魔王復活
「さて....」
そう声に出して辺りを見回す。
足の裏の感触やシルビアとの一連の流れから、ここが俺の部屋じゃないことは明白だけど....。
シルビアはというと、名前がそんなに気に入ったのかニヤニヤしながら何度も口の中で転がしている。
どうやら室内らしい。
床は石畳で周りの壁にはそこかしこに豪華な、けれど禍々しい装飾が施されている。
体育館くらいだろうか?かなり広い部屋だった。
奥のほうに一つだけ豪華な椅子が置いてある。
部屋全体がうっすらと光っているようだ。
「まさに魔王の城って感じだな...」
「すごいであろう?」
俺のつぶやきに反応して飛んでくる。
完全にどや顔だ。
少しイラっとしたが確かにすごいテンション上がる。
「確かにすごい」
思ったまま口にすると、シルビアがふふーんと胸を反らした。
うん、すばらしいほど真っ平らだ。
話がずれた。
「ところで封印を解けってのは?」
今のシルビアをみれば明らかに普通の状態じゃないことはわかる。問題は原因何だが...。
「おお、あれをどうにかして欲しいのだ」
ポンっと手をたたき、指さす。椅子があった方角だ。
つられて視線を移すとそこに巨大な水晶が浮かんでいた。
「な!?」
さっきまでは確実に無かった、どうなってる!?
縦5メートル横3メートルほどの歪な菱形をした巨大な水晶が床から1メートル離れて浮かんでいる。
その中心に横に浮かぶシルビアと瓜二つの幼女が収まっている。
いや、瓜二つではなく本人そのものだ。
水晶の中身が本体で意識だけ外に出てきているってことだろう。
しかし、これは.....。
水晶自体発光しているのか、さっきよりも部屋が明るくなっている。
水晶の方に近づいてみる。
ふよふよとシルビアもついてきた。
水晶の周りを1周し、ついでに近くにあったやたら豪華な椅子もしらべてみる。
仕掛けらしきものは一切なし....か、なるほど。
「うん、無理」
「えぇぇぇぇー!?」
俺が出した結論に泣きそうな声を上げる。
「と、言っても仕掛けがあるわけでもなさそうだしな」
肩をすくめる俺。
うん、これはどーしようもない。
「そうだ!我の下僕にしてやろう!」
何をどう解釈したのか訳のわからないことを宣うロリ。
「断る!」
「エェェー?!」
あー、やっべー。一気にテンション下がった。
断られると思わなかったのか、
えぇっと、うぅっとか言いながら視線をキョロキョロさせるシルビア。
「ならば、世界の半分を貴様にやろう!」
「どこの魔王だよ!?」
思わず突っ込んでしまった。
魔王というのはまぁ、間違ってないのかもしれないが実際に封印されてるし。
しかし、今の台詞は今どきの魔王が言ってはいけない台詞だと思う。
「あ、あれ?何か間違ったかな....?」
などとあたふたしてるが、こいつの知識はどうなっているんだろう?
「え、えっと。この我のものとなれ勇者よ!」
「それ違えぇぇー!?」
勇者じゃないし、その魔王とシルビアじゃ似ても似つかないし!
主に体型!あっちはバインバインに対してこっちはつるぺたすとーんだ。確実に負けている。
「うぅー、他に魔王らしいこと...」
色々おかしいがそういう問題じゃない。
「そもそも、これの解き方がわからないんだって」
そう言って水晶に触れる。
『警告、警告!隔離空間ニ存在スル《魔王》ニ接触スル対象ヲ確認』
途端頭の中に直接無機質な声が響き渡る。
『封印ノ損傷ヲ確認。損傷率0.5%。修復圏内デス修復ヲ開始シマス。尚、接触対象ニヨル封印ヘノ再損傷ヲ防グ為。接触対象ゴト封印ヲ再構築シマス』
は?接触対象ごと、封印を再構築?
えーっと、接触対象ってのは俺だよな?他にいないし....。
で、それごと封印を再構築というと.....ちょっとまて!?
理解したときはもう手遅れ。
視界の端でシルビアが喜んでいる顔が見えた。
水晶を中心に展開された魔方陣から光が溢れる。
思わず目を閉じる。
目を閉じても突き刺さる光量とても開けてなどいられない。
そして....。
『ERROR、ERROR。封印ノ再構築ニ失敗シマシタ。封印ノ再構築ニ失敗シマシタ』
響く声。
光は収まり視界がゆっくりと回復していく。
そこに、
「フフフ、ハッハッハッハ!我復活!」
水晶は元から存在しなかったように跡形もなく
両手を高々とあげ、嬉々としているシルビアがいた。
ようやく復活です。まだ序盤なのに結構時間がかかってる(汗)