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【番外編完結】他力本願英雄  作者: 寒天
最終章 神々の戦い
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第217話 理想か現実か

「――消えよ」

「当たらないさ」


 俺以外の全ての人間を自らが創造した理想郷に幽閉した創造神、最後の一人である俺を滅ぼそうと攻撃を仕掛けてくる。

 創造神の攻撃は、苛烈の一言だ。膨大なエネルギーを持っていた魔王神を取り込んでいる以上当然の話だが、力を大きさだけで見れば魔王神を超えている。その無尽蔵の神の魔力は、ただ振り回しているだけで世界を塵にしてしまいそうな破壊力を有していた。


 もっとも、どんな強力な攻撃も当たらなければ意味がないがな。


「クッ――なぜ当たらぬ!」

「お前が下手くそだからだよ!」


 創造神は力でも速度でも、神の力を発動できない今の俺より遙かに勝る。ステータスを数値化して比較するのなら、象とアリの戦いだろう。


 だがどれだけ数字で俺を越えていようが、操る本人がヘボなら対処は容易い。


 魔王神は素の技量で言っても俺以上の達人だったが、創造神のベースとなっている女神はド素人だ。ただ生まれもった力を振り回しているだけ……そんなものにやられてやるほど、俺も安くはない。

 防御すら不可能の超破壊力だろうが、事前動作からの気影洞察を駆使すれば全部避けることは難しくない。


「こいつがあればすぐにでも達人になれただろうに……残念だったな」

「おのれ……それは妾の所有物ぞ!」

「そうかもしれないが、生憎今は俺の手の中にあるんでね」


 俺は創造神の広範囲殲滅を目論んだのだろう光の雨の範囲から抜け出し、手にもった光輝く力の塊を見せつける。

 あらゆる死者の情報にアクセスし、過去に存在したあらゆる情報と経験を得ることができる死の世界破片(ワールドキー)を。


「あやつ――余計なことをしよって!」

「お前に全部持っていかれるのだけは嫌だったんだろうな。吸収される直前、俺に世界破片(ワールドキー)を全部投げ渡したんだから」


 創造神は忌々しげに俺を睨み付け、それを見た俺は更に余裕の笑みを浮かべてやる。ぶっちゃけ、避けることはできても現状奴が垂れ流しにしている魔力の壁を破ることが不可能であるため、これが精一杯の抵抗だ。


 俺の手元には、元々所持していた正義と欲望に加えて『死』『生命』『武具』『星』の四つの世界破片(ワールドキー)が揃っていた。気がついたのはついさっき、女神の箱庭を抜け出した後だったけどな。

 これは魔王神が最後の足掻きとして俺に託したものであり、譲渡に失敗した時に備えて神でも簡単には見抜けない隠蔽と封印をこれでもかとかけた状態だ。おかげで中々気がつかなかった訳だがな。

 まあ、封印されていなくてもこれを俺が使うことはできないが。いくら俺の魂が頑丈に出来ていると言っても、3つ目はただの自爆にしかならないだろうからな。


「下を見ないからそんな無様を晒すんだよ」

「それが産みの神に対する言葉か!」


 思い通りにならない現実に創造神の攻撃は更に苛烈になるが、技術不足の上に冷静さまで欠いた攻撃が当たるわけがない。

 創造神が……女神が何故こんなにもヘボいのか。それは簡単な話で、神だからだろう。

 上を目指す強い意思に憧れ、だからこそ下に期待し下に学んだ魔王神とは180度違う存在であった女神。つまり下を見下し下の存在より上にいることができれば満足するような性根の持ち主が、下界の生物がコツコツ積み上げてきた技術なんてものに興味を示すはずがない。ただただ「めがみの こうげき てきは しんだ」なんて、それこそレトロゲームみたいな過程だけで誰にでも勝てる確信があっただろうしな。

 戦略も戦術もなく、ただ力を振るうだけで全てを蹂躙できる確信がさ。


「――いい加減、チョロチョロと逃げ回るのは止めよ! 元より貴様に勝ち目なぞないのじゃからな!」

「ほう? そりゃまたどうして?」

「言われねばわからぬのか? 貴様が阿呆であることは知っているが、戦闘に関してだけは少しは知恵が回ると思っておったのじゃが……買いかぶりじゃったかの?」

「俺は確かに頭がいいとは思っていないが……お前よりはマシだと思っているけどね」


 神様視点からしか物事を見ず、ただただ歪んだ優越感を満たすことにしか興味を示さない。そんなアホよりは俺の方がましだろう。

 絶対的優位を、自らの優位を保証してくれる神の座に人が届きうることを知った途端に堕落をもたらす理想郷に拉致するような奴よりはな。


「つくづく無礼な……フン、理由など言うまでもあるまい。妾の力をお前が破ることなど不可能。となればこのままじわじわといたぶり続け、いつかは避けきれなくなったお前が消滅。それがこの些細な反乱の結末じゃからじゃ」

「確かに、今の俺じゃ……神の領域に入れない俺じゃお前の神の気を破ることはできない。でも、それはもう一度神の力を発動させればいいだけのことだろ?」

「不可能じゃ。貴様のまがい物の神の力は、二つの世界破片(ワールドキー)が完全解放されることでのみ成立する。正義と欲望……そのどちらも人の感情をベースに発動するものであり、既にこの世界の全ての民は妾の理想郷に送っている。其方に勝ち目があるわけがなかろう」

「戻ってくるさ。俺はお前の理想郷のあり方……その全てを否定することはできないけれど、それでも戻ってくる」


 創造神は俺の言葉に顔をしかめる。神が用意した、ただひたすらに自分にとって都合のいいことが起こり続ける世界。

 そんな理想郷(せかい)を、何故捨てるのかが全くわからないって顔だな。


「……ありえぬな。既に、其方が妾の世界から脱出してきたからくりはわかっておる。恐らくは欲望の世界破片(ワールドキー)のせいで誤作動を起こしたのじゃろう?」

「……まあ、あれは確かに誤作動だろうな」

「妾の理想郷は取り込んだ人間の望みを読み取り、それを再現する。しかし其方の中にはあらゆる欲望を網羅した世界破片(ワールドキー)が存在していたため、其方個人の望みを上手く読み切れなかった……故に、理想郷に綻びが生じたのじゃ」


 創造神は、己の世界が破られた原因を正確に分析していた。

 俺の場合、望んでもいない王様って地位、考えたこともない甘い家族、はっきり言って不気味としか言えない都合のいい女達と……そりゃ逃げ出したくなるだろって展開の連続だった。

 だが、あの世界の中で一瞬神の姿になったことで、あの世界のことは大体把握できている。あそこは間違いなく取り込んだ人間の理想を叶え続ける世界であり、俺に起きたのは欲望の世界破片(ワールドキー)に蓄積された無限の望みの中から比較的多いものが採用されたために起きた現象だったのだ。

 まあ、ざっくり言えば大体の人間が持ち合わせている欲望……金、権力、異性だな。


 もっとも、あの雑さは間違いなくあの世界の――人の心を全く理解していない、するつもりもないのだろう創造神の性能の限界だけど。


「今まで歩んできた人生を全否定されるかのような自分に都合がいい世界。それが理想郷の正体だ」

「何の問題があるのかのぉ? 己の望みが叶う、それ以上に何が必要なんじゃ?」

「お前の力によって望みを叶え、ただただお前の存在に依存していく人間を見るのはさぞ楽しんだろうがな。俺みたいな奴にとって、それは苦痛でしかないんだよ」

「わけがわからんの」

「……理想郷の中でなら、望めば何でも手に入るだろう。強大な力が欲しいと思えばあの箱庭の中でのみ使える絶対的な強さが、莫大な富が欲しいと思えばどんな無茶苦茶な理論であろうが絶対に何をしても大成功、女にもてたいと思えば個性も過程も無視して全員傅く。そんな人生こそが理想って奴は大勢いるだろうし、その考えを否定する権利は俺にはない。でも――」


 何か一つでも自分の手で勝ち取った宝があるのならば、俺はそっちを選ぶ。そういう奴も、きっと沢山いるはずだ。

 俺は、きっと通じないと思いながらも俺の意思を神へと伝えた。


「……下らぬ。下等な種族がどれほど足掻こうが、神の慈悲には決して及ばぬ。比べるまでもない。第一、一体どうやって妾の理想郷からここまで来るつもりだと言うのじゃ? 百歩譲って妾の理想郷よりもこの地を選ぶとして、其方以外にそれを成せる者はおるまい」

「そんなことはない。お前の世界を破る手段は、実は超簡単だ。外から道さえ作ってやれれば、後は中から出たいと思えば――外にある世界破片(ワールドキー)が拾えるように意思さえ向けてくれれば簡単に出られるさ」

「其方が拾いに行くというのか? それができると思っているのか?」

「まさか。いくら何でもお前と戦いながらそんなことができるほど俺も器用じゃないよ」


 理想郷から出てくる条件は、中の本人が理想郷を捨てて外に出ることを願うこと。そして、その願いを感知できる世界破片(ワールドキー)持ちが外から救助することだ。

 だが、救助役をやってる余裕は流石にない。何度やっても創造神のやり方では負けない自信はあるけど、片手間でやれるほど簡単な話でもないのだ。


 まあ、別に俺がやる必要なんてないんだけど。


「お前がそんなことを気にする必要なんてないだろ? とにかく……絶対に、この世界に戻ってくる奴は大勢いる。与えられた幸福よりも自らの手でむしり取った勝利に価値を見いだす我の強い人間は、必ずいるんだよ」


 考えてみれば、戻ってくる順番はそのまま自分への自信の強さとも言える。

 俺は世界破片(ワールドキー)関係の例外だとして、最初に戻ってくる奴は世界で一番我が強い奴ってことになるのかな?


「――もう、戯れ言は良い。人間は妾の慈悲の中でのみ生きておればよいのじゃ。それが嫌ならば――妾の怒りによって死ぬがよい」


 俺の言葉に我慢の限界を迎えたのか、創造神は再び攻撃態勢に入った。

 あれを回避するには――ん?


「……来るとは思ってたけど、もう来たのか」

「ええ。あんなつまらない世界、あれ以上いたら気が狂ってしまいますもの」

「……なんじゃと?」


 空から光でできた箱船が降りてきた。一人用の箱船には――希望の力によって創られた、最強の防壁でもある箱船の中には、一人の女性が乗っていた。

 早く出てくる奴ほど我が強いってさっき思ったけど……なるほど、確かに世界我の強さランキングナンバーワンに全く違和感ないな。

 箱船の中から、遙か高見より世界を見下すその姿……まさに我の強さで右に出るものはいないだろう。


「一番手はロクシーか。戦闘能力ゼロのくせに精神力だけでよくもまあ、破れるものだな」

「何をやっても上手くいく世界……少し遊ぶくらいならいいでしょうけど、全てが思い通りに行き過ぎてすぐに飽きてしまったのですから仕方がありません」


 現れた女性――ロクシーは平然と、優雅に笑う。

 ……うん。やっぱり、ロクシーはこうじゃないとな。傲岸不遜に気高く邪悪に笑ってこそ、こいつは魅力的なんだから。


「……あり得ぬ」

「あら? あれがあのつまらない遊技場を創ったという神とやらですか?」

「そうだけど……事情はどこまで?」

「あなたの弟子に、大体は」

「そっか。まあ、上手くいっているなら他の連中もそのうち来るだろうな」


 俺は予想外の事態に唖然としている創造神からロクシーを守る位置に飛び、構える。あの箱船の守りがあるから大抵の攻撃は大丈夫だと思うけど、本気で壊しに来られたら流石に危ないからな。

 箱船の担い手――アレス君は順調に頑張っているみたいだし、もうそんなに心配することもないだろうけどさ。


「その箱船は、妾の聖剣……馬鹿な。妾の理想郷が妾の力で破れるわけが……」

「どうした? 予想外だったか?」


 俺は挑発的に笑う。弟子自慢をするついでに、傲慢な神をこれでもかと笑ってやる。冷静さを取り戻し、その能力を効率的に振るうことがないよう、徹底的に煽り倒してやる。


世界破片(ワールドキー)の大半を保有している俺が動けない以上、お前の理想郷から救助を行えるのはもう一人の世界破片(ワールドキー)ホルダーである俺の弟子、アレス・ニナイただ一人。しかしアレス君が保有するのはお前が世界破片(ワールドキー)を素材に創造した女神の聖剣アーク。俺が最後の希望として頼った聖剣はいつでも自分の制御下におけるのに無駄な努力をしている――とでも思ってたんだろ?」

「ヌ……」

「自分を優位に起きたくて仕方が無いその性格に救われたが……それは甘いな。お前の力に――聖剣に頼るだけだったら簡単に支配権を奪われてお終いだろう。だが、俺の弟子だぞ? 手に入れた力に依存するようなぬるい鍛え方をしていると思うか?」

「……何が言いたい?」

「俺が希望を託したのは聖剣じゃない、アレス君だ。聖剣を入手してから徹底的に鍛え上げ、アンタの聖剣からアレス君の力になるまで磨き上げた。その分制御には苦労したみたいだけど、だからこそそっちの意思で俺の嵐龍にかけていた一方的な加護は簡単に切れても、剣そのものの支配権は奪えない。その時点で気づければよかったのにな?」

「わ、妾の力を奪ったというのか……?」


 わなわなと創造神は震える。失策、失敗……どれも初めての経験なのだろう。

 おかげで時間が簡単に稼げるな。


「失敗は誰にでもありますわ。だからこそ、賢い者は失敗したときどうするかのプランを無数に立てる……神様ともあろうものが、そんな常識すら知らないとはおかしな話ですわね」

「賢者は失敗しても問題なく軌道を修正して成功を導き、馬鹿は馬鹿だからこそ失敗することも前提に行動する。そして、自分を賢者だと思っている馬鹿は成功を前提に考えて破滅する……だったか?」

「ええ。商売を絶対にやってはいけないタイプ……昔の話をよく覚えていましたわね?」

「お前の手伝いをさせられる前に嫌ってほどいろいろ教わったからな」


 ロクシーと楽しく神を煽りながら会話する。話を聞いているだけで血管切れそうな凄い形相になってるけど、手は出してこない。

 口での攻撃に武力で返したら負けを認めるみたいで嫌なんだろうな。気持ちはよくわかるぞ?


「ク、ク……!」

「そら、時間切れだ」

「な――ッ!」


 創造神がまごついている間に、空から無数の光の箱船が降りてきた。全人類――の半分くらいかな? 戻る決意をしたのは。


「遅くなったな」

「待たせちゃったかな?」


 一際早く降りてきた箱船から、メイとクルークが出てきた。

 まあこいつらは当然出てくるだろうけど……予想よりも遅かったな?


「ああ。大分待ったよ。……お前らならもっと早く出てくるかと思ってたけど?」

「はは……ちょっと、あの世界も捨てがたいものがあってね。自分でもびっくりだけど、僕の中にも幸せな家族願望って奴があったらしい」


 クルークがちょっと言いづらそうに呟いた。

 家族……父親か。クルークの親父さんはまあ、アレな人だったからな。それが真っ当に父の愛を注いでくれる姿でも見せられたのかね?

 それならそれで、あの世界で幸せな幻想にしがみついてもよかったと思うけど……そう簡単に捨てられるようなもんじゃないよな、お前の人生は。


「うむ……もふもふ天国は反則だ。あそこから出るのはかなりの難関だった」

「……もふもふ?」

「しかしどれもこれも懐いてばかり……アレではダメだ。こちらが求めてもつれない態度を取る子もいれば気まぐれに甘えてくる子もいるからこそいいのであって――」


 メイはなにやらぶつぶつと呟いている。

 ……こいつの理想郷とはどんな世界だったのだろうか? ……正直知りたくない欲望に満ちたものだったんだろうな。


「ゴホンッ! ……で、最終決戦ってことでいいのかい?」

「あ、ああ。これだけ戻ってくれば十分だ。……それじゃあ神様? 最後の戦いと行こうか」


 気を取り直して、俺たちは再び神に向かい合う。

 各地に続々と戻ってくる、神の理想に抗った者たち。彼らには、何でも手に入る理想郷以上に大切な者があるのだろう。それは本人にしか価値のないような思い出や、一人では絶対に完結できない家族友人、あるいはそれを得るために積み重ねてきた時間かも知れない。

 しかし、今この世界にいる住民達はどいつもこいつも神にすら譲れない何かを誇っている連中だ。その強い正義と欲望は、より純度の高い力を俺にもたらしてくれる――。


「【モード・他力本願英雄】。これで神の力にも手が届くな」


 恐らくは、これが最後の変化。神の力を再び発動させた俺は、創造神に向かって歩み出す。

 創造神はそんな俺を前に、一歩引いた。今までの戦いから、力が拮抗――とまでは行かなくとも戦闘が成り立つところまで行ってしまえばアウトだと自覚しているのかな?

 しかし創造神はそんな自分を叱咤するかのように、勝ち誇った笑みを浮かべる。まだまだ諦めるつもりはない――切り札は残っていると告げるように。


「フ、フフフ……確かに、これは想定外であった。妾の半身の奴が言うとおり、慈悲の中で生かしてやるよりも滅ぼした方がよかったのかのぉ?」

「滅ぼしちまったら見下せなくなるぞ? ……魔王神が世界の破滅を望んだのに対し、お前の主張は特に聞いていなかったが……お前は、別にこの世界を守ることを願ったわけじゃない。ただの現状維持派だろ?」

「その考えは、甘かったのかもしれぬ。ならば、妾の慈悲を拒絶した愚か者だけは殺す。それで全ては上手くいくじゃろう」

「気に入らないことは圧倒的な力で黙らせる。まさにガキの発想だな」

「神に向かってその口ぶり、それだけで万死に値すると知れ」


 創造神は、その力を解放し三つの空間転移門を作成した。かなり巨大だ。

 底から出てくる戦力は、当然女神の手駒の中で最強の存在である、あれだろうな。


「……精霊竜か」

「火の精霊竜は半身のシモベであった魔王の一体に敗北してしまったが、残りの三体は其方らの尽力により無傷……いかに神の力を持ったとはいえ、妾と三体の精霊竜を同時に相手にできるのかや?」


 ……精霊竜達は、そろって敵意むき出しで睨んでくる。

 仮にも昔は助けられたこともあったし、できれば戦いたくはなかったが……まあ、お互いの立場を考えればこうなるのも必然か。元々人の話を聞かない連中だったし、結局人間なんて都合のいい道具としか思ってないんだろうしな。

 とはいえ、流石に四魔王と同等の力を持つ精霊竜三体と創造神を纏めて相手にするのは無理だ。流石に技術云々でどうにかできる戦力差ではない。

 もちろん、それは俺が一人だったらの話だけどさ。


「それじゃ、僕は風の精霊竜を相手しよう」

「なら私は……そうだな。地の精霊竜にするか」


 メイとクルークが前に出てくる。

 そう。俺には仲間がいるからな。一人で相手しきれないのなら、こいつらに頼ればいいだけのことだ。


「フ……フフフ……。これはこれは、大層な援軍だのぉ。よもや世界破片(ワールドキー)すら持たぬ人間が、妾の精霊竜と戦えると思っておるのかや?」

「そうだな……確かに一対一でやるのは厳しいだろうな」


 いくらメイやクルークであっても、世界破片(ワールドキー)なしで魔王級の存在とタイマン張れってのは無茶だろう。

 欲望の欠片を持った状態で挑んでなお集団戦術が必要だったわけだしな、魔王相手には。

 だから、もっと戦力を増やさないとな。


「それじゃあ、僕は水の精霊竜を相手にしますよ。すっかりシフル……いや、不朽の剣からも加護取られちゃいましたし、遠慮する理由ないですよね」

「アタシはメイと一緒にやればいいわよね!」

「では、私は風だな」

「ワシは娘の援護に回ろう」

「ならば、私は息子の弟子のサポートに回るのが筋かな?」


 空から降ってくる箱船から、箱船を作り出しているアレス君を筆頭に続々と戦力が現れる。

 カーラちゃん、グレモリー、バースさん、親父殿……他にも、大勢の人々がここに集まってきていた。もちろん人間族だけではなく、鳥人族(バードマン)山人族(ドワーフ)も大勢いる。ある意味今こそが世界最強戦力が集まっているな。

 輪には加わらずに槍を構えている吸血鬼もいることだし、まさに二度と見られない最強の軍勢だ。


「あらあら、まさか信仰対象を滅することになるとは」

「……あれ、教皇様? いいんですか? あれ、あなた方のご神体でしょ?」


 集まってきた人々の中に、女神教――今は創造神となっている神を崇める宗教のトップであるコーリア教皇までいた。

 何かやる気満々だが、宗教屋が神に刃を向けるのはありなんだろうか……?


「シュバルツ様? 信仰とは、自らの心の中にいる神に捧げるものなのです」

「……つまり?」

「自分にとって都合がいいから祈るのであって、実物が人に対して不都合な存在ならばぶっ殺してもっと都合のいい神を新しくご神体に据えればいいんですよ。宗教とは神が人を選ぶのではなく、人が神を創ることで成り立つのです」


 ニコニコと心が浄化されるような笑みを浮かべながら非常に物騒なことを言い放った教皇様。

 何というか、宗教の闇を見たような気分だな……。


「ま、まあ、これでお前の守りを破る戦力は揃った。これだけいれば、何の問題もない」

「――この、人間風情が……!」


 創造神は更に怒りをたぎらせているが、もうその身を守る護衛はいない。一斉に飛びかかっていく世界同盟軍により、精霊竜達はとても俺の邪魔をしている余裕なんてなくなったからな。

 これで安心して一対一の戦いができるってもんだ。


「魔王神は最強の敵だった。だから集団で袋だたきにするのもやむを得ないって話だったが……お前程度に集団で殴りかかるのもみっともない。俺一人で戦うことにしようか」

「人間が、図に乗るのも大概にするがいい……!」


 最後の戦いは、魔王神との死闘だ。

 これは終わりに向けての大掃除みたいなもんであり、戦後処理の一環。まあ、そのくらいの気持ちで行こう。

 さあ、やるとしようか――!

明日も投稿予定。

詳しくは活動報告を見てください。

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