戦いの果てに少女が見たものとは
ハーイ
目を覚ますと簡素な部屋の中で寝ているようだった。
「ここは何処だ」
「おや?目が覚めましたか?」
優しい顔をした老人が白いロングドレスのようなものを纏い座っている。
体を触る彼女は薄い布以外なにもつけていないことに気づく慌てふためくと笑いながら老人は言った。
「大丈夫さ、お嬢さんに触ったのは僕の助手である女性だけだから着替えやなんかもね」
片目でウインクをすると再び机の方へ向くと何かを手に持ちながら話はじめる。
「目を覚ましたばかりで寝てて構わないが答えてくれるかな?どこから来たんだい?」
これも仕事でねと肩をすくめると少女の方を向くこともなく続けだす。
「私はマヌイから来た」
「マヌイだって?ここがマヌイなんだけど」
「じゃあ次だけど君は誰だい?」
「私の名は・・・・」
そう言った途端、少女の中に疑問めいたものが浮かび上がってくる。
(ここがマヌイだと?)
自分の知っている国は多くの建物が魔王の軍勢によって荒廃した大地になっていた。
森は焼け地は汚染され辺り一面の死が溢れる世界だったはずだと少女は悩んでいる。
(何かの罠なのか・・・?)
いや、私も多くの敵と戦い、卑怯な罠にも何度も陥りそうになったが目の前の老人は、そういった類でもないらしい。
「すまない・・分からない」
「そうですか、でも、この辺りで貴方ぐらいの年頃の子が行方不明なんて聞いてないですし」
「今年は何年ですか?」
「ん?今かい?1309年だよ」
「それはラドルフ暦か?」
「うん、そうだけど」
(何だと・・・私が居たのは309年だったはずだぞ1000年以上も先なのか)
寝転びながら天井を見上げながら困惑している。
「まぁ、まだ混乱してるみたいだし君が倒れているところを救ってくれたルドワール君に来てもらおうかな目覚めた報告をかねて」
私は、そんな言葉を聞きながら、いつの間にか寝てしまっていたようだ。
寝ることなど出来なかった戦場の中で、ここまで安心して眠れることはなかったが、どうやら此処は安全なようだったから。
□ □ □
「やぁ来たねルド君」
「ライル先生もお元気そうで」
「まぁね、まだ生きてるよ」
「ところで彼女は」
「どうやら記憶喪失みたいだね、このままだと憲兵隊に引き渡すことになるんだけど、どうするね?」
この国で身元不明の者や出所がわからない人間は街の警護をしている憲兵に引き渡される決まりとなっていて自由は奪われてしまうことになる。
「ふむ、それは困りましたね」
ライルは薄く笑いを浮かべながら、こちらを見ているとルドワールは不味いと思った。
「まさか私に身元引き受け人になれと?」
「名案じゃろう?」
はっきり言って面白がっているのが手に取るようにわかるが記憶喪失の女性が自由を奪われることも良くは思えなかったので彼女に任せることにしようと後ろを向くと1人の少女が立っている。
「私は自由を奪われるのか?」
「ルールにのっとればですが」
「貴様の名は?」
「ルドワールです」
不思議な女性だなと思う。まるで上官と話しているような気さえもするし立ち振舞いからすると軍属であるのかと思うが見たことはないなとルドワールは考えるのをやめた。
「娘との二人暮らしですが貴方さえよろしければ」
「す・・すまなかった助けてくれたのだったな非礼を詫び礼を言う」
「気にしないで下さい偶然ですから」
そして彼女がルドワールと行くことを了承すると自分の屋敷へと向かうことになるのです。
デース