第214話 神対神
右の蹴り。それをあえて防がせてから反対方向に剣を創造し、射出。左右の揺さぶりで隙を作ったら正面から斬りかかり、同時に背後に神軍を作って挟み撃ち――
「――全部、見える」
全身に満ち溢れる力の濁流。今まで磨いてきたものとは決定的に違う、神の魔力。
元々その素材になる光と闇の魔力は持っていたが、人では融合させても対消滅による破壊をもたらす混沌属性になるだけだった。
だが、二度目の完全な欲望と正義の世界破片の解放が俺の中で噛み合った。人のままでは飲み込まれ狂うしかない力と感情の濁流……それを乗り越えるべく、全部無視して全力で駆け抜けたらたどり着いた境地。
道を誤っても、きっと誰かが助けてくれる。それを心から信じることができるからこその全力疾走の果ては――驚くべきことに、神の世界だったのだ。
「フフフッ! 全てが読み通りと言った様子だな。まるで攻撃が吸い込まれていくようだぞ!」
「そういうお前は、随分楽しそうだな」
神の領域に立って戦う相手は、魔の神である魔王神。さっきまではどんなに頑張っても届かない所にいた相手だが、今はもう手の届くところにいる。
神の魔力……そりゃ、こんなもん持ってたら人間相手に真面目に喧嘩する気にはなれないか。ただ纏っているだけで、自分は無敵だと全能感に酔いしれたくなるほどの力。目の前にそんな自分を殺せる力の持ち主がいなけりゃ、まあまともに戦う気にはならないだろうな!
「実に愉快なり! ならば、これならどうだ!」
「――嵐龍」
魔王神の次の攻撃は、幾重にも虚実を織り混ぜた魔力砲撃。近接特攻を仕掛けると見せかけて、溜めた魔力を放出するつもりだ。
俺はただ避けては地上に深刻な被害が出るだろうその一撃を迎撃すべく、嵐龍から魔力砲撃を、嵐龍閃を放つことにする。
……でもまあ、この領域に至っては嵐龍閃でないかもな。剣そのものの力よりも、俺が注ぐ魔力の方が多すぎる。嵐龍は元々精霊竜――つまりあの女神の僕の力の一部なわけだから、それも仕方がないが。
というか、実はだんだん嵐龍の力が減少しているのだ。その結果俺の魔力の比重が上がっているんだが……これは、確実に女神の嫌がらせだな。嵐龍の武器としての性能はリリスさんや山人族の職人たちの努力の結晶であり、神がどうこうすることはできないが……纏っていた加護に関してはいつでも遮断できるものだろうし。
何せ、俺が神の魔力を操れるようになって以降ハッキリと感じているのだ。魔王神が炸裂させている喜びの感情に紛れて、ほんの僅かに俺がさっきまでいた次元の狭間から、俺や魔王神と似た気を持つ者が放つ怒りの気を。
自分の命令を無視して現世に戻ったことに腹を立てているのか、それとも今の俺が気にくわないのか。どっちにしても、今の魔王神から分かりやすいくらいに伝わってくる思いも合わせて考えれば、予想通りなんだろうな。
(……余計なことを考えてる場合じゃないか)
俺はそこでは遠くの敵意を無視し、嵐龍に込めた力を解放するべく刃を降り下ろす。
今俺の目の前にいる相手こそが最強の敵だ。それは、確定しているんだからな。
「嵐龍閃改め――【神龍閃】!」
「【星命終焉・束】!」
神の魔力を込めた嵐龍閃、そのまま名づけて神龍閃と、先程殺されかけた広範囲斬撃を一点集中させた魔王神の砲撃がぶつかった。
お互いの砲撃は激突と同時にバチバチと稲光を起こし、激しくぶつかり合う。その威力は容易く空間を引き裂き、世界に穴を開けるほどのものだ。一切の誇張なく激突の中心点が歪んで見えるからな。
しかし、それでもお互いの砲撃で――そしてそれ以外の攻防で、周囲が破壊されることはない。込める破壊力の割には、不自然なほどに周囲に被害がでない。これはお互いに環境に気を使っているからではなく、ただ破壊力に効率を求めた結果だ。
シュバルツ流で言うところの、力道点破の極意。全ての力を相手に注ぎ込む技術を、お互いに完璧に極めているが故の結果だ。
「――互角か。ククク……互角か!」
「嬉しそうだな、ホントによ……」
結局、互いの技は互いを殺しあって消滅した。魔王神はその結果を心から喜んでいるようで、再び距離を詰めてくる。
今度は、本当に接近戦を挑むつもりだな。
「ハアッ!」
「――フッ!」
今の俺には、魔王神の動きが……その望みが全て見える。放つのは、速度特化の上段降り下ろし。
俺は魔王神の鋭すぎる一撃を紙一重で回避し、即座に反撃に移る。どうやら、この能力にも大分慣れてきたみたいだな。かなり精度高くなってきたし……アレ、やってみるか。
「――ム?」
魔王神が次の攻撃に移ろうとした瞬間、それを封じる形で俺の攻撃が命中する。
完全に速度重視で威力に欠ける一発だが、そんな攻撃でも今からやろうとした動きの起点を潰されては神であっても動くことはできない。
全ての行動には、必ずその予備動作がある。それはどんな訓練をしても完全に消すことは不可能なものだ。俺達はその原則に乗っとり、腕を動かすのなら肩が、足を動かすのなら腰が、更にその前の視線や重心の移動、気の流れを読むことで相手の動きを、気影を読んでいる。
ならば、更に先回りすればどうか。あらゆる動きに対し、その起点となる動作を先に潰すのだ。それができればどんな能力を持っていようとも、どんな強さを秘めていても何もできない……ということになる。
そして、それを完璧に続けることができれば――
「ぐ、ぬぅぅぅ――!」
「サンドバッグってわけだ」
魔王神の腕を、足を、あらゆる場所を最小の動きによる最速の剣と体術で攻撃し続ける。
あの魔王神が、俺のやりたい放題打たれているのだ。身体から生物の常識を無視して腕を生やそうとしても、肉体に依存しない武器や魔法を使おうとしても無意味。それを行うために魔力を集中させなければならない場所に先制打を打ち込むことで、発動そのものを無効にする。
所詮机上の空論……この技は、永遠に完成しないものだった。こうすれば無敵だろと思いはしても、実現させることはできなかった。
まず大前提として、相手より速くなければいけない。それも相手は動きの起点に入るところなのに、自分は攻撃を完了していると言うほどの速さが。
それを鍛練でクリアしても、今度は動いていない相手の動きを読むという矛盾をクリアしなければならない。動く前に封じるとはそう言うことである。
仮にそれを読心術か何かでクリアしても、次はその動きの起点を正確に読みきらなければならない。仮に次は右腕からのパンチであると分かったところで、身体のどこから動き出すかはほんの僅かな力の入れ具合で変化してしまうのだからもう技術ではなく運の領域である。
それすらも奇跡の幸運でクリアしたとして、最後は相手の守りという障害が待っている。仮に打ち込まれたとしても、それを跳ね返せるよう身体を固めておけば完全に止められる事はないのだから。
この4つの条件のどれをとっても、机上の空論であることがわかるだろう。
この技は本物のレオンハートが考案したものの延長なのだが、結局あいつもその一つ前を最終段階としたほどだ。
「こ、これは一体――」
「今の俺は森羅万象全ての動きが……欲望が見える。俺の間合いに入った以上、もう抜け出せないぜ」
一発一発の威力はどうしても低くなるため、まだ魔王神には余裕がある。
だが、このまま何もさせずに一方的に攻撃を続ければいずれ倒れる。この、接近戦における究極奥義を持ってすればな。
(魂加速が可能にした、加速法の新たなる境地――【神速法】)
魂加速は魔力の強化を飛躍的に高めるほか、五感を越えた第六感を鋭敏にする効果がある。一流の戦士が極希に体感するような、世界が止まって見えるほどの集中状態……それを常に引き出せるのだ。脳の上に存在する魂を文字通り死ぬほどこき使っているんだから、それくらいできなきゃむしろ困るがな。
この集中力を使い、瞬間の超加速法を発動。攻撃している間に反動時間が終了してしまうほどに短い時間加速することで、初速のみで圧倒することを繰り返す。
神がかった集中力を発揮してはじめて可能となる、発動時間を伸ばすのではなく必要な最小に押さえる技法――これを持って、俺はこの技を神速法と名付けよう。
(感じとれ――【世界破片・欲界力】!)
先手を取ったなら、次はどこに打つか。それは、欲望の世界破片が教えてくれる。
全ての行動は欲より始まる。戦闘で言えば殴りたい蹴りたい斬りたい――と色々あるが、その行動の一番最初にあるのは望む未来を呼び寄せようとする意志、すなわち欲望なのだ。
欲望の世界破片を完全に支配した者は、世界の全てから欲望のエネルギーを受けとることができる。つまり、元来習得している気影洞察の精度を高める凄まじいまでの補助部品となるのだ。その速度と正確さは、頭で考えてから読み取る読心術とは比較にもならない。
(撃ち抜け――【世界破片・断罪】!)
完璧に読み取ったつもりでも出てしまう、誤差。それを埋めるのは正義の世界破片が持つ絶対勝利の断罪の力。
当たる可能性が0でないのならば必中させる運命をねじ曲げる勝利の概念により、ほぼ完璧な狙いからほぼという不確定要素は排除される。
(――【明鏡止水・極】)
最後に、命中させても立ちふさがる守りの魔力を貫くのは明鏡止水の第三段階。
本来必要な集中に費やす時間は魂加速が解決してくれるため、今の俺は全弾防御無視攻撃を行えるのだ。神の魔力の前には封じられていた技だが、同じ神の魔力を発動しているならば十分に使える。
この四つの技を、1秒にも満たない時間のなかで連続発動させる、万物を封じる絶対攻撃時間――
「極みの更に先――【明鏡止水・天】!」
一度捉えれば、どんな力の持ち主だろうが倒れるまで殴れる明鏡止水の第四段階。
第一段階、静。力の流れに逆らわず受け流す。
第二段階、流。力の流れに乗り、流れに逆らうことなく動く。
第三段階、極。力の流れと一体化し、あらゆる力をすり抜けて攻撃する。
そしてこの第四段階、天。力の流れを支配し、戦いを制する。
構想の段階のみに登場し、考案者ですら机上の空論で終わってしまった使うと勝つ技――どうする神様!
「――【加速法】」
「あ」
一連のルーティーンの始まり、神速法のタイミングで魔王神が動いた。本当なら動けるはずがないこの連続攻撃の中で、僅かに俺より早く動いて見せたのだ。
それも、俺たちの一族の技、加速法発動によって。
「――フンッ!」
「っと!」
魔王神は俺の攻撃を追い越し、弾くことで自由を取り戻した。
……加速法か。死の世界破片の能力で歴代シュバルツから加速法を読み取り、使用ってところかな。
にしても、あの連打の中でよくもまああそこまで正確で的確な行動が取れるもんだ。刹那や六徳レベルでの反応が必要なはずなんだけどな……。
「明鏡止水・天。なるほど素晴らしい。考案者はかつてのお前……お前となる前のレオンハート・シュバルツ。ただし構想段階で断念し、現実的にはその前段階を『極』として完成させた、か」
「……よくご存じで」
「死の世界破片を我が使うとこうなるのだ。ただ死人の物真似をするのではなく、歴史が刻んできた全ての経験から的確な対処法を考えるのが真骨頂なのだよ。もっとも、情報を引き出すのもその情報を戦略に構築するのも自前の頭の仕事……参考にはならないだろうがな」
「ああ……正直、そっちの面では絶対に勝てないと認めるよ」
「我に予測できないものはない。対処できないものがあれば、必ずや順応して見せよう」
世界破片は手に入れれば強くなれる便利アイテムではない。初めて欲望の欠片を手にしたときは力に耐えることができれば魔力が増えるパワーアップアイテムくらいの認識だったけど、その能力を使うようになった今ならわかる。
まず人間では使用不能……使えて表層を掬うのが精一杯。世界破片はそのくらい狂った性能を持っている。
神の領域まで昇ってきて、ようやく技に組み込めるようになるんだ。……例外は才能が神クラスであるアレス君くらいのものだな。
そんなものをこうして100%操れるんだから、流石は魔王神ってところだな。四魔王とは比較にならない使いこなしっぷりだよ。
もっとも、今まではそんな魔王神の規格外さを見ることすらできていなかったわけだけどな。正直、やっぱりここまで来てなお総合的にはほんの僅かに劣っているか。
「明鏡止水・天の唯一の穴は最初の加速に追いつかれたら不発に終わること。口で言うのは簡単だけど、それを可能にするには加速法を代表とする超高速攻撃を可能にする技を極めて素早く発動させる技術が必要だ。……なんて理屈、普通食らいながら理解するか?」
「頑張ったのだよ。今の自分ではどうにもできない苦境に追い込まれ、ならばどうすればいいのかと試行錯誤する……ああ、実に素晴らしい」
魔王神は笑みを浮かべる。それは相手を見下すようなものではなく、心の底から喜んでいるとわかる笑みだ。
こうしてお互いに星一つくらいは滅ぼせるような力を発しつつ、凶器握っていなければ青春真っ只中のスポーツマンに見えるくらいに爽やかな笑みだ。
「楽しいか?」
「楽しいとも。ようやく長年の夢が叶いそうだ」
「そうか。そりゃよかったが……一つ聞いていいか?」
「何かね?」
「さっき、予測できないものはないって言ってたけど……これは予測できているか?」
「ム――!」
魔王神の身体に鎖が巻き付いた。縛術の類いだ。
発動させたのはもちろん俺じゃない。神の領域に昇ろうが世界最強になろうが、多分俺の魔法は生涯初心者レベルだ。
この魔法の主は、下でずっと機を伺っていた暗殺者顔負けの技量と冷酷さを持つ二人の魔術師なんだからな。
「これは――」
「言わなくてもわかっていると思っていたから言わなかったけど、これ一対一の決闘じゃないからな?」
魔王神が鎖を砕くのに一瞬意識を俺からそらす。その間に、俺は大技の準備と接近ができる。
力では及ばないから何もできない――なんてことを認めるのなら、俺たち人間はとっくの昔に死んでいる必要がある。力で及ばなくとも、できることを見つけ実行する。一人ではダメでも、他の誰かの力を借りれば何とかできる。
「聞いてなかったってことはないよな? 俺、他力本願なんだぞ?」
何よりも、これはお互いの技量を比べ合う試合ではなく、自らの存亡を賭けた死合いだぞ?
「――無論、承知しているさ」
魔王神は俺の一撃を回避できずに一撃を受けた。さっきの連打を合わせればかなりのダメージを負っているはずなのだが、それでもこいつは笑ってこの不利な状況を受け入れる。
……まあ、そうだろうな。これだけ斬りあえば、馬鹿でもわかる。こいつは今、楽しいんだから。
「どんな手を使っても構いはしない。あらゆる理不尽な困難を乗り越え、進化するのが生物としての最低限の義務だろうが」
「違いない!」
今の俺と魔王神の戦闘力の差は、ほんの僅か。もし魔王神が俺を無視してサポートに回っている仲間を狙おうとすれば、俺は晒したその背中を確実に狙うことができる。
だからこそ、神の力であれば纏わり付く蠅程度でしかない妨害を無視するしかない。その小さな妨害一つで覆る差しかない俺と戦うのにな。
もし俺も含めた全体を狙うような大技を使うのならば、むしろ歓迎だ。加速法を練り込む余裕があるわけがない大技なんて使おうとすれば、速攻で明鏡止水・天に嵌めてやる。
さっきアレを見せたのは、もちろんそのまま殺すつもりでもあったのだが、失敗しても仲間との連携が取れるこの状況になるってのも本命だったんだからな。
「――しかし、お前達にも真価を問わねばなるまい」
「ッ!?」
「自らを育てる……真似事はやってみたこともあるが、やはり実際に困難という奴を知ると知らないのでは大きな違いがあるな。お前達ももっと進化しなければ、すぐに置いて行ってしまうぞ?」
攻撃速度が、魔法破壊の精度が、技術が高まっていく。
……成長か。流石は産まれてこの方自分以外の強敵を知らなかった頂上生命体。敵に学び自らを鍛える……そんな当たり前の経験を、今ここで初めてしているってわけか。
このまま成長されたら、正直手が出ない。もうこれ以上のパワーアップなんていくら何でも無理だし、身体も中身も神様な規格外と違って、俺は普通に成長しようと思ったら数ヶ月単位の時間が必要なんだよ。
この神の魔力をもっと使いこなせるようになれば更に伸びる自信はあるし、肉体の限界にたどり着いているつもりなんてないからまだまだ成長の余地はあると自負しているが、こんな超速で進化できると思われては流石に困る。
(……ま、仕方がないか。昔から、魔王を倒すのは勇者の仕事って相場が決まっているしな)
魔王を倒すのは、勇者の役目だ。これは古今東西全てにおいて決定されていることである。
そして俺は勇者ではない。神の領域まで足をねじ込んだだけのただの凡人だ。だから、凡人は凡人らしく凡人の仕事をするとしよう。
今まさに頑張っているって、はっきりと伝わってくることだしな。
◆
「――まだ、か?」
「限界が来れば、言うそうだ。一番きついのはあの少年なのだから、我々が弱音を吐くことなど許されん」
――力が集まってくる。僕の手の中にある聖剣アークに、皆の力が集まってくる。
「勝ちたいと、念じ続けろか。案外、きついものなのだな……」
僕の聖剣は、希望の世界破片。この世界に住む全ての命の希望を力に変える。
だから、諦めてはいけない。一人でも多くの勝利を諦めない思いがあれば、それだけ強くなることができる。
「今まさにあの怪物と戦っている英雄殿も、我らの念で力を増すらしい。ならば、我らが心折れている場合ではない」
一度魔王神との戦いに挑み、そして戦いにすらならずに殺され掛けた人々。
そんな彼らが心折れることなく希望を抱き、勝利を望む。それが希望と欲望の世界破片にとっては何よりの力になるんだ。
魔王神を前にして、それでも心を折らない。それがどんなに辛く大変なことなのかは、言うまでもないけどね。
「あまり時間はない。信じることしかできない無力な我らだが、信じることができるのならば信じるのだ!」
魔王神に勝つ。そのイメージをするためには、どうしても魔王神の姿を思い返す必要がある。
命を捨てる覚悟で挑んだ決戦に、戦いにすらならずに、覚悟を見られることすらなく殺されかけた恐怖。それを思いだし、克服する。それは、きっと死ぬよりも大変なことだ。
それでもやってくれと、世界の指導者達は声を張り上げる。決戦のため、避難所を含めた広範囲に張り巡らされた通信網を使い、世界中に呼びかけている。
人々の祈りは、少しずつ聖剣に集まってくる。
(……師匠の状況は僕にも伝わってくるけど、今の魔王神に勝つにはまだ足りない。魔王神の力が高まるのが先か、希望が絶望を焼き払うのが先か。これは、この世界に生きる全員と、神との戦いだ)
一人の英雄に、皆は思いを託し勝敗を委ねる。
でも、この神様を倒すのならば、全力で託してもらう。祈ることしかできないのならば、全力で祈ってもらう。
それさえなれば、きっと僕らが何とかするから――!




