぐるしい状況の変化に流されてすっかり忘れていたが、肝心なことを思い出した。
「シルビア一つ聞くが」
「うん?」
「俺を召喚したのはお前で間違いないな?」
「うむ、その通りだ!」
肯定した。
めちゃめちゃ大いばりである。
「なるほど、なら逆のこともできるはずだな?」
「...え?」
意味が分からなかったのか怪訝な表情だ。
「さっきの褒美の話だよ。俺を召喚したのがお前なら逆のことも出来るはずだろ?俺を元の世界に帰してくれ」
そう望みを口にする。
そもそも、シルビアが俺を呼び出した目的は封印の解除だ。それはもう叶っているわけで、それならば俺がここにいる必要は全くない。
「っ...。わかった、それが褒美でいいのだな?」
ん?何か変だなシルビアのやつ何か言いたいことを無理やり飲み込んだような?ま、気のせいだろう。
「ああ、それで良い」
「......」
いやー、一時はどうなることかと思ったけど。無事に帰れそうで良かった良かった。終わってみれば良い体験だったな。妄想乙って言われそうだが。
「開け異界の門」
俺が帰還に心躍らせているとシルビアの声が空間に響き渡る。
「空間を裂き、刻を超え」
俺の足下に描かれる魔方陣。
「此方より彼方、彼方より此方、異なる世界よ、今ここに!」
そして呪文が完成する。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「どー言うことだよ!?」
「いひゃいいひゃい」
ぐにーんとシルビアの頬を思いっきり横に引っ張る。
おお、以外と伸びる...じゃない!
結論から言おう。
帰還できませんでした!
こっちに来たときと同じように魔方陣が点滅後光ったのでよっしゃー!と喜んでたらこのざまだ。解せぬ。
期待していただけに落胆が激しすぎる。
そんなわけで怒りの全てをシルビアさんにぶつけているのだ。
「いひゃいいひゃい!ひゃめーてー!」
ぐにーんぐにーんぐにーん
ふぅ、ちょっと溜飲がさがった。
その隙にバッと手を振り払い距離を取る魔王。
「ぐぬぬぬ!いくら下僕とはいえ主に手を上げるとは許さんぞ!」
下僕になった気はさらさらないんですが。
「そもそも、魔法に失敗?したお前が悪い。褒美はどうなった?」
いや、まじでどうなったんすか?シルビアさん。
「ぐっ、それは...えぇい!うるさい、うるさーい!」
逆ギレした。
「主に手を上げるとどうなるか教えてやろう!我が命に従い、出でよ!【召喚】」
「って、まじか!」
魔方陣が展開し、その中から現れたのは一匹のモンスター。
「ってスライムではないか!?」
そう有名なモンスターでるゼリー状の魔物だ。
ぷよんぷよんとその場で楽しそうに跳ねている。
ってか呼び出した本人がなぜだか驚いてるんだ。
「ぬー、まさかこんな雑魚を呼び出してしまうとは」
確かに有名な某RPGのせいでスライム=雑魚という認識が広まっているが、ゲームによっては打撃斬撃など物理攻撃がほぼ効かなかったり、何でも吸収したり、分裂増殖したり再生したりなど厄介極まりないモンスターだったりする。
あのスライムはどちらに分類されるのか....。
後者なら尻尾をまいて逃げるしかない。
前者でも勝てるかわからないけどな!
「仕方ない、我慢してやろう」
ため息交じりに呟くシルビア。
その言葉にスライムがピクリと反応した気がした。
んー?あのスライム怒ってる気がする。
目も鼻も口も何もないの表情など全くわからないが、なぜだかそんな気がする。
「スライムよ、下僕を攻撃するのだ!」
シルビアが命令した瞬間、スライムはクルリとシルビアに向き直った....気がした。
「へっ?あ、こらやめろ!止めるのだ!?」
そしてシルビアを攻撃し始めるスライム。
スライムの攻撃シルビアに1のダメージ。とか出てそうである。
雑魚とか言われて怒ったんだろうか?
しかし、全く痛そうに見えない。ぼよんぽよんしてるし...。
「いたっ!こらっ!こっちじゃない!」
シルビアは痛いらしい。
「くっ!このー!」
シルビアの反撃。
MISS、スライムに0のダメージ。
拳を握って反撃するがぷにょーんと凹んだだけで元に戻ってしまった。
スライムの攻撃、シルビアに1のダメージ。
「っの!調子に乗るな-!炎の嵐よ、全てを飲み込め!【ファイアストーム】!!」
腕を払いスライムを弾き飛ばしつつ、即座に呪文を完成させる。
─本来なら荒れ狂う炎の嵐がスライムを確実に消滅させていただろう。火属性中位範囲魔法。たかがスライム一匹に使用するのは過剰過ぎる攻撃だ。しかし...。
シルビアは呪文を唱えた...しかしMPが足りない!
そんな文字が目に映るようだ。
スライムに向けた手から魔方陣が展開するもポシュンと変な音と共にすぐに消えてしまった。
「はえ?」
そこをチャンスとみたのかはね飛ばされたスライムがすごい勢いで戻ってきた。
「ちょっ!?まっ!!」
慌てて止めようするがスライムの勢いは止まらない。
そりゃ、そうだわな-。不発だったとはいえ発動してたら確実に死んでた。俺でも止まらない。
スライムの攻撃、クリティカル!シルビアに2のダメージ。
勢いがついていたからかはたまた顔面に直撃したからかさっきよりも痛そうだ。
スライムの攻撃、シルビアに1のダメージ。
スライムの攻撃....
....
...
..
しばらく、ずっとスライムのターンが続き。
ちーんっと床に突っ伏したシルビアの上にスライムが勝ち誇っていた。
スライムは魔王を倒した。
おう、魔王よ死んでしまうとは何事だ。
死んでないだろうけど....。
「おーい、大丈夫か?」
言いながら上に乗っていたスライムをしっしっと手で払うとすんなり去っていった。
床に突っ伏しているので表情は全く見えないが、
うぅっとかグスグスとか聞こえるのでこりゃ泣いてるな...。
殺そうとしたのにボコられただけで済んで良かったと思う。
さて、これからどうするかと考え込む俺に、
「貴方ここで何をしてるの?」
と、冷ややかな声がかけられた。