第14話 一時の休息
閑話的な話です。
「う、うぅん……」
「目が覚めたか」
「ここは……って、父上――ぐお!?」
気がつくと、ある意味見慣れた部屋にいた。
そこは主に修行で気絶した時に運ばれる自宅の医務室。ほぼ毎日お世話になっている場所だ。
いつもの事だけに一瞬なんでここで寝てるんだとかそんなことを考えもしなかったのだが……全身を走る強烈な神経を焼かれるような痛みで全てを思い出した。と言うか強制的に思い返された。
「あー、加速法の副作用で苦しいのはわかる。だからまずは……これを飲みなさい」
「そ、それは……?」
「グレモリー先生が作った『体内魔力を整える魔法薬』だそうだ。ついでに疲労回復その他もろもろいろいろミックスされた優れものらしい」
親父殿はグレモリーのジジイ製だと言う魔法薬を取り出し、そして容器の瓶の蓋を取った。
グレモリーのジジイは“魔”と名のつくものならあらゆる分野に精通している。その一環として、魔法を物に込める技術におけるもっともメジャーなアイテムであるポーションにも深く精通しているのだ。
その効果の高さと言ったら、専門の魔法薬屋に並べてあるポーションなど軽く凌ぐものらしい。
昔からジジイ製のポーションにお世話になっているから、市販の魔法薬とかこの前クルークに貰ったやつしか知らないんだけどさ。ゲーム時代じゃポーションを含めたアイテムなんて全部名称が同じなら同じ効果だったしな。
まあとにかく、その効果が凄いのだけは間違いない。ジジイがこの苦しみを回復させる効果があると言ったのならば、親父殿の手にあるポーションは今の俺にとってきっと必要な物なのだろう。
必要なんだろうが――
「お、お断りします!」
「ム? 何故だ?」
「何故って……わかって言ってるでしょ!?」
「いやいや。私にはさっぱりわからんよ」
「せめてその鼻をつまむ手をどけてから言ってください!!」
親父殿は右手でポーション瓶を持ち、左手で自分の鼻をつまんでいる。
何故そんなことをしているのか。そんなことは、この場にいれば誰だってわかる。この部屋中に漂う、生命を脅かしているとしか思えない凄まじい匂いを嗅いだのならば。
「まあそう言うな。効能の高さだけは保障されている」
「それ以外のものは一切保障されてませんよね!?」
魔の賢人グレモリー。かの偉人は“魔”と名のつくあらゆる分野で功績を残した天才だが、逆に言うと“魔”以外の分野にはミジンコの欠片ほどの興味も示さない変人だ。
そんな男が魔法薬に対して“味”とか“飲みやすさ”とか“見た目”とか“匂い”とか、そんな魔法以外のことを考えるわけがない。
その結果、ジジイの作るポーションは全て『効果は最高だが、それ以外は最悪』としか言いようの無いダークマターとなっているのだ。
はっきり言って、不本意ながら何度も飲んでいる俺でも一口飲めば悶絶間違いなしの毒薬である。おまけに、ジジイ自身は味に興味が無いだけでまずく作るつもりは無いと言うのが更に曲者だ。要するに、毎度毎度新感覚の魂破壊兵器となっている為に慣れる事すら不可能な一品と言うことだからな。
だが、親父殿はそんな無慈悲な非人道兵器を俺に突きつけるのだった。
「まあアレだ。とりあえず……飲め」
「断……ぐおっ!?」
魂から拒絶したいが、今俺の体は激痛に苛まれてまともに動けない。こんな状態では、ぶっちゃけ健康体でも手も足も出ない親父殿に勝てるわけは無い。
俺は親父殿の手によって強引に口を開かされ、無理やり腹の中に謎の液体を注ぎ込まれた。体にはいいが、精神を破壊する毒薬としか思えない未知の色合いをした何かを。
「ぐほ……先立つ不幸をお許し……ごぼっ」
「死ぬな。大分よくなったはずだろう?」
「……はい、まあ」
一瞬三途の川が見えた気もするが、まあいつものことだ。訓練で殺されかけ、激マズ薬で死に掛けるのはいつもの流れだしな……。
ああ、クルークのくれたポーションは何であんなに飲みやすいのだろうか……。
「こんな事になったのも、お前の未熟が原因なのだぞ?」
「……はい、わかっています」
「三加法は……加速法は二倍速までで留めるように言っておいたはずだ。二倍速までなら今のお前でも何とか使いこなせるが、それ以上はまだ危険だと言っておいたのを忘れたか?」
忘れているわけがない。親父殿やグレモリーのジジイからも口を酸っぱくして言われていたことだ。ある意味自爆技である加速法は、自分の使える範囲だけで使えってな。
でも――
「……それしかなかったんです。確かに私は言いつけを破りましたが、後悔はしていません!」
「……ほう?」
「敵はマッドオーガ。はっきり言って、本来ならば私如きが太刀打ちできる相手ではありません」
「そうだな。だが、お前なら逃げるだけならできたかもしれないぞ? 少なくとも、戦いを挑むよりは生き残る可能性が高かっただろう」
……その通りだな。親父殿の言葉には一切の間違いは無い。俺自身、二倍速状態ならば仮に【追い討ち】が発動していたとしても逃げ切る自信はあった。
そんなことはわかっている。わかっていても……あの状況で逃げることだけはできなかったんだ。
「レオンハート・シュバルツ。この名を与えられたものとして、短い間であろうとも共に戦った者を、傷ついた者を、そしてたとえ戦士であろうとも女子供を置いて一人逃げるなんて真似だけはできません!」
本物のレオンハートだったら、間違いなくそんな真似はしない。本物は崇高な騎士であり、強大な……強大すぎて魔王の目に留まっちゃうほどの男なんだ。
そんな男の体を乗っ取り、のうのうと俺はレオンハートとして生きている。この世界が結局どう言う理屈で成り立っているのかは知らないし、ゲーム『聖剣の勇者』と似てるだけなのか何か密接な関係があるのかもわからない。だが、何にしても無自覚に俺は本物のレオンハートを殺したも同然であることだけは間違いない。
だから俺は、本物のレオンハートがいれば救えたはずの誰かを見捨てる事だけはしないと決めた。その名を俺個人の無能のせいで貶めることも絶対にしないと決めた。例え俺の勝手な自己満足だとしても、この決まりだけは破らないと決めたんだ。
「そうか……。まあ、わからんでもないな」
親父殿は、恐らく俺の決意の半分も理解していないだろう。まさか自分のどうしようもない息子が本当は稀代の天才だったとか、高潔な騎士だったなんて考えもしていないはずだ。
だからきっと、親父殿がわかると言ったのは俺の言葉を『シュバルツの騎士として恥じない行動をとります』くらいに捉えたからだと思う。
そして、俺はそれでいいと思ってる。別に俺が望んだわけではないとは言え、本物のレオンハートを親父殿達から奪ったことに変わりは無い。だが、俺はそれを生涯語るつもりは無い。
俺にレオンハートを返す方法が無い以上、きっと何を言おうが自分の罪悪感を紛らわす為の言い訳にしかならないから。
「逃げることはしたくない。しかし勝つためには無茶するしかなかった。そして、それを後悔していない。そう言うことだな?」
「……はい」
「全く、誰に似たのかな、その突撃思考は」
……それは親父殿だと思う。自慢じゃないが、俺はレオンハートになるまで喧嘩経験すらなかったんだ。そんな俺が戦闘中に思考することとか、ほぼ間違いなく親父殿の影響だろう。
「それにしても、やはり強引に三加法のレベルを上げるのは危険だぞ? 今回はギリギリ助かったようだが、下手をすればそのまま死にかねん無茶だ」
「あ、あはは……二倍速までならわりと平気だったし、修行中にやってみた時も何だかんだいって大丈夫だったから何とかなるかなーと思いまして……」
「それは私や先生といった指導者が見ている上で、お前自身も万全の状態だからこそだ。それでも外部から止めるような騒ぎになることもあると言うのに、数日のサバイバルによる疲労と実戦の緊張感の中で修行と同じようにできるはずがあるまい。反省しなさい」
「はい……」
本番で出せる力など練習の一割がいい所なんて昔どこかで聞いた事ある気がするけど、本当なんだねあれ。
前に三倍速をやって見たときは精々気絶するくらいだったのに、今回は三途の川見えたもんなぁ……。
「まあいい。お前の意思はわかった……覚悟もな。それを親として受け止め、できることは……」
「で、できることは?」
「より強靭な肉体を、そして研ぎ澄まされた技を作ることのみ。すなわち、よりグレードアップした鍛錬しかあるまい」
「あ、やっぱりそうなるんですね……」
剣の名門シュバルツ家。その基本思考はレベルを上げて物理で殴ると言うか……どこまでも力押しの脳筋だ。俺も何となくその思考に染まってきたような気もするけど、親父殿は問題にぶつかったらその問題を正面から切り伏せられるようになるまで鍛錬する以外に回答が無いのだ。
そんな親父殿が自爆同然に倒れた息子を見れば……そりゃ次は自分の技に耐えられるように更なる鍛錬って話にしかならないわな。
あー……これで日々の臨死体験数が更に増えるのか……。試験のときにちゃんと加速法を使いこなせていればこんなことには……ん? そういや、試験どうなったんだ?
「あの、試験はどうなったんでしょう? 私はマッドオーガとの戦いで気を失ったわけですが……」
「ふむ。まず今回の試験だが……お前の合格条件は三日間敗北することなく森に留まること、でいいんだな?」
「まあ、概ねその通りです。ちょっと違う所もありますけど」
「で、あればだ。他の受験者の前で暢気に気絶したお前は失格となるのが当然だな」
「まあ、そうッスよね……」
あの場には黒の騎士であるメイさん達もいたんだ。それをクルークと一緒にチーム二人で気絶してたらそりゃあ……失格だよな。
あー、どうしよ。次の見習い試験いつだ? ただでさえ遅れてるのにこれ以上ぐずぐずするわけには……こうなったら一か八か主人公探しでも始めるか?
なんて思っていたら、何故か親父殿が若干不本意そうに咳払いをした。何だ? まだ何かあるのか?
「そう、本来ならば当然失格だ。だが……何事にも例外はある」
「へ?」
どう言うことだ? この親父殿の何とも言えない表情は何を示しているんだ?
「私としては、何があったとしても失格に相当する結果となったのだから失格で当然だと思うのだが……どうやら試験運営の連中はそうは思わなかったらしい」
「え? どう言う事ですか?」
「お前達が守った騎士。アレは現場責任者でな。自分では倒しきれなかったマッドオーガを倒してくれたことに過剰な感謝を見せておった。それも、年若い見習い未満の若者が命をかけてまで人を守ったことには感動まで見せておった」
「はぁ……?」
俺としてはレオンハートに恥じない行動をする為、くらいの気持ちしかなかったんだけど……まあ感謝してくれるなら悪い気はしないな。
それにしても、別にそこまで言う事でもないと思うけど。騎士って、基本的に命捨ててでも人を守るのが存在意義だろ? それに見習いとは言え志願したんだから……むしろあの場で逃げたら永久に騎士試験の受験資格を剥奪するくらいのこと言われても文句言えないと思うんだけど。
「元々、マッドオーガと言う強大な存在が試験に紛れ込んだのは運営側の不手際。それを理由に才ある若者の芽を摘むのは望むところでは無いし、彼らならば何事も無ければ問題なく試験をクリアしただろう……とのことだ」
「あ、あの、つまり……」
「特例を持って、レオンハート・シュバルツ及びクルーク・スチュアートの一次試験通過を認めるとのことだ」
「……おお!」
マジか。何かよくわかんないけど、一次突破したのか……ラッキー!
正直、森の中で飢えて死にそうになった時点でちょっと諦めてたもんなぁ。奇跡だろ、これ。
「ああ、ちなみにお前が共闘したと言うクン家のお嬢さんのペアも合格したようだぞ? あちらの場合は自力でだがな」
「そ、そうですか」
何か、そう言われると悔しいな。要するに俺達は補欠合格で、メイさん達は自力で合格したってことだもんな。別に競争が目的じゃないとは言え……肉体的にすら同年代の女の子に負けるのは流石に……。
(ま、そんな事で微妙な気分になってる場合じゃないな。俺だってレオンハートって名前の子供として大分精神が変質した気がするけど、一応中身はそれなりの大人だろ? ……本物の大人からすれば、元の俺だって十分ガキかもしれないけど)
とにかく、二次試験では負けないように頑張ろうと言う事で納得するか。直接対決が試験内容なんだから、もしかしたらまた戦うことになるかもしれないしね。
……そういや、戦うと言えばあれはなんだったんだろうな? メイさんが放っていた俺への……と言うか、シュバルツ家への敵意みたいな剝き出しの闘志は?
まあ多分二次試験であうし、そのときにでも聞いてみるか。
「それで二次試験の日程だが、本日より二週間後と言う事になった。お前も自分の未熟はわかっているだろうし、体を治してから修練を積む時間はたっぷりあるな」
「あ、あはは……」
親父殿……全身からやる気と言う名の殺気が放たれているのは気のせいですか? これはいつもよりも更にハードな修行が待っていそうだ。
正直体を治す時間があるのはありがたいが……この勢いだと試験前に親父殿に殺される気がする。この世界にはゲームと違って死者蘇生術は無いんだから手加減して欲しいんだが、死の一歩手前なら蘇生できる技術あるんだよなぁ。魔法って本当に反則。
はぁ。これがこの世界では子供が皆やってるレベルの鍛錬だって言うんだから、そりゃクルークもメイさんもハームさんも皆凄いよなぁ……。
元の世界じゃ虐待を通り越した処刑だけどさ。未だに異世界人基準には慣れないよ、まったく。
下手するとマッドオーガとの死闘の方がよっぽどマシってことにもなりかねないしな……ん? そういや、マッドオーガの事聞くの忘れてたな。
「そう言えば……結局なんであんな所にマッドオーガがいたんですか? あんなのこの辺りに生息しているもんなんですか?」
ゲームで言えば、この辺り一帯は結構弱いフィールドだ。ぶっちゃけた話、この町は一番最初の町だからな。当然、一番弱いモンスターが生息している地帯と言う事になる。
本物のレオンハートによって危険地帯から飛ばされた主人公だが、町からそう離れた所に行ったわけではない。目が覚めた時には戦いは終わっていたわけだが、とにかくスタート地点はこのすぐ近くなのだ。
そんな初期エリアにマッドオーガがいる訳がない。ゲームでは魔王復活の影響でモンスターが活発になったと言う話だったし、この時期のこんな場所に野生のマッドオーガがいるとは思えないんだよな。
まあ、ゲームと現実の違いと言ってしまえばそれまでだけど……。
「ああ。あれは外から入ってきたものらしい。詳しくは調査中と言うことだが……確かにここら一帯では見る事のないモンスターだな。全く、ここ数年魔物による被害報告も深刻化しておるし、何か悪い事の前触れで無ければよいが……」
(……まさか、魔王復活の影響か?)
魔王は魔物の王。魔王が存在しているだけで世界は闇に染まり、魔物は凶暴に、そして強力になる。
まあ具体的な理屈は何かふんわりとしていると言うかぶっちゃけよくわかんないんだけど、とにかく魔王がいるだけで世界は大変危険な状態になるらしい。
その魔王の復活にはまだ10年以上ある予定なんだけど、逆に言えば数百年だか数千年だかの気の遠くなるような時間の封印があと10年ぽっちで破れると言うことになる。
そう考えればまあ、影響が出始めてもおかしくないのかもしれない。できれば今の内に魔王が復活しないようにできれば最高なんだけど……手がかり無しだからな、今のところ。
(何せ、封印が破られたって話しかゲームには出てこなかったからなぁ。どこに封印されてるのかとかさっぱりわかんないんだよ。極端な話、次元の狭間とか女神にしか知覚できない不思議空間とかでもおかしくないわけだし)
ゲーム設定上、魔王はかつて聖剣に選ばれた勇者によって施された封印を破ったとしか記されていなかった。要するに、いつどこでどんなタイミングで復活したのかと言う細かい設定は存在していないのだ。
それでは今の俺にできることはほとんどない。……まあ、仮に場所がわかっても封印強化の方法とか皆目見当つかないんだけどさ。
それに、この問題で一番きついのは魔王そのものの存在だ。如何せん魔王が暴れていたのは遥か古代のお話と言うこともあり、現代では御伽噺程度の信憑性しかない。
それなのに『そんな存在が復活しそうだから魔物が暴れているんだ』とか『それが将来この国を攻めてくるんだ』なんて言ったところで、子供の妄想以外の何物でもないことくらい俺でもわかる。
仮に親父殿やジジイに話したところで、そんな話を鵜呑みにしてくれるほど愚かでも阿呆でもないだろう。これは信頼とかそう言う話以前の問題だ。
ならばどうするかって言うと、強引に国防を強化して少しでも被害を抑えようとか考えるのが一番現実的だろう。まあそれは、結局の所少しでも早く俺自身の立場って奴を固めるしかないってことなんだよな。
ま、要するに俺ができることは最初から一つってことか……ふぅ。
「……父上、二次試験までの間に、少しでも俺を鍛えてください」
「む? 何だかよくはわからぬが……急にやる気になったようだな?」
俺が出自不明の情報からもたらされる脅威に対抗しましょう、なんて言えるくらいに立場を強固なものにする為には、まず目の前の試験に合格するしかない。
二次試験は他の参加者との対人戦。だったら、命の危機だろうがなんだろうが頑張るしかないだろう。本音を言えば今すぐ逃げたいけど、頑張らなきゃいけないだろう、うん。
「気合が入っているところ悪いが、その体では二日は安静だ。お前が寝ている間に医者とグレモリー先生に診てもらったが、薬と併用してざっと全治二日と言ったところらしいぞ?」
「え? そうなんですか?」
「ああ。さっきの薬を一日三回服用し、時間の許す限り乱れた体内魔力を整えておけとのことだ。そうすれば二日で復帰できる」
二日か……。試験が二週間後と言う事を考えると、結構痛いロスだな。
まあ、ジジイの薬を使ってもそれだけの時間を取られるくらいに今の俺はヤバイ状態だって事でもあるんだろうけど。と言うか、あの薬を一日三回も飲まなきゃいけないって聞いた時点で精神的にヤバイんだけど……やっぱ逃げちゃダメかな? ダメだろうなぁ……。
「とにかく、今は乱れた魔力を少しでも戻すように努めておきなさい。今後の修練ではその未熟な魔力コントロールを重点的に鍛えていく予定だから、少しでもその感覚に慣れておくように」
「わかりました」
「うむ。では養生しなさい」
(動きはしなくても、それってほぼ修行だよねってのは野暮なのかな……)
俺は病室から出て行く親父殿の背中を見ながらそんなことを思った。
常時修行が親父殿のデフォルトだ。怪我人には怪我人の、病人には病人の修行法があるとか心の底から考えてる人だからな。
そんな人に自分から修行をつけてくれと言ったんだから、まあこのくらいは当然だと受け入れるさ。
実際、今回の試験で自分の未熟さははっきりと自覚したわけだしな。俺は、序盤の強敵でしかないマッドオーガに生か死かのギャンブル挑まなきゃならない程度の雑魚だってさ。
そんな未熟者が甘ったれたこと考えられるほど、俺の未来に余裕なんて無い。そう言うわけで、まずは全身の魔力流の調整から始めるとしますか……。




